アルト7歳の年 待ち構えていた動き
年が明けて、俺は7歳になった。
身長は145cmくらいだろうか。
今年10歳を迎えた者に混じっても俺が年上に見られるかもしれない。
10歳になったレフ兄さんよりも俺のほうが身長が高いしね。
並ぶと体格や顔の厳つさで俺の方が年長に見られそうだ。
俺の父さん、イゴールは2mを優に超える身長だったし、顔の厳つさも含めて俺は父親似なんだろうな。
妹のイリナが母親似でよかった。
エルン村では身体術や魔術を使える者が増え、その習熟度も向上している。
昨年は土魔法と水魔法の、魔法士系ギフト持ちが2人覚醒し、新たな魔術の開発も進んでいる。
エルン村長一家だけでなく、エルン村全体で明るい未来が見えてきた。
エルン村長夫婦に依存していた体制から、みんなが戦闘に、生産に、参加できるようになってきたことで、やり甲斐、生き甲斐を感じている村人も多いだろう。
セルゲイじいさんのような歳を取った人まで元気になったし、エルン村の総幸福量のようなものを計測できれば、右肩上がりになっているだろうな。
昨年盛り上がったエルン村の新年の宴会は、今年は更なる熱量で盛り上がった。
大人から子どもまで、みんな笑顔で何よりだ。
ここまでエルン村が変われば、そろそろ動きがあるだろうと考えていた。
北西村への注視、外部からの脅威の認識は、キリル兄さんにも共有し、エルン村長、アデリナさん、俺と合わせて、エルン村では4人だけが認識している。
北西村には、エルン村長とキリル兄さんだけでなく、大森林探索の戦闘メンバーに参加できるものが、巡回係として当番になっているので、この戦闘メンバーにはそこまで強く口止めはできていない。
北西村に既に草、長期潜入型の間諜が入り込んでいるなら、エルン村の強化状況を掴んでいるだろうし、昨年の魔法士2人の覚醒も把握しているだろう。
今年、大きな動きがある。
エルン村長、アデリナさん、キリル兄さん、俺の4人は、高い確度でそのように予測していた。
外部の介入を認識しているこの4人で定期的に集まり、危機対策会議を開くようになった。
危機対策会議では、自分が草であれば実行するであろうことを意見し合った。
その中で出てきた意見は次のようなものだった。
・最初に潜入した草が、新たな草を引き入れ、草自体の数を増やす
・草の活動の背景を知らない協力者を増やす
・北西村に、エルン村への不満等の悪感情を広める
・草自身かその協力者が、エルン村の活動に参加できるように画策する
・スタンピードを引き起こす実行者を移民として引き入れ、連携する
・実行者を北西村に入れず、外にとどめて北西村から連携する
この南東辺境開拓地域のように、エルン村と北西村の2つのエリアに分けて活動している辺境開拓地は過去にないようだ。
過去にエルン村長のいた南部辺境開拓村のように、1つの辺境開拓地域に辺境村が1つの体制であれば、村民の誰もが辺境の最前線に近い場所にいる上に、わざわざ大森林の探索などはしていないので、草の活動とスタンピードを引き起こす実行者の連携も簡単だっただろう。
この最前線に入り込んだエルン村と、大森林から遠ざかった位置にある北西村で、草が北西村にしか入り込めないなら、大森林での活動を詳しく掴めないため、草と実行者の連携も難しくなるだろう。
その困難になっている要因を打破するには次のどれかの方針を採るだろうか。
・北西村とエルン村の情報を密にする
・草がエルン村に入り込む
・エルン村を迂回して大森林の状況を把握する
エルン村長夫婦が辺境開拓地域について昔から考察していたことなんて、外部の介入者は知らないだろうから、それに向けて備えているとも思わないだろう。
外部で悪意を持つ者は、エルン村を最前線に出しているのは、戦力に充実しているゆえの方策、エルン村長が非戦闘員を保護するお人好し、くらいに考えているだろうし。
ならば1つの方策ではなく、複数の方策を同時に実行する可能性も高いだろうと考えた。
危機対策会議メンバーの中で一番動きやすく、対応力もある俺が、外部の介入者の動きを監視する役割を引き受けることにした。
俺は大森林探索や生産活動への参加を減らし、フリーハンドで動ける時間を捻出した。
昨年から魔術開発などの独自の活動を増やしていたので、それほどおかしくは見えないだろう。
エルン村内の人を疑っているわけではないが、悪意のない情報流出が十分にあり得るので、危機対策会議メンバー以外には悟られないように動く必要がある。
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