アルト隊第1回公募⑥ ラルビと続く2人の模擬戦
午後の模擬戦は、午前の行軍のテスト、ランニングで元傭兵3人組についていけた順に行うことにした。
最初に行うのは、土木ギフト持ちのラルビだ。
大きな槌を構えている。
ギフトで扱いやすい武器が槌になるんだろう。
鍛冶ギフト持ちのレフ兄さんと同じだな。
入隊希望者たちと模擬戦を始める前に、模範の模擬戦を見せたのは、俺を殺す気で全力で攻撃して構わないことを示すためだ、と伝えた。
まあ、こちらから攻撃しないとは言っていないが、入隊希望者たちの緊張は大分解けたようだ。
「始め!」
俺が声をかけると、ラルビは通常サイズの刃引きした剣を持った俺に全力で打ちかかってきた。
俺はそれを剣の腹で受け、俺の剣が微動だにしなかったのでラルビの槌の方が大きく弾かれた。
ラルビは、身体強化の身体術はそれなりのレベルで安定して使えているが、武器を身体術で強化することはできていないようだ。
次は俺からラルビの持つ槌に向かって斬りつけた。
ラルビが吹っ飛んだが、槌は手放していない。
俺がラルビの方へ歩いていくと、ラルビが水平に槌を振ってきたのでそれを避けた。
当てるイメージで振っていったと思うが、俺が避けたと気付くと槌を止め、そのまま再度俺に向かって当てるように振ってきた。
体幹はしっかりしていて、槌の扱いはなかなかのレベルだな。
俺は再度槌を避けながら空いた左脇腹に軽めに剣を当てた。
ボグッと音がなったが、打撲程度で骨が折れたりヒビが入ったりはしていないだろう。
体の強度を高める身体術を使えてはいるが、攻撃に集中しすぎているのか疎かになっているな。
ラルビは歯を食いしばって耐えながらまだ槌を振ってくる。
次は右脇腹に剣を軽く当てた。
先程よりは強度を高められているが、ほんの少し違うくらいか。
防御を意識しても身を守る強度を高める身体術はあまり使えないのかもしれないな。
両脇腹を痛めて顔を歪めながらまだ槌を振ってくる。
次は先程までより強めに左脇腹に剣を当てた。
バキャっと音が鳴り、肋骨が折れたようだ。
吹っ飛びながらも槌を手放していないが、持っているのが精一杯で振ることはできないくらいか。
「終了だ!」
もう戦うことはできなさそうなので、終わりを宣言した。
「自分で治せるか?」
「・・・いや、できねえ」
身体術で自分を治療ができるか聞いてみたが、ラルビはできないようだ。
土木ギフトの内容から全くできないわけではないと思うが、骨折までは無理ということかな。
俺はラルビに近寄って、ラルビにしか聞こえない程度の声で話しかけた。
「俺は他者の身体で身体術を使わせることができる。
アルト隊では俺以外にも何人か同じことができる者がいる。
今から俺がラルビの身体で身体術を行使して治療を施すぞ」
俺がそう言うと、信じられない者を見るような目で、痛みに堪えながらうずくまった姿勢で俺を見上げてきた。
俺がラルビの背中に手を当てると、隊員たちが可哀想なものを見る目でラルビを見ている。
「怪我をした時よりも痛いから歯を食いしばっておけ」
俺はラルビにそう告げて、ラルビが何かを言う前にラルビの身体で身体術を行使した。
「んんんぐううう、ぎゃあああああああああ!!!!」
ラルビは歯を食いしばって、すぐに耐えられなくなって悲鳴を上げた。
ラルビが槌を取り落として地面に膝を付けてうずくまっている。
「ラルビの模擬戦は終わったから、あっちで待機しておいてくれ」
俺がそう告げると、ラルビは立ち上がりながら言いたいことを呑み込んだような表情で「・・・おう」と答え、俺の指差した方へ歩き出した。
続けて2人、午前の訓練でついていけた者順に模擬戦を行ったが、ラルビの模擬戦を見て腰が引けていたのもあり、軍事系ギフト持ちなのに少し物足りない結果となった。
根性がない、というわけではないが、精神的に立て直せなかったというところか。
ラルビが根性の面でもすごかっただけで普通なのかもしれないが。
身体術の使い方はラルビより優れてはいたけどな。
午前の結果と合わせると十分合格ラインと言っていいか。
そして、4番目に元傭兵3人組についていけた者、生命魔法と槍士のギフト保有者のソフィアの番が来た。




