帰郷と儀式① 北西村、エルン村への道
北西村の中へ進んでいった。
王家の紋章を掲げている、王都の使者と一目で分かる馬車と一緒だから、村に入る時に呼び止められるようなことはなかった。
そもそも門番とかもいないしな。
まあ、わざわざ辺境に不法侵入する者など想定していないだろうし、いてもエルン村で鍛えた者がいればすぐにバレるだろうから、それで問題ないんだろう。
ちょっと見渡しただけでもエルン村にいた人が結構いる。
エルン村と北西村の人の交流が増えているんだろうな。
俺の方を見て、王都の使者の馬車を見て、軽く手を振ったりしてくる人がいたので、俺もそれに手を振り返す。
レフ兄さんに気付いた者もいたようで、そちらでも手を振り合っていた。
「おーい!アルト!」
一際大きい声で俺に声をかけてきた人がいた。
あれは・・・マクシムさんか!
槍術ギフト保有者で、他者の身体で行使する身体術を初めて試したセルゲイじいさんの娘婿のマクシムさんが、こちらに大きく手を振りながら走って近づいていた。
「アルト・・・お前、俺よりも背が高くなっているじゃないか!
本当に大きくなったなあ。
まあ、遠目に見てもすぐに分かったが」
マクシムさんの身長は180cmを少し超えているくらいか。
俺が村を出た時はマクシムさんより少し背が低かったけど、今は190cmを超えている。
12歳の時から既に顔が老けていると言われていたから、顔はあまり変わっていないのかもしれない。
「レフ!
お前も大きくなったな!」
マクシムさんは俺の方をバシバシ叩いた後、後ろにいたレフ兄さんにも声をかけた。
レフ兄さんは5年以上ぶりの帰郷になる。
それでもマクシムさんにはすぐに分かったようだ。
レフ兄さんの隣りにいたケイトさんがマクシムさんに挨拶し、レフ兄さんの妻だと言ったことで「うひゃーー!」とマクシムさんが奇声を上げて驚いていた。
一人再会しただけでも賑やかだな。
御者台のサンチェスとゴバロ、そして馬車から少し顔を出しているグローフィル子爵も笑っている。
マクシムさんはグローフィル子爵に気付いて、
「これは失礼しました。
ここから私が案内します」
と畏まって話し、近くにいたエルン村から来ている者にエルン村へ先触れに行かせた。
領土引き継ぎの話やそのための儀式の話は、結構前に先触れの使者が来てエルン村にも伝わっていたらしい。
到着する時期を見計らって、マクシムさんやエフゲニさん、それにキリル兄さんが交代で、日中に北西村を見回って待つようにしていたそうだ。
俺がいた時より北西村が栄えている気がしていると伝えると、「実際に人が増えているし、活気も出てきたな」とのことだった。
理由を尋ねると、「そいつはエルン村長に聞くといい」とニヤリとしていた。
うん、なんとなく理由は分かった気がする。
北西村からエルン村へと続く道を進む。
北西村はそれほど辺境らしさというものが感じられなかっただろうが、そこから奥に進むと大森林の存在を感じるだろう。
道はかなり広めに拓いてある。
道の脇から魔獣が出てきても、構えるなり逃げるなりする時間を稼ぐためだ。
エルン村の運営がうまく回りだしてからは、エルン村の位置より北西の方向に魔獣が出没することはなくなっているが、それでも道の整備は定期的に行われていて、今も道は広く、道の脇のところも更に広く木が根から撤去されて草地になっている。
それでも、道の脇の草地の奥は大森林だ。
深黄緑のアルト隊の制服の色がここでは自然に見える。
大森林の色だということが、アルト隊の連中にもよく理解できただろう。
俺、レフ兄さん、ケイトさん以外のアルト隊のメンバーはしばらく無言になって大森林を眺めていた。
グローフィル子爵たちは僅かに緊張していたが、もう慣れたものだろう。
俺はマクシムさんにエルン村のことや北西村のことをいろいろ聞き出そうとするが、妙にはぐらかされる。
エルン村で何かありそうだな。
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