北西村への潜入
俺はそれまで一度も北西村に直接行ったことはなかったが、家や施設の配置、村民の個人情報を把握した上で、身体術と魔術を駆使して、夜間に誰にも悟られずに北西村に侵入し、北西村のそれぞれの家での会話ややり取りを偵察した。
監視活動は不定期で実施し、数日潜入して日中も悟られずに監視することも実施した。
北西村の人口は今年に入って138名になっている。
それぞれの動きや会話内容を抜粋し、気になる動き、気になる発言をしている者のプロフィールを集中してチェックした。
危機対策会議でもその内容を共有し、対応を相談した。
転出元、どこから移住してきたのかの共通点なども、情報が追加されるたびにチェックした。
相当程度怪しい動きをしている者については、エルン村長がエルン村開拓前のコネと金を使い、現地や王都の戸籍簿などにも当たって調査した。
草と見られる人物の特定、影響を受けたであろう人物の特定が進んだ。
草候補は4名、影響を受けたと思われる人物は18名。
外部の介入は可能性ではなく、事実として考えることとなった。
草候補は草候補同士ではほとんど表立った会話がなく、夜間に隠れて会っていた。
日中は間に挟んだ者に日常会話を通した符牒を使い、その間に挟んだ連絡役本人には気づかれないように情報伝達していた。
簡易な情報や定型的なやり取りは日中の符牒で、詳細な情報については夜間に直接に行っているのだろう。
草候補の1人は5年前から北西村で暮らしていて、妻と子どもの3人家族で暮らしている。
その妻は北西村で出会ったそうで、草としての活動は知らないようだった。
他の草候補3人は年配1人、若者2人で、若者の内の1人だけが女性。
年配の草候補は気難しい人物を装って周りとの交流が少なく、家族持ちと若者2人はかなり積極的に村内で動いていて、それなりの影響力を有しているようだ。
年配の草候補は昨年移住してきて、草候補の中では一番の新顔だ。
おそらく年配の草候補が草のリーダー格ではないかと考えられる。
この年配の草候補は、他の草候補とのやり取りが少ないが、クリティカルな情報を選別して受け取っているように見受けられる。
スタンピードのGOサインを出すのもこいつではないかと考えている。
草候補の出身地はバラバラということになっていた。
ただ、出身地は当地の貴族と王都の政府関係者が連携すればいくらでも改ざんできるらしい。
出身地当地の4貴族がとある侯爵家の寄り子だったり財政的に依存したりしていることが判明し、主導もしくは仲介しているであろう外部の脅威の一因、エルン村の敵の一つを、まだ可能性ではあるが、突き止めることができた。
草の活動の影響を受けた者18名は、その影響を受けた期間、度合いが異なっていたが、概ね次のような動きをしていた。
・草候補者間の日中の情報伝達。1名だけの場合はほとんどなく、2名以上を挟んで伝達。
・北西村の扱いへの不満を家族や友人へ高頻度で漏らしていた
・エルン村の村民のように大森林探索に参加したい、自分ならできるはずだ、と身の丈に合わない要望を有する
情報伝達以外の動きについては、持続的に行われていれば、現状に満足している者との分断、不満を持つきっかけとなり仲間の増加など、あまり好ましくない方向に向かうだろう。
辺境開拓村の運営への負荷を高める趣旨の動きだと思われる。
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