子ども同士の遊びと学び②
落とし穴をつくる土魔術も、水鉄砲を放つ水魔術も、土を動かす・水を動かすという極々基本的な動きを術式に落とし込んだもので、発火の魔術ほどではないがシンプルだ。
落とし穴の方はオレグが怪我をしないように土の動きを細かく操作したので、水鉄砲の方よりかなり複雑にしたが、単に穴を作るだけのシンプルなものを教えればいいか。
こういった遊びで使えるようなシンプルな魔術をいくつか作っておこうか。
子供向けだけでなく、大人向けにもちょうどいい初心者練習用の魔術になりそうだ。
この2人が魔術を覚えることにハマるようなら、俺の課題である『偽のギフト「大力」の設定による魔術開発の制限』を外す方向に繋げられるかもしれないな。
まず、発火の魔術をちゃんと使えるかを2人に確認すると、
「できるよ!」
「できるもん!」
と、すぐに使ってみせた。
シンプルな術式にしているとは言え、術式を組んで魔力で魔素を動かして発動するまで、2人とも結構スムーズだな。
よし、やるか!
イリナに「先にお願いしてきたオレグからやるよ」と伝えて待ってもらい、オレグの背中に手を当て、先ほど体験してもらった落とし穴の魔術を簡略化した土を動かす魔術を、オレグの体を通して行使する。
「うわあ!」
オレグが感嘆の声を上げる。
自分の指先から少し離れたところ、自分の体から極近いところで行使する発火の魔術と違って、3mほど離れたところの土を動かして穴を開けたから、かなり感覚は違うだろう。
しっかり術式を把握するようにオレグに伝え、先程よりもゆっくりと術式を組んで4度続けて行使する。
オレグの背中をぽんと軽く叩き、「さっきの感覚を忘れない内に、自分でやってみて」と伝える。
オレグは目を瞑って集中しながら術式を組み始める。
発火の魔術を既に行使できるから、術式を組んでから発動するまでの感覚は分かるだろうけど、すぐにはできないだろうな。
イリナに「お待たせ」と伝え、手を引いて川のすぐ側まで一緒に歩く。
イリナの背中に手を当て、今度はイリナが体験した水鉄砲の魔術を行使する。
1mほど離れた水面から、ピュウっと3mほどの放物線を描いてイリナから離れる方向に水が飛んだ。
「おお~」
感心したようにイリナが声を出す。
微妙にオッサンくさい口調だが、誰かの影響だろうか。
オレグと同じように、「今度はゆっくりやるからね」と声をかけて、術式をゆっくり組んで4度続けて行使する。
「今の感じで、今度は自分でやってみて」とイリナに声をかける。
イリナは「んん~」と目を瞑って踏ん張りながらさっきの術式を組もうとしている。
肩に力が入り過ぎだ。
肩をポンと叩いて、「肩に力を入れなくてもいいからね」と声をかける。
イリナから離れ、2人が視界に入る位置で様子を見る。
発火の魔術を教えた時は、魔素を動かすこと自体が初体験だったのもあって時間がかかったけど、今度は術式が発火よりも複雑だから苦戦しているようだ。
でも、2人とも正しい術式に向けて魔素を動かそうとしているのが分かる。
この2人は発火の魔術を教えた時も、術式の把握は早かったな。
年配の人に発火の魔術を教えた時は、術式を憶えること自体に苦戦していて、自分で魔素を動かせるようになっても何度も体を通して魔術を行使することを繰り返す必要があった。
オレグもイリナも、魔素を自分の魔力で動かせるようになったらすぐに発火の魔術を行使できるようになったから、習得までの時間は早かった。
2人ともそれぞれの魔術の術式を完全に把握したわけじゃなかったから、何度か体を通して魔術を行使した。
その後は眼の前で魔術を使っているところを見せ、他人が魔術を使っている時にその術式を感じられるようにする訓練も兼ねてみた。
オレグが先に土に穴を開ける魔術を行使できるようになり、そのすぐ後にイリナが水鉄砲の魔術を行使できるようになった。
使い慣れるまで何度か行使させた後、今度はオレグに水魔術を、イリナに土魔術を教えた。
日が暮れるまでには2人とも使えるようになったが、その前の魔術よりも使えるまでに時間がかかっていた。
オレグは土魔術に、イリナは水魔術に向いているのかもしれないな。
家に帰って、オレグとイリナが2つ魔術を使えるようになったことを伝えると、オレグ以外のエルン村長一家は驚いていた。
俺にイタズラされたことが発端だと知ると呆れていたけれど、エルン村長とアデリナさんは俺も今日は楽しんでいたことが分かって嬉しそうだった。
エルン村長とアデリナさんには、今度話し合うときにでも、シンプルな魔術をいくつか用意することと、その有用性についても相談しよう。
エルン村長の言うように「子供らしい時間」を過ごせたかは分からないが、目先のタスクを追うだけでなく、落ち着いた時間を取ることで、より最適な道が見つかることもあるものだな。
まだ手を付けていないやるべきこともあるし、今着手しているやるべきこともある。
ただ、今見えている「やるべきこと」だけで目が曇らないようにしよう。
この作品を読んでいただきありがとうございます!
もしよろしければ、ブックマークと評価の方もよろしくお願いします。




