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大力(嘘)で身を立てる  作者: ろん
第一部 辺境開拓村

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アルト6歳の年

1月1日。


年が明け、みんな1つ歳を取り、俺は6歳になった。



こちらの世界では寺も神社もなく、神を祀る神殿は大都市にしかないから、どこかに詣る習慣はない。

新年と歳を重ねることを祝うくらいだろう。


辺境開拓村ではエルン村長が音頭を取り、エルン村のみんなで集まって宴会だ。


エルン村長はエルン村だけでなく、北西村でも人を集めて新年会をするので、昼は北西村、夜はエルン村で過ごすことになるそうだ。



エルン村長は北西村に行く前にエルン村で新年の挨拶をして、アデリナさんと一緒に北西村に向かった。



アクチュア王国では、10歳になると課税対象となるそうだ。


そのため、10歳になると戸籍のようなもので管理されるようになるらしい。


逆に言うと、10歳までは国に管理されていないようで、俺と妹のイリナが王都からエルン村に来た時も、特に手続きのようなものはなかったらしい。



そして、15歳になると成人したとみなされるそうだ。


成人して何が変わるかは地域によって違うようだが、エルン村では自分で意思決定をする年齢だとみなされる。


例えば、農業に就いていた者が大森林探索に参加したいと考えたら、15歳になると親の許可がなくてもエルン村長に頼めることになる。


もちろん、意思決定をしてもそれが認められるかどうかは別の話だけれど。



酒やタバコはいつからか、というと、特に制限されていない。


俺の歳で酒を飲もうとすると止められるだろうけれど、飲めるなら飲んだらいいという感覚だ。


タバコは、嗜好品として、都市部の富裕層で嗜む者がいる程度だそうだ。




1月1日は、みんな仕事を休んで、朝に料理などの宴会の準備をして、昼から夜まで騒ぐ、というのが定番のようだ。



宴会が始まってまだ1時間も経っていないところだけど、すでにできあがっている人たちもいる。



槍術のギフト持ちのマクシムさんと、マクシムさんの岳父、妻の父親のセルゲイじいさんなんかはその筆頭で、飲み比べをしていた。


セルゲイじいさん、本当に元気になったなあ。


身体術を身に着け、よく動くようになって若返ったようにも見える。


「アルト~楽しんでるか~」

「アルトよい、ちゃんと食べとるか~」


そのマクシムさんとセルゲイじいさんが絡んできた。


血は繋がっていないはずだけれど、似た者同士で気があって何よりだ。


「ああ、俺も楽しんでるし、食ってるよ」


俺が答えると、二人とも目を見開いて驚いていた。


「ん?ああ、俺も村の仕事を担うようになったし、歳を重ねたついでに言葉遣いも改めようと思ってね」


そう。

考える言葉と話す言葉が違っていると面倒なので、今年から話し言葉を変えることにしたのだ。


言葉遣いひとつで俺に対する相手の扱いも変わってくるだろうしな。

子供らしい話し方だと、どうしても子供扱いは免れない。



なお、エルン村長とアデリナさんには相談済みだ。


改めた言葉遣いがしっくりきすぎていて不思議に思っていたみたいだけど、ギフトの影響だと伝えると納得していた。

つくづくギフトの設定は言い訳に便利だなと思う。



キリル兄さんとレフ兄さんはそこまで違和感がなかったようだ。

大人に混じっていろいろやっているところをずっと見ていたからだろう。


オレグとイリナはびっくりしていた。

「俺も6歳になったからな」と何の言い訳にもなっていない理由で押し通したけれど。




日中の宴会ではいろんな人に話しかけ、その度に驚かれた。


マクシムさんとセルゲイじいさんがくっついてきてその度に言葉遣いを茶化していたが、そのこともあって、何となく受け入れられたんじゃないかと思う。


俺以外に丁寧に話す子供がいなかったこともあるかもしれない。


アルトは有仁との統合前、エルン村に来てから丁寧に話すように心がけていたようだ。


王都で周りから虐待を受けていたこともあり、大人が信用できなかったことも理由の一つだろう。


ただ、丁寧な言葉遣いは周りに対する壁になっていたのかもしれない。


エルン村の人は驚いていたけど、どこかほっとしているようにも見受けられた。




夜になり、エルン村長とアデリナさんがエルン村に戻ってきた。



もう大分、大人たちは酒の量が進み、出来上がっているけれど、エルン村長の号令で広場に集まってきた。



エルン村長が今年10歳になった2人を呼び、前に並ばせた。


エルン村長は辺境開拓村で10歳まで生き延びたことを祝い、改めて2人の名前を報告した。


本来、10歳というのは課税対象になって戸籍に載ることになったという意味しかないんだけど、辺境開拓村では子供が10歳まで生き残ったこと自体を祝う習慣があり、エルン村でも北西村でも毎年祝福しているらしい。


この南東の辺境開拓村みたいに魔獣に襲われて子供が死なない辺境開拓村は他には存在しないと言ってもいいくらいなんだそうだ。


祝い事を減らすのも何だし、ということでやっているようだ。


10歳の2人は一つの境目を越えたということを実感しているのか、とても嬉しそうにしているし、これはこれでいいんじゃないだろうか。



エルン村長が10歳になった2人を少し下がらせて、その前に今年15歳になった3人を呼んで並ばせた。


こちらは成人、大人の仲間入りをしたということで、エルン村における大人としての権利と義務、それと教訓についてしっかりと伝えていた。


3人は大人になってできるようになることばかり考えていたのか、ちょっと面食らい、そして真面目な顔をしていた。


エルン村長が最後に「まあ真面目にするのは明日からでいいから、今日は大人の仲間入りとして、しっかり楽しみなさい」と告げると、3人は大人たちの盛大な拍手と笑い声に包まれて、嬉しそうにしていた



実は、俺も今年から大人扱いでいいんじゃないかという声が、大森林探索メンバーを中心に上がっていたらしい。


エルン村長とアデリナさんが「子どもとしての時間を奪わせるわけにはいかない」と反対してその話は立ち消えになったそうだ。



アルトと有仁の人格が統合されてすぐの時は、俺もなるべく早く大人扱いされるようになって、エルン村の改革を促進しようと考えていたんだけれど、今でも十分発言権はあるし、子供扱いされることでできた時間で、より効果的な改革ができそうなので、今はそのままでいいと思っている。




オレグやイリナ、それにレフ兄さんまで、眠そうになったら家に連れて行ったり、新たな節目を迎えた10歳や15歳の人たちを祝いに行ったり、大人たちに混じって騒いだりしている内に、宴はお開きの時間を迎えた。



エルン村長とアデリナさん、キリル兄さんと俺の4人で家路につく。


「今年も盛り上がりましたね」


「アルトを大人扱いしない、という風に取り決めたけど、ほとんど大人みたいな立ち回りをしていたね。大人の馬鹿騒ぎに混じっても違和感がなかったのが、今思えば違和感だったよ」


俺が声をかけると、エルン村長は少し苦笑いしながら言った。


「ほどよいタイミングでお酒を注いだり、いろんな人に話を回したり、大人よりもしっかりしていたわ」


「お酒に弱い人にあまり飲ませないようにしたり、酔い過ぎた人を介抱したり、配慮も行き届いていたね」


アデリナさんとキリル兄さんも少し呆れたように笑いながら言ってきた。


まあ、有仁の社会人経験と遊びサークルを回してきた経験が活きたかな。

楽しむ場を楽しめるように回すのは、有仁が公私ともに注力していたことだからなあ。



そうして今日のことや日頃のなんでもないようなことをを話している内に家に着き、1年の始めの日を終えた。


この作品を読んでいただきありがとうございます!


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