5人となったアルト隊① 新隊士3人のデビュー、国境沿いの事情、着陣
マルセル、ボリス、サブリナのギフト保有者養成学校卒業生3人組が隊士になってから、2千人規模の戦争に召集された。
トロイト王国側の占領地の拠点防衛で、基本的には拠点に詰めている兵だけで対応するところにアルト隊だけが助勢する形だ。
アルト隊は小規模で効果のある、いわゆるコスパ的に呼びやすいんだろうな。
なかなか便利使いされている。
敵軍が攻めてくることが判明してから実際に攻めてくるまでの間隔が短いので、他の部隊だと間に合わないということもあるだろうが。
まあ、新隊士3人のデビュー戦には手頃な規模か。
大森林、そしてアクチュア王国は四季がなく、一年を通して気候の変動がない。
アクチュア王国以外の国には季節があるそうだ。
アクチュア王国が大森林を切り拓いて建国されたことを考えると、大森林という魔境の特質かもしれない。
そして、アクチュア王国に近い国境沿いは、気候変動があるものの、その変化は緩やかなのだそうだ。
大森林とそれ以外で、急激に環境が変わるのではなく、緩やかに変わっていくのだろう。
アクチュア王国が開拓を止めて北へ侵攻を始めたのが100年ほど前。
それ以降、国境沿いは何度も戦渦に晒されることになった。
それが当たり前になるとそれに対応するもので、国境沿いの住民は、戦渦からいつでも逃れられるように半定住生活を送っているらしい。
基本として住む場所は決まっているが、有仁の世界のモンゴルのゲルのような移動可能な住居に住み、戦争の気配を感じると移動して逃れ、戦争が落ち着くとまた戻る。
遊牧民のように家畜と共に生活しているが、アクチュア王国ほどではないものの気候が年中落ち着いているため、3ヶ月程度で育てられる芋を育てる農業も行っている。
戦争の気配がすると農作物が育ちきっていなくても収穫して何も残さずに移動するようだ。
アクチュア王国は何度もポールラント平原に進出しているが、すぐに取り返されるため、この半定住の住民を明確な支配下におけた経験はほとんどないらしい。
俺が初めて参加した戦争によって要地の丘に拠点を構築し、現在に至るまで支配が継続しているから、珍しく1年を通しての支配をしていることになる。
ただ、戦争になるとその半定住の住民が逃げるのはアクチュア王国ではなくトロイト王国の領域だ。
そのため、半定住の住民の集落に兵や諜報員が潜んでいてもおかしくない。
アクチュア王国軍によって定期的に集落を確認されているようだが、隣国と平気で繋がる貴族家の士官も多い中で、どこまで徹底されているかは分からない。
トロイト王国軍の来襲が判明してから実行されるまでの期間が短かったのは、そんな半定住の集落の事情が関係していると考えられる。
いずれ、根本的な対処が必要になるだろうな。
俺たちが拠点のある丘の麓に到着した時、西側の目視できる位置にトロイト王国軍が迫っていた。
ジャストタイミングといったところか。
巧遅より拙速、人数を集めて整然と進軍する形よりすぐに集められる兵で速度を重視する形で攻めてきたのは、アルト隊または大力のアルトへの対策だったのかもしれない。
俺たちが参加する前に攻めることができれば、以前と同じ弱小のアクチュア王国軍を相手にできると考えたか。
仮にそうだとしたら、俺たちが前に出るだけでトロイト王国軍の士気を削ぐことができるかもしれないな。
マルセルたちのデビュー戦として、おあつらえ向きの舞台となりそうだ。
俺たちは拠点の兵が丘の麓で陣を構えている前に出た。
アクチュア王国軍の兵士たちが歓声を上げた。
深黄緑のアルト隊の制服はもう見慣れてすぐに俺たちだと分かるようになったかな。
俺は既に長さ10mの剣を生成して眼前に構えている。
俺を先頭として、20mほど距離を空けて、ボリス、マルセル、サブリナ、ダミエンが右側に斜陣の形で並んでいる。
並び順は武器のリーチと後方からフォローできることを考えて決めた。
体術ギフト持ちのボリスはそのままだとリーチが短すぎるので、手甲に50cmほどの組み立て式の爪を付けさせている。
訓練の時から付けさせ、身体術で爪を強化することもできているが、念のために予備の部品も備えている。
斧士ギフト持ちのマルセルはバルディッシュと呼ばれる長い柄に斧の刃を付けた物の、斧の刃を長大にしたものを持たせている。
柄の長さは2m20cmほど、刃の長さは1m、見た目のバランスは悪いが、アルト隊の戦術に合わせて使いこなせるように訓練させた。
剛力ギフト持ちのサブリナは長さ3mで先に行くほど太くなる金棒を持たせている。
技術ではなく力で振るうことを前提にした武器だ。
サブリナは身体術で武器を強化することが苦手だったが、徹底的に訓練してそれなりのレベルに引き上げた。
棍術ギフト持ちのダミエンはいつもの2mの棒を2本繋いだ4mの棒を構えている。
ダミエンには申し訳ないが、3人の討ち漏らしのフォローも含めて、最後方からの指示出しなど一番忙しい立ち位置になるだろう。
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