サストガードでの取引条件設定、ブランドの機能
南部辺境開拓地域を王家直轄領からバウエルン子爵領として引き継ぎ、運営を管理者だったジェニアから引き継いで領内統治を進めていった。
新たに管理者となってもらったレフ兄さんと、その奥さんのケイトさんの主導で旧体制からの改革を進め、先の計画まで立てて当面は大丈夫だろうとなったところで、俺は南部辺境開拓地域から南東辺境開拓地域の近隣の街、サストガードへ向かった。
エルン村での魔素農法による農産物の取扱条件について、エルン村長とアデリナさんと打ち合わせて内容を決めてある。
サストガード男爵と面会し、こちらが提示した条件で問題ないとなったので予め作成しておいた契約書面に互いにサインし、今後の条件を確定させた。
一点だけエルン村長たちに告げずに決めたことがある。
今後はエルン村以外でも魔素農法で魔素を含まない農産物を生産していく予定がある。
分かりやすく魔素を含まない農産物であることを示すために、『ソーディス』ブランドの農産物として明示して販売することを義務付けることにした。
剣をモチーフにした印章も作成済みだ。
有仁の世界では「ブランド」には3つの機能があるとされていた。
「保証機能」「識別機能」「想起機能」の3つの機能だ。
保証機能は、一定の品質や特定の機能を有することを保証する機能だ。
ソーディスブランドの印章があれば、魔素が含まれていない農産物であるという品質を明示することになる。
識別機能は、他の物とは違うという差異を識別させる機能だ。
なぜ同じような物なのに値段が違うのか、ソーディスブランドの農産物だからだ、と顧客に識別させることになる。
想起機能は、顧客の経験と結び付き、経験から想起させる機能だ。
一度ソーディスブランドの農産物を使った料理を味わえば、ソーディスブランドの印章を見ただけでその経験が想起されるようになる。
ソーディスという名前は、当然にエルン村長、エルン・ソーディスを連想させるだろう。
そして、エルン隊の歌、エルン村の歌に登場するエルン村長の妻、アデリナ・ソーディスが農業ギフトの保有者だと歌われていることにも思い至る者もいるかもしれない。
連想する機会が増えれば、ブランドの想起機能は更に強化されていくことになる。
契約の文言にソーディスブランドのことを盛り込んでいることに気付いたサストガード男爵が俺に質問してきたので、ブランドの機能について軽く解説してみせたが、サストガード男爵はその効果について感じ入るものがあったようだ。
エルン村の農産物の取引条件の整理だけでなく、更に効果的な施策を盛り込んだ俺のことを、それなりにやり手の領主だとも認めてくれたみたいだ。
辺境での魔素農業が浸透するにつれて、ソーディスブランドの農産物の取引量は拡大していき、辺境に近い街から更に他の街へと広まっていくだろう。
そう遠くない未来に、ソーディスブランドというブランド自体に価値が生まれるかもしれない。
後で知ったエルン村長は、また何とも言えない羞恥に見舞われるかもしれないな。
いや、別に「サイレント・トリートメントもどき」の仕返しというわけじゃないぞ?
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