子ども同士の遊びと学び①
「オレグ、イリナ、今日は一緒に遊ぼうか」
エルン村長の家で、朝食の後、2人に声をかけた。
「アルト兄ちゃん、いいの!?」
「アルトお兄ちゃん、お仕事は大丈夫?」
オレグには喜ばれたが、イリナには心配されてしまった。
「大丈夫だよ。さあ行こう」
今までの言い訳せずに行動で示す。
行動で信頼を取り戻そう。
・・・イリナから喜ばれるより先に心配されたのはちょっぴりショックだったけど。
エルン村長とアデリナさんには、オレグとイリナがいつもどこで遊んでいるかの範囲と、俺がついていたら行っていい範囲を確認済みだ。
俺がついていることで初めて行ける場所に連れて行くことでプレミア感を出せばお兄ちゃんポイントを稼げるかな。
・・・ふっ、我ながら人間小さいぜ。
オレグとイリナを連れて、エルン村の中では大森林に近い場所の川辺にやってきた。
エルン村を切り開いてから1年ほどはここまで魔獣がきていたらしいけど、それ以降は一度も来たことがないらしい。
川の近くは砂地になっているから、走って転んだりしても怪我はしないだろう。
「ここ、初めてきた!」
「わあー」
オレグもイリナも喜んでいる。
オレグは砂に足を取られる感覚が楽しいのか、早速走り回っている。
イリナは早速靴を脱いで、川に足を入れている。
この頃は2人で遊んでいたみたいだから2人で何かをするのかと思ったけど、何というか、自由だな。
しばらく好きにさせておく。
オレグは砂地で走る感覚に慣れてきたのか、いろんな走り方を試している。
イリナは足だけでなく手も川に突っ込んだり、顔を水面に寄せてじーっと見ていたりしている。
俺が放って置かれている気がしてきたので、ちょっかいをかけてみよう。
土魔術でオレグが踏み出そうとしているところに落とし穴を作ってみた。
下半身が埋まるくらいの穴で、怪我をしないように表面を柔らかくしている。
ズボッという擬音が似合いそうなくらいにしっかりハマって「うわー」と悲鳴を上げている。
ちょっと面白くて笑ってしまった。
イリナは振り返ってオレグの方を見て何が起こったのかと不思議そうに見ている。
水魔術でイリナの後ろから川から水鉄砲のように水を動かして頭にかけてみた。
びくっとしてイリナが振り返る。
逆側からも水をかけてみた。
またイリナが振り返る。
今度は正面から顔に水をかけてみた。
イリナは何が起こっているのか分からなかったようで、棒立ちになったまま目をパチクリさせている。
普段見せない表情だったのでニヤニヤしてしまった。
オレグは俺の顔を見て俺がやったと気づいたみたいだ。
オレグが落とし穴を出て俺の方に走っているのを見て、遅れてイリナも気づいたようだ。
「アルト兄ちゃんがやったの!?」
「アルトお兄ちゃん、ひどい!?」
2人の声がたまたま重なって、それがまた面白くて笑ってしまった。
「ごめんごめん」
謝るけど顔が笑ったままなのが自分でも分かる。
イリナも俺の方にきて「もー」と膨れている。
でも怒っている気持ちは長く続かなかったようだ。
「どうやったの?」
オレグが興味津々で聞いてくる。
「前に発火の魔術を使わせたことがあっただろう?あれは火の魔術だったけど、オレグに使ったのが土魔術、イリナに使ったのが水魔術だよ」
「土魔術かー。母さんやレフ兄さんが仕事で使っているのを見たことがあるけど、あんなこともできるんだね」
「うん。僕が今さっき作ったイタズラ用の魔術だけどね」
「ええっ」
オレグはかなり驚いたようで大きく口を開けたまま固まってしまった。
イリナはよく分かっていないみたいで、俺とオレグを交互に見ている。
「僕も使えるかな、さっきの魔術」
オレグが恐る恐るといった風にそっと尋ねてきた。
「母さんやレフ兄さんが仕事で使っている魔術は、使ってみたいと思ったんだけど、ムリだとも思ったんだ。でも、アルト兄さんがさっき使った魔術なら、発火の魔術を使えたみたいに、僕にもできるのかなって思って」
「私も、魔術、使ってみたい!」
オレグの、願いのこもった言葉の後に、イリナも続いた。
イリナは純粋に面白そうと思っただけかもしれないが。
エルン村の皆に、他者の体を使って発言させる形で発火の魔術を教えたけど、この2人はとても素直というか、俺に身を任せて、魔素の動きをなぞることがうまく、大人よりも早く習得できたんだよな。
子どものほうが魔力で魔素を動かすことに習熟しやすいのかもしれない。
子供に身体術を教えるのはリスクが高いけど、魔術を教えるなら体を壊すリスクは低いし、誤って魔術を発動して怪我をしないようにだけ気をつければ問題ないだろうか。
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