辺境開拓地域割譲の準備、南部の要
俺は、バウエルン家の当主として南東辺境開拓地域と南部辺境開拓地域を領地とする貴族になった。
ただ、辺境開拓地域を領地とすること自体が文字通りの前代未聞で前例のないことであったから、具体的な話を詰めるのに時間がかかりそうだった。
例えば、領境をどこにするのか。
南東辺境開拓地域の後背の街として、100km離れている場所にサストガードがある。
辺境開拓地域とその後背の街は、南東に限らずどこでも王家直轄領になっていて、辺境開拓地域の開拓村が滅びたときには後背の街に兵力を集め、再度辺境開拓地域を確保するという仕組みを機能させていた。
南東辺境開拓地域の北東の端からサストガードまで100km。
そのどこでバウエルン領と王家直轄領を区切るのか。
同じような話が南部辺境開拓地域でもあるし、更に隣接する東部と南西の辺境開拓地域との領境の話もある。
俺なりの辺境開発の構想があるし、そのために確保していたい最低限の領域は決まっている。
政府の役人たちと何度も協議し、話を固めていくことになった。
結果的に、辺境開拓地域から後背の街までの6割の距離で領境が定められることになった。
南東辺境開拓地域からは北西に60km、北に300km。
南部辺境開拓地域からは北に48km、西に300km。
細長い領地だが、面積だけ見ると王国でも有数の広さの領地となった。
体制の変更に伴い、辺境開拓村から出ていく者もいる。
南部辺境開拓地域の管理者である騎士の役人もそうだろう。
移民の受け入れをどうしていくかの話もある。
特に南部は最大の移民受け入れ先だったから、今後も受け入れるのか、どのような基準で受け入れるのか等も詰めていく必要がある。
南部は新たに管理者を決める必要がある。
俺の中でほぼ決まってるんだけど、まだ本人に話していないんだよな・・・
南部も同時でもらえるとは考えていなかったから、何度も手柄を上げて加増してもらう時までに管理者をお願いするつもりでいた。
とりあえず話してみるかな。
「俺が村長!?」
話を切り出すと、思いきり驚かれた。
唐突すぎたかな。
「なぜ、彼なの?」
同席していた女性は直接自分に言われた訳ではないからか落ち着いた様子で、しかし自分にも関係してくるので慎重に尋ねてきた。
「単純な実力で考えたらキリル兄さんが南部の管理者、南部の開拓村の村長になってもらうのがいいかもしれないけど、辺境の最前線でエルン村長とキリル兄さんという強者2人がいる体制は崩せない。
そうなると、キリル兄さんに次ぐ実力者で、辺境に理解があり、統治もできる人間性・・・レフ兄さん以外に考えられないんだ」
レフ兄さんは「うーん」と唸っている。
「レフはそこまで強いの?
アルト隊のダミエン副長とかでもいいんじゃない?」
「ダミエンは、有望だけどまだまだ実力が足りない。
レフ兄さんは、今のアルト隊の俺以外が全員でかかっていっても勝てると思うよ」
「ええっ」
レフ兄さんはケイトさんにまで自分の強さを隠し通していたのか。
レフ兄さんが王都に行く時にエルン村長たちと相談して、そうするように決めたけど、本当に徹底していたんだなあ。
そうして、人脈作りに集中してくれていたのか。
レフ兄さんのしてくれた下準備のおかげで、これほど早くに目的が達成できたんだよな。
「事情は分かったし、それがいいのかもなとも思えてきた。
南部なら南西も近いからケイトも里帰りしやすいだろうしな」
レフ兄さんは「仕方がないな」という表情で納得した後、優しい目でケイトさんを見ていた。
「えっ・・・ありがとう」
ケイトさんは驚いて目を見開いた後、お礼を言った。
目の前で惚気られている気がするが、まあいいか。
「とにかく、俺が南東辺境開拓地域の領主になったことで、レフ兄さんを俺の意思で辺境に戻せるようになった。
ケイトさんもレフ兄さんと籍を入れてもらったら、一緒に連れていける。
結婚式はエルン村で盛大にやればいいしね」
「んっ、ああ、そうだな」
「・・・ええ、そうね」
2人とも付き合いが長いのに面と向かって言われるとまだ照れるようだ。
レフ兄さんに納得してもらえてよかった。
具体的にどういう体制にするかは現地を見てから考える必要があるけど、エルン村と南部辺境開拓村で何人か人を入れ替えて、南部でも魔術農業や大森林探索を進めていくつもりだ。
トップが生産系ギフト持ち夫婦でレフ兄さんが戦えるから、エルン村と同じように進められるし、エルン村でのノウハウも活きる。
他にもいろいろ着手したいことはあるけれど、基盤になる2つの辺境開拓村の運営は問題なく行えそうだ。
他の話も、しっかり詰めていかないとな。
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