アルト隊第1回公募③ 行軍のテスト終了、意外な者
1周800mの外周で、元傭兵3人組が2周目に入ったところで、続いている者は15人になっていた
最初から続いて走ろうとしなかった者が86人。
1周走る内に脱落していったものが81人。
続いている15人にソフィアが入っている。
身体術の使い方はまだまだだが、御前武試でも使っていた疲労を回復する魔法を使って体力をカバーしているようだ。
残り14人の内訳は、ギフト持ち8人とギフトなし6人。
脱落した者の中にもギフト持ちは12人いた。
最初から続かなかった者の中にもギフト持ちが3人いた。
続かなかったギフト持ちは体術、斧術、剛力か。
ギフト持ちだから惜しくはあるが、やる気のない者は不要だな。
ギフトと異なる身体術を仕込むことを考えると、ギフトなしの者より育てるのが大変そうだ。
俺が一番注目しているのはソフィアだが、3人組のペースについていっているギフト持ちで、というか今回の入隊希望者の中で唯一の生産系ギフトの保有者がいる。
レフ兄さんたちと開催していた生産系ギフト持ちの交流会にも参加していた人物だ。
土木ギフト保有者のラルビ。
王都で仕事に困っているわけでもなかったようだが、体を鍛えるのが趣味で戦場にも憧れがあると言っていたな。
今28歳で身長は180cmくらい、趣味がダテではないくらいに体はムキムキに仕上がっている。
俺が予め声をかけていた中の一人だが、それほど熱心に声をかけていたわけじゃなく、交流会で『こういうことを考えている』くらいで話題に出した時に軽いノリで「なら俺も参加するぜ!」と言ってきた、というくらいだ。
記念受験的なものかと思っていたが、ラルビは持久力も走力も訓練して準備してきたようだな。
2周、3周、4周・・・と3人組が回る度に続いていたものは脱落していき、14周目でソフィアが脱落していた。
生命魔法で疲労を回復しても精神力は回復できなかったようで、集中が切れて身体術をうまく行使できなくなったようだ。
優れた容姿をしていると思うが、絶望、悔しさ、怒り、いろんな感情が表に出ているようなすごい顔をしているな。
思わず笑ってしまいそうになったが、俺は身体術で顔の表情を抑えた。
ソフィアが脱落しても続いていた者は3人で、その内2人は20周目まではもたなかった。
41周目で脱落した最後の1人が、ラルビだった。
結構・・・というか、かなり健闘したな。
アルト隊で初めて走らせた時、諜報ギフト持ちのリュクが21周目で脱落したが、それを優に超えている。
続けなくなっても自分に可能なペースで走り続けている。
正直なところ、そこまで走れるとは思っていなかった。
入隊テストに参加したこと自体も驚きだったが、何度も驚かせてくれるな。
3人組が走り始めて4時間が経ち、外周を180周走り終えた時には、入隊希望者は大きく2つのグループに分かれていた。
最後まで走り続けていた者と、途中で諦めて歩いているか流している者だ。
ランニングを始めた地点で、走り続けた者が到達する度に呼び集め、最後まで走り続けた者が全員集まった時点で、俺は終了の声をかけることにした。
「これで行軍のテストは終了だ!
今回3人の隊員に走ってもらったペースはアルト隊の行軍の最低基準の速さだ。
入隊後はこの基準を達成してから他の訓練を本格的に始めることになる。
それまで我々は入隊した者を鍛え続けることになるが、やる気のない者を鍛えることは戦争に勝利するよりも困難だ。
最後まで走り続けた者以外は不合格とする!」
俺に不合格と宣言された者は、ほとんどが『そうだろうな』と納得したようだが、午後の模擬戦で取り返せると考えていたらしい者たちは文句を言ってきた。
俺が不合格だとした者の中にギフト保有者は14人いた。
182人の参加者の内ギフト保有者は24人いたが、その中の10人しか最後まで走っていなかったということだ。
しかもその中の1人は生産系ギフト持ちだ。
文句を言って俺の方に向かってきたのはギフト保有者8人を含む20人。
一々話を聞いてやるのも面倒なので、
「お前たち相手にテストを続けてやるほど暇じゃねーんだよ!」
と怒鳴りつけるとともに生命魔術と精神魔術を行使した。
向かってきた20人は膝から崩れ落ちた。
意識は落とさないようにしてある。
「とっとと帰れ」
俺が続けると、20人が首をガクガクと縦に振る。
まあ、まだ体を動かせないだろうな。
俺は面倒だと思いながら20人のゼッケンを1人ずつ剥ぎ取って回収して、後は放置した。
午後の模擬戦まで残ったのは42人。
俺や隊員が声をかけた者が大部分だったが、そうでない者も結構残ったな。
想定していたよりも多かった。
やる気と根性があるなら、後は鍛えればなんとかなる。
午後は、主に根性の方を試すことになるだろう。




