大きく動く『時』① 宣告
謁見の間で、国王に戦争の結果が報告されていた。
報告者はクレマン・ラングマン。
軍事閥の貴族家の者で将軍としての才が際立つようなところはないが、軍政家として大局を見るバランス感覚があり、他者の意見を聞き入れる度量もあるため、戦果を挙げることができている。
国王への報告も客観的かつ整理されていてスムーズだ。
アルト隊が戦争に参加して突出した戦果を挙げることが当然のようになってきて、俺のこの国王への報告への参加も当然視されるようになってきた。
副官のダミエンも最初は相当に緊張していたが、もう慣れたものだ。
報告における俺の役割は、クレマン・ラングマンの報告に2点ほど補足するだけで終わった。
いつもなら、これで問題なく退出、といったところだ。
「クレマン・ラングマン。
今回も堅実な軍の運用による勝利、見事である。
そしてアルト・バウエルンよ。
お主の率いるアルト隊の働きにより、我が国の軍の損耗を減らし、勝利に導いたことに感謝する。
此度の勝利はこの2人の貢献が大きい。
若き俊英が活躍することは国軍全体の活力にも繋がろう。
まことに幸いなことである」
国王がいつもよりも長く、称賛の言葉を告げた。
クレマン・ラングマンと俺は姿勢を正してその言葉を受ける。
クレマン・ラングマンとは派閥の異なる軍事閥の貴族家は苦々しい顔をしている。
特にローゼルスタッド侯爵家の当主とその周りは顕著だな。
「さて。
この場で告げておくことがある」
国王が厳しい表情と口調で告げた。
ほとんどの参席者が国王の態度の急な変化に戸惑っているようだ。
俺の隣にいるクレマン・ラングマンも珍しく動揺が顔に出ている。
「王都の闇組織『暗闇の牙』に依頼し、王家の紋章を掲示した馬車を襲わせた者がいる。
その者は、王都の西の街道で活動していた盗賊とも取引していた。
これらの証拠の検証は、依頼者の署名の筆跡鑑定も含めて既に終えておる」
国王が告げると、貴族たちはざわざわと騒ぎ始めた。
騒ぎが大きくなる一方で、静かになった一画がある。
ローゼルスタッド侯爵家の当主とその取り巻きの貴族がいる一画だ。
状況をよく分かっていない貴族たちも徐々に騒いでいる者とそうでない者の違いに気づき、ローゼルスタッド侯爵家の近くにいた貴族はその場から離れ始めた。
国王は貴族たちの動きを見定め、やがて玉座から立ち上がった。
「ヴァンサン・ローゼルスタッド!
貴様のことだ!」
国王がその手に持つ王錫でローゼルスタッド侯爵家の当主、ヴァンサン・ローゼルスタッドを指しながら宣言した。
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