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大力(嘘)で身を立てる  作者: ろん
第三部 貴族立身

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帰郷と儀式② 領土引き継ぎの儀式

エルン村が、見えてきた。



人は増えていないようで、家などの建物もほとんど変わっていないようだ。


ただ、農地が広がって、大森林が後退したように見える。


あれから更に切り拓いたんだろう。



エルン村の入口の手前で、エルン村長が立っていた。


アデリナさんも、キリル兄さんも、エフゲニさんもいる。


セルゲイじいさんまでいる。



俺の胸に込み上げるものがあったが、我慢して真面目な顔を保つ。


まずは、儀式からだ。



グローフィル子爵がエルン村長に挨拶して、そのまま馬車ごと村の広場へと向かう。


俺と一緒に来たマクシムさんも一言も喋らず真面目な顔をしている。


アルト隊の連中も空気を読んで静かにしているようだ。



広場でグローフィル子爵が馬車から降り、俺の前に立つ。


エルン村長が俺とグローフィル子爵の脇で跪いている。


グローフィル子爵が王家側で保管している勅書を広げた。



「南東辺境開拓地域は、これより王家直轄領からバウエルン領となり、バウエルン子爵家の管理する領地となる。


辺境開拓地域が1貴族家の領地となるのはこれが初めてのことであるが、この勅書に定められた通りに王家とバウエルン家はそれぞれの権利と義務を有するものとする」


王家を代理するグローフィル子爵の宣言で、今この時から南東辺境開拓地域はバウエルン家の領地となった。


グローフィル子爵はそのまま続ける。


「南東辺境開拓地域は王家よりエルン・ソーディスに管理を任せていた。


王家とバウエルン家、そしてエルン・ソーディスの意思により、これからはエルン・ソーディスはバウエルン家に仕える者として、引き続き南東辺境開拓地域の管理者であるものとする」


これで、王家直属の立場だったエルン村長は、ソーディス家としてバウエルン家の寄子となった。


これは俺がエルン村にいた時に、俺が貴族として南東辺境開拓地域の領主となった時にそうしようとエルン村長たちと取り決めていたことだった。



儀式は本当は前段と後段でいろいろと細々とした段取りがあり、時間がかかるものだったが、グローフィル子爵に必須なもの以外は割愛してもらうことを頼んで承諾を得ていた。



「それでは、この南東辺境開拓地域の統治者となったアルト・バウエルン子爵を迎えての祝いの宴としましょうか」


儀式が終わったものと判断したエルン村長が立ち上がり、宴会の始まりの宣言をすると、静かにしていたエルン村の人たちが歓声を上げた。


俺やレフ兄さんは「変わらないな」と思って笑っていたが、他のアルト隊の者たちは戸惑い、そしてこれから宴会だと認識して喜んでいた。


ケイトさんも戸惑っていたので、このノリは辺境でもエルン村特有のものなんだろうな。



グローフィル子爵たちも誘われて宴会に参加するようだ。


グローフィル子爵たちは、魔素の濃度が辺境開拓地域の中でも濃いエルン村に長時間いると馬車を引く馬が魔獣化する恐れがあるので、短時間でエルン村よりは魔素の薄い北西村まで引き上げてそちらで1泊することで決まった。



「食べ頃になった瘴気獣の肉がありますので、グローフィル子爵たちも、アルト隊の方々も、ぜひお召し上がりください」


エルン村長がそう言うと、グローフィル子爵たちは戸惑い、アルト隊のメンバーたちは大喜びで歓声を上げた。


アルト隊では何度か瘴気獣の肉の旨さについて話したことがあったからな。


まあ、見た目には一度引くと思うけども。



瘴気獣の肉は瘴気獣が死んでから3日ほど経つと瘴素が完全に抜け、それから3日ほど経つと塵となって消えてしまう。


今瘴気獣の食べ頃の肉があるってことは、俺たちが到着すると思われる期間に、連日か隔日くらいのペースで瘴気獣狩りをして保管していたんじゃないだろうか。



すごい労力だったと思うけど、これがマクシムさんが黙っていたサプライズの1つなんだろうか。


この作品を読んでいただきありがとうございます!


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