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大力(嘘)で身を立てる  作者: ろん
第三部 貴族立身

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アルト隊第1回公募⑧ 残りのテスト、選択肢と覚悟、採用決定

ソフィアのテストが終わって残り38人。


何人かまとめて相手にしようか迷ったが、1人ずつ相手をすることにした。


テスト方法の変更は公平性に欠けるように見えてしまうからな。



俺以外の隊員に模擬戦を任せることも考えたが、オレグとイリナは加減がうまくできるか分からず、入隊希望者が弾け飛ぶ可能性があるし、2人以外だと入隊希望者との力量差がそこまでない場合にこれまた手加減をミスする可能性がある。


レフ兄さんには任せられそうなんだが、隊外には軍属の生産系ギフト保有者で通しているので、入隊希望者の相手をさせるのはまずい。


・・・結果、俺が1人で相手するしかないわけだ。



模擬戦終了後の治療は、生命魔法ギフト持ちのソフィアと、隊員で生命魔術を使える術士に任せることにした。


これで俺は模擬戦だけを回すので、1人あたりの時間短縮ができる。


俺でなくては治せないような怪我を負わせなければうまく回る。




1人あたり平均3分程度で済ませて、2時間程度で38人の相手をした。


ランニングで元傭兵3人組に長くついていけた順で模擬戦を行ったが、持久力や走力がある者が、模擬戦でいい結果を出せるとは限らない。


戦闘技術の良し悪し、立ち回り方に工夫を見せたかどうか、根性があるかどうか、いろんな視点で採点して、先に模擬戦を行っても模擬戦の採点はあまりよくなかった者も結構いた。


自分より先に模擬戦を行った者がどのようなダメージを受けたか、どのようにやられたかなどを見て、いろいろ考えて動きが悪くなる者も、思い切りよく動く者もいた。




ソフィアより後に模擬戦を行った者は、自分の選択肢に気付けたと思う。



まず、模擬戦に参加するか、辞退するかの選択肢があった。


辞退すれば、当然アルト隊の入隊は見送られる。


可能性が0になるわけで、辞退した者は1人もいなかった。


午前のテストで182人中42人に残れた立場になったので、それが惜しいという思いもあったかもしれない。



そして、模擬戦で受け身になるか、自分から攻めるかの選択肢があった。


入隊テストをただ乗り切ればいいと考えるか、自分にできることを尽くして積極的に結果を出すと考えるか。


先に模擬戦を受けた者を見れば、どちらを選んでも同じようにボコボコにされていることは分かっただろう。


どちらを選んでも、どちらにしてもボコボコにされるなら、覚悟を決めて前に出ることを選べるか。


その根性、覚悟は俺が重視した点だった。



有仁の友人にファンドマネージャーの職に就いている者がいた。


ヘッジファンドに務め、巨額の資金を運用して、コンスタントに利益を上げて多額の報酬を得ていた者だ。


ただ、その友人は、自分の資金で行う投資ではあまりうまくいっていなかった。


他人の金を運用する時は理論や手法に沿って冷静に投資し、また投資を引き上げることが出来ていたが、自分の金を運用する時は思い切ったことができず、また損切も出来ずに結果的にマイナスに陥っていたりした。



入隊希望者たちにとって、前に出ることが評価に値し、どちらにしてもボコボコにされ、そして治してもらえることが分かっていながら、自分の番になると前に出ることが出来ない、そのような者が結構な割合で存在した。



自分の選択肢に気付き、その上で覚悟を決められるか。


1回戦争に参加するだけなら話は違ってくるだろうが、アルト隊に入隊してもらうならこの点は重要だと、俺は考えている。




午後の42人の入隊希望者のテストを終えて、3日後に合否の通知を送ると告げ、入隊希望者たちを解散させた。



隊員たちには、明日の朝までに採点結果を整理して、合格させるべき者を挙げておくように伝えた。


俺自身も、大体のところは決めていたが、時間を置いて午前と午後の採点を見直して考えることにした。



心理学に『初頭効果』と『終末効果』というのがあったな。


初頭効果は最初に見たものの印象でそれ以降を判断したりする傾向のことだ。


終末効果は最後に見たものの印象が強くなり、その印象で全体の印象を決めてしまう傾向のことだ。


今回の入隊テストでは、俺は終末効果に気をつけるべきだろう。


印象だけで考えると、模擬戦の内容で判断してランニングの内容を軽視しかねないからな。




朝、俺なりに検討を加えた結果をまとめて、駐屯所の会議室に向かった。


民主的に投票で決める、なんてことをするつもりはない。


俺が最終的に決めるつもりだ。


ただ、他の隊員の意見を聞いて、特に俺と違う結論を出している者の意見を聞いて、納得できたら俺の意見を変える可能性はある。



隊員全員が会議室に集合し、俺は隊員から採点した紙を回収して目を通した。


土木ギフト持ちのラルビ、生命魔法・槍士ギフト持ちのソフィアの2人は全員一致の上位評価で合格だな。



模擬戦でラルビとソフィアの間にいた2人も、採点の多寡の違いはあるものの、全員合格ラインだと評価していたので、この2人も合格でいいだろう。



俺と違う結論を出している隊員には都度質問していった。


まあ、多いのは自分が誘った者の評価を高くしているパターンだな。


隊員に誘われて入隊テストを受けた者は午前も午後も健闘していた者が多かったので、それはそれでいい。


しかし、覚悟が決まっていなかった者は評価できない。


そのことを伝えると俺が不合格と判断した者を紹介した隊員は項垂れた。



極端にズレた評価をしている隊員は1人もいなかった。


一通り意見を聞き、最終的に入隊を認める限度の人数と考えていた20人の合格者を選定し、アルト隊に入隊させることに決めた。



20人中、ギフト保有者は8人。


この8人にラルビとソフィアも含まれている。


つまり、10人いたギフト持ちの内2人は不合格にしたというわけだ。


ギフト持ちだということ自体を採点の加点にはしなかった。


軍事系ギフト保有者でも、採点基準に満たなければ不合格にした。




20人全員を最初は国軍に訓練生扱いで届けて、隊士や術士の資格を与えられるようになるまで鍛えて行くことになる。


それでもアルト隊の隊員が一気に倍以上に増えることになった。


やるべきことは多いが、できることも増えていく。



さあ、今後の展望を開いていくとしようか。


この作品を読んでいただきありがとうございます!


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