帰郷への旅路② サストガードの街、サストガード男爵
サストガードの街に到着した。
南東辺境開拓地域から北西方向に100kmの場所にある、辺境に何かあった時に最前線となる役目を持つ街だ。
2年以上前に来た時よりも栄えているような気がする。
人が増えているように見えるし、活気も増しているように見える。
グローフィル子爵の紹介でこの街の街長のサストガード男爵との面会が予定されているから、その時に聞いてみるか。
サストガード男爵の屋敷に到着した。
前に来た時はグローフィル子爵以外は兵舎のようなところに案内されたが、アルト隊のメンバーもサンチェスとゴバロも客人向けの施設に案内された。
ブライムとリュクは一代限りだけど男爵だし、後のメンバーも騎士と準騎士だからかな。
アルト隊が国内でも有名になっていることもあるかもしれない。
サンチェスとゴバロは、2人だけ兵舎に放り込むと印象が悪いのでオマケで好待遇というところか。
以前来た時にグローフィル子爵を案内していた家令と思われる男に案内され、グローフィル子爵と共に本館に向かう。
本館の食堂に入ると、そこでは背は低いが恰幅のいい男が待っていた。
「お久しぶりでございます、グローフィル子爵。
そして初めてお目にかかります、バウエルン子爵。
私はこのサストガードの街長を務めております、ウスマン・サストガードと申します」
「久しぶりだが、いつもより早めの再会となったな、サストガード男爵」
「初めまして、サストガード男爵。
南東辺境開拓地域と南部辺境開拓地域の領主となる、アルト・バウエルンです」
丁寧だが慇懃無礼ではない塩梅でサストガード男爵が挨拶し、グローフィル子爵と俺が挨拶を返した。
サストガード男爵は下手に出る風でもなく、こちらを下に見るでもなく、これからもてなそうという雰囲気は出している。
辺境に近い街の街長として長年務めてきた風格のようなものが感じられるな。
食事をしながら話をしましょうという勧めに乗って、グローフィル子爵と俺も席につく。
食前酒が運ばれてきて乾杯した後、前菜が運ばれてくる。
サストガード男爵とグローフィル子爵で王都の最近の流行など、軽い話題をやりとりしている。
サストガード男爵からすると、俺にいろいろ聞きたいことや確認しておきたいことがあるだろうに、そんな素振りも見せていない。
なかなかの人物かもしれないな。
そう考えながら前菜に手を付ける。
この前菜に使われている食材・・・エルン村の魔術農法で収穫されたものか?
魔素が全く含まれない、最後の生長促進の魔術で魔素を使い切るようにした作物だな。
魔素による雑味が全くないから誰にでも好まれるだろう。
収穫してから日持ちしない野菜もあるが、これはエルン村で収穫されてから3日以内に運ばれてきた物だな。
結構な高頻度でエルン村とこのサストガードで物のやりとりがありそうだ。
北西村からサストガードまで100km、エルン村からならプラス10kmはある。
魔素農法はエルン村で行っているはずだ。
輸送手段は、替え馬を用意して馬車を24時間動かすなら丸1日で届けられるが、そこまではしないか。
あとは、身体術で走って運ぶくらいしか短時間でそれなりの量を運ぶ手段が思い当たらないな。
鮮度維持の期間が短い高級品は高速輸送、それ以外は通常の馬車での輸送などの使い分けはあり得るか。
2年前より栄えているように見えた理由の一つに、エルン村からの食料供給があるのかもしれないな。
需要に応じての大量生産も可能だし。
いろいろ考察しながら、たまに振られてきた話に応え、食事を進める。
最後にデザートで果物が出てきたが、これもエルン村産だな。
食事を終え、ティータイムに移った。
ここで酒を出さないということは・・・
「これからは、南東辺境開拓地がこのサストガードと同じ王家直轄領から、バウエルン子爵の治める領地となるんですね」
「そうなりますね」
確認された内容に、俺が端的に答えると、サストガード男爵は紅茶を啜って間を取った。
グローフィル子爵はここでは口を挟まずに静観するようだ。
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