プロローグ③ アルト
アルトは王都で生まれ、今は辺境開拓村にいる5歳の少年だ。
生まれてから両親が亡くなるまではそれなりに幸せな生活を送り、両親が亡くなってからは地獄のような生活を送り、辺境開拓村に引き取られてからはまた幸せな生活を送っている。
アルトの父親は「怪力」のギフトを持ち、母親は「槍術」のギフトを持ち、両親は王国の独立戦闘部隊でそれなりの地位にあり、王都で暮らしていた。
その独立戦闘部隊は「剣士」のギフトを持つ隊長の才覚により抜群の戦果を立て続けに挙げており、王国でも有名になっていた。
だが、辺境育ちの隊長が有名になることで貴族たちに大いに妬まれ、宮廷政治の結果、隊長は独立戦闘部隊を抜け、辺境開拓村に送られることになった。
その隊長の後釜に指名されたのが、アルトの父親であった。
独立戦闘部隊の権限は大きく削減され、貴族の軍組織下で管理されることになり、貴族たちによって戦争の最前線で使い回されることになった。
それでもギフト持ちを多く抱え、使い潰されずに活躍していた元独立戦闘部隊は、部隊を指揮下においている貴族たちに疎まれた。
貴族たちによって罠にかけられ、ギフトが使えない状態で敗戦の殿にさせられ、アルトの父親と母親は奮戦し、部隊の者の多くを逃した上で、戦死した。
貴族たちは元独立戦闘部隊を貶め、中でも隊長だったアルトの父親を徹底的に貶めた。
立場が急激に悪化した元独立戦闘部隊の生き残りとその家族は、自分たちの境遇の原因をアルトの父親のせいだとして、遺された4歳のアルトと2歳の妹だけが住む家に押し入り、金や物を取り、時には兄妹に暴行を加える者もいた。
食料が尽き、動けなくなった兄妹が死なずに助かったのは、独立戦闘部隊の元隊長が家を訪ねたからだった。
辺境開拓村の長となった元隊長は、敗戦の噂を聞いて元独立戦闘部隊の者やその家族がどうなったのかを確かめるつもりだった。王都で余裕のない生活を送っているようであれば、辺境開拓村に誘うことも考えていた。
だが、餓死寸前の兄妹を見つけ、事情を知った。
元独立戦闘部隊の者とは縁を切って、兄妹2人だけを辺境開拓村に連れ帰ることにした。
兄妹は元隊長現村長の家で暮らすことになった。
辺境開拓村は厳しい環境に置かれているものの、村長とその家族、村長家族以外の村人たちは兄妹を快く受け入れ、兄妹は村長の妻や息子たちともすぐに仲良くなり、両親が生きていた頃と同じように幸せに過ごすことができた。
1年後、5歳になったアルトが一人で過ごしているとき、唐突にギフトに目覚め、別人の人格と記憶が覚醒したのであった。
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