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大力(嘘)で身を立てる  作者: ろん
第三部 貴族立身

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オレグとイリナとの模擬戦② 対イリナ戦、妹

オレグと長めの模擬戦をやって、オレグにばかり構っていたからか、イリナが少し膨れっ面になっている。


「次はイリナとやろうか」


アルト隊の隊員に見せるだけならオレグとの模擬戦だけでよかったんだが、イリナともやらないとイリナが収まらなさそうだ。



イリナはにっこり笑い、そして真剣な顔をして俺の向かいに立った。



イリナは柄の長さが2m程で穂が30cmほどの槍を持っている。


俺はオレグの時と同じ刃渡り80cmの剣を持った。



イリナが空中や地面の60ヶ所以上に水を生み出し、そこから槍のように伸びる水やムチのように撓って打ちかかる水、俺を拘束しようとする水など、直線的な攻撃と曲線的な攻撃を織り交ぜてきた。



俺がこの場では魔力による阻害をしてこないと見て、防ぎにくい攻撃を意識したのか。


イリナもなかなかやるな。



水魔法が発現してからでは避け切れない攻撃もある。


俺が持つ剣の平で、身体術で剣の実体以上の広さに拡張した面で、避け切れない攻撃を打ち払うと、イリナが槍を突いてくる。


イリナの突いてきた槍を避けると水魔法の方が向きを変えて俺が避けた方に伸びてくる。



俺はイリナと離れる方向に飛び、進行方向にある水魔法を打ち払った。


俺の移動方向でも新たに水魔法が起動され、絶え間なく俺を攻撃してくる。



形を変えやすい水の性質を上手く活かしてくるな。


俺はイリナの方に移動し、俺に様々な方向から向かってくる水魔法を避け、打ち払いながらイリナの前に立つ。


イリナが槍を突き出してくるが、俺は避けて懐に入って柄を掴み、剣をイリナの首元に突き付けた。



「ここまでだな」


「・・・うん」


イリナは悔しそうな顔になっている。


戦い方の柔軟さ、戦いにくさでは水魔法を使うイリナの方がオレグよりも上かもしれないな。


そう告げながら頭を撫でるとイリナは嬉しそうににっこりと笑った。



アルト隊の隊員たちは、オレグとはまた異なるイリナの戦い方に慄いていた。


実際に戦うなら、オレグよりイリナの方が為すすべもなくやられてしまいそうだと共通の感想を思い浮かべたようだ。



「次は10mの剣でやろうか」


俺がイリナにそう告げると、アルト隊の隊員たちは「え?」と同じような声を上げた。


イリナが10mの剣を使いこなせるように見えないからだろう。



俺がイリナから離れて10mの剣を生成すると、イリナは土魔術で中が空洞の10mの剣を生成しながら水魔術でその空洞を埋めた。


イリナの生成した剣も、見た目はオレグが生成した剣と変わらない。


エルン村にいた時は外から水が見えていたが、そこは改善されているようだ。



イリナから俺にその剣で斬りつけてきた。


袈裟がけの鋭い一撃だ。


俺は剣の柄を持ち上げ、刃を下にしてその一撃を受ける。


重い。

しっかり振れているな。



イリナの剣を跳ね上げ、俺から水平に斬りつけた。


イリナは剣を振り下ろしてその一撃を止める。



何度かその場で打ち合い、距離を変え、移動しながら互いに打ち掛かったりしながらしばらくやり合う。


オレグと10m剣でやり合った倍ほどの時間を使って打ち合い、俺は剣を土に戻して、


「ここまでにしようか」


とイリナに声をかけた。



「うん」


イリナは答えて剣を土に戻す。


中に入っていた水は土に戻す前に消したようで、水が中に入っていたとは、俺やオレグ以外に気付かれることはないだろう。



「イリナも、エルン村にいた時とは見違えるように上達したな。


努力してきたことが分かるよ」


「うん!」


イリナは満面の笑顔になった。


思わずイリナの頭を撫でる。



また離れていたアルト隊の隊員と、オレグが戻ってきた。


アルト隊の隊員はみな、感情の置所がよくわからない、という表情をしているな。



「この2人も、今年中にはアルト隊に入隊してもらう予定だ。


お前たちも先輩として負けないようにがんばれよ!」


「無理だろ!」

「何言ってんだ!」


俺が隊員たちに声をかけると即答で文句が上がってきた。



「まあ、すぐにこいつらの領域に達しろというのは無茶な話かもしれない。


だが、魔法についてはともかく、身体術に関しては、お前たちでも到達できる領域だぞ」


隊員たちは副官のダミエンも含めて「半信半疑」という字が見えるような顔をしながら俺を見てくる。


「まあ、これからの研鑽次第、ということだ」


俺がそう言うと、隊員たちはみな納得しきれないなりに頷いた。



「ところで、そっちのイリナちゃんが隊長の妹だってのは本当ですか?」


傭兵出身3人組の1人、サリムが質問してくる。


「ああ」

「見えないよな」


と他の者も気になっていたのか口々にいろいろ言っている。


それを言われるとイリナの機嫌が悪くなるんだけどなあ。



「本当だ。


俺が父親似で、イリナが母親似だから、似てないように見えるんだろう。


俺たちの父親はエルン隊の怪力ギフト持ちのイゴール、母親は槍術ギフト持ちのエレナだったんだ」


俺が言うと、隊員たちは「あー」と納得していた。


イゴール父さんやエレナ母さんの容姿も、結構有名だからな。

「美女と野獣」的な夫婦としても。


貴族家が広めて元エルン隊の家族たちが信じた、2人の悪い噂をこいつらが信じていないので、それもよかったな。



その場でエルン村にいた時の話もした。


あまり辺境の話題をわざわざ出したりしないから、隊員の中には辺境のことをほとんど知らない者もいるんだよな。


エルン村長のことや、大森林の魔獣や瘴気獣の話をすると、伝聞や物語で聞いていたことは違った臨場感があるのか、興味津々で聞いている者も多かった。



程々で切り上げて、俺とオレグとイリナの3人は駐屯地を出た。


今日は下町の酒場で夜まで一緒に過ごす約束をしているからだ。


下町の賑やかな連中と、エルン村長の若い頃の話や、俺たちの両親の話なども聞きつつ、楽しい時間を過ごそう。


この作品を読んでいただきありがとうございます!


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