身体術・魔術の教授訓練
「もう一点、お願いがあります。これはエルン村長とキリル兄さんの2人にお願いしたいことなんですが、他者の体を通じて身体術と魔術を行使すること、これをできるようになってほしいんです」
これはエルン村長にもまだ伝えていなかったことだ。
キリル兄さんが特訓に同意してくれたら、2人にお願いしようと考えていた。
エルン村長もキリル兄さんも意外だったようで、目を見開いて驚き、そして考え込んだ。
「アルトが12歳になって王都行きになっても、身体術と魔術を教える活動を止めないようにするためね?」
アデリナさんが問いかけてきた。
「はい。今教えている人たちへの継続的な訓練もそうですが、今後新たに教える対象が増えた時、教える範囲を広げる時にも対応できるようにしたいです。間違いなく、この辺境開拓村の力の底上げになると思うので」
「うん。身体術や魔術を使えるようにできること、これは本当にかけがえのない技術だと思う。そして、アルトに私の体で身体術を行使してもらうことで、何となくだけど、この他者の体で行使する技術の感覚も掴めそうな気もしているよ」
「僕も、アルトに身体術をかけてもらって、自分が自分以外の剣などを強化する技術の延長として捉えられるような気がしていたよ。すぐには難しいし、安全に行使するのはもっと難しそうだけど、絶対にできないわけではなさそうに思えるね」
エルン村長とキリル兄さんが俺の提案に乗ってくれた。
「他者の体での訓練は、僕の体でやってもらえば、『何か』あっても自分で治せるので、定期的に時間を取りましょう」
「・・・アルトの体で試すようなことはしたくないけど、それが一番安全なのかな。あまり気が進まないなあ」
キリル兄さんが顔をしかめて発言した。
子供相手にやりにくいかもしれないけど、そこは我慢してほしいところだ。
「ふと思いついたんだけど、アルトが他者の体を通して他者の体で身体術を行使する、というようなことはできないかな?アルトが私の体を通してキリルの体で身体術を行使する、というように。それができるなら、他者の体で身体術を行使する感覚が掴みやすくなりそうに思ったんだけど」
エルン村長が思いついたことを提案してきた。
正直な話、俺も同じことを思いつきはしたんだけど・・・
「僕も同じようなことを考えたことがあるんですが、絶対に無理というわけではなさそうですが、非常に難易度が高い上に、できたとしてもそこまでメリットもなさそうなんですよね」
「まず、僕がエルン村長を通してキリル兄さんの体で身体術を行使する場合、エルン村長とキリル兄さんのどちらか、もしくは両方の体の無事が保証できなさそうです。そして無事にできたとしても、僕がエルン村長の体で身体術を行使する場合とそれほど感覚が変わらなさそうな気がして・・・」
棒の上で皿回しをして、その皿の上に棒を立てて皿回しをする、みたいな、普通の皿回しの何万倍練習しても難しいような、そんなイメージなんだよね。
Aを通してBを通してCを通して・・・みたいな入れ子構造で身体術を行使できるなら、教え方を教える、のような、世代を超えて確実に技術を承継させることができそうなんだけど、実際には無理そうだ。
「実践することが非常に難しい上、できてもそれほど効果も見込めない、そういう技術になりそうということだね。もしできるなら、アルトの体で試すようなこともしなくていいかなと思ったんだけど、無理そうだね」
ため息をつきながらエルン村長が納得してくれた。
俺の体で試すことを回避するアイデアとして、入れ子構造での伝授を考えてくれたんだろうな。
「それでは、キリル兄さんの特訓と、他者の体を通しての身体術・魔術の訓練、これらも定期的に実施するということで、よろしくお願いします」
エルン村長も、アデリナさんも、キリル兄さんも、後者の方についてはまだ納得しきれていないかもしれないけど、この辺境開拓村にとって必要不可欠なことなので、決定事項として押し切った。
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