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大力(嘘)で身を立てる  作者: ろん
第一部 辺境開拓村

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20/42

農業の改革

農業や鍛冶などの生産分野について検討すること、エルン村が接する大森林の探索に参加すること、それぞれ何度も参加して、エルン村長たちと協議を重ね、実態の理解と改善、方向性の検討に着手することができた。




まず生産分野についてだけれど、その大前提として、足元のエルン村について、俺の理解が足りていなかったことが判明した。



以前、辺境開拓村の正式名称は「南東辺境開拓地域」で、辺境開拓村の通称がエルン村だと理解したつもりだった。


前者の「辺境開拓村=南東辺境開拓地域」は間違っていなかったんだけど、「辺境開拓村=エルン村」は間違っていたんだよな。


辺境開拓村の一部がエルン村と呼称されいて、エルン村の外にも辺境開拓村が広がっていたのだ。



地図を見ると、正方形に近い形のアクチュア王国はその東と南で大森林に接している。


偶然そのような形になっているのではなく、200年前ほど前に建国するまで、アクチュア王国のある場所は大森林の一部だったらしい。


大森林を切り開く形で土地を得て、アクチュア王国を建てたそうだ。


建国から100年くらいかけて現在の領土の広さになったらしい。


その開拓の最前線が辺境開拓地域で、国土を広げるたびに辺境開拓地域の位置も更新されている。


広がるだけでなく、維持ができずに辺境開拓地域が潰れて国境が後退することがあるものの、北東・東・南東・南・南西の国境沿い5ポイントに辺境開拓地域が置かれている。



5つの辺境開拓地域の中でも、アクチュア王国の角、それも大森林に東と南で接する最前線の角がエルン村のある南東辺境開拓地域だ。


そしてエルン村は、アクチュア王国によって設置された南東辺境開拓地域、辺境開拓村から更に南東に突出して切り開いて開拓した場所になっている。


・・・最初に話を聞いた時は、ただでさえリスクの高い南東辺境開拓地域で、さらにリスクを取るイカれた選択だと思った。



なぜエルン村長がそんなことをしたかと言うと、辺境開拓地域の立ち位置に問題があると考えたからだ。



辺境開拓地域は、アクチュア王国の王族や貴族が管理する都市でやっていけなかった人たち、食い詰めた人たちの行き先となっているそうだ。


都市のスラムを形成する前に国の端に追いやる、棄民対策・流民対策ってことだな。

それらの都市から流れてきた人たちは、魔素の濃い辺境で暮らす適性を持っていないことが多い。


大森林に近づくだけで体調を崩すこともあるようだ。


エルン隊からエルン村長についてきた人と、都市から流れてきた人では辺境への適性が違い過ぎた。


それでもアクチュア王国の定めた制度上、都市から流れてきた人も辺境開拓地域のエリア内に居住しないといけない。



そこで、大森林の魔素に適性のあるグループとないグループに分かれ、ないグループは南東辺境開拓地域として指定されたエリアの北西、大森林から最も離れた場所に村落を形成し、エルン村長たちは南東辺境開拓地域からさらに南東に切り開いて今のエルン村を形成し、今に至っているそうだ。


ちなみに、エルン村ではない方の村落は、北西村と通称されているそうだ。



エルン村長が治める辺境開拓村はエルン村と北西村の2つの村となる。


ただ、有仁と統合する前のアルトが北西村のことを知らなかったように、エルン村と北西村での交流は少なく、エルン村長夫婦とその他数名のごく限られた人が時々エルン村から北西村へ行き来するくらいらしい。




生産分野の話に戻ると、エルン村と北西村では住んでいる人の魔素への適性の違いから、エルン村で育てた魔素の濃い農作物は北西村の人には受け入れにくくなっている。


北西村も辺境開拓地域に所在しているので、それなりに農作物の魔素は濃くなっているが、エルン村の農作物と北西村の農作物の魔素の濃さの違いは大きいらしい。



それでも、農業ギフトを有するアデリナさんがいるエルン村と、ギフトも魔術も身体術もなく作業している北西村では農業の生産性が段違いで、エルン村から北西村に定期的に農作物を支給している。


北西村では家畜を使って作業しているかと思ったら、全て人力の作業のようだ。


大森林が近く魔素の濃い辺境だと、家畜が魔獣化してしまうらしい。


北西村も辺境開拓地域内にあるから家畜は使えないそうだ。



エルン村の農作物の魔素濃度に耐えられない人は北西村の農作物を消費しているらしいが、北西村の農作物にも耐えられない魔素への適性が著しく低い人向けに、辺境開拓地域に近い街から食料を仕入れていて、結構コストがかかっているそうだ。




魔素が濃い農作物と魔素が薄い農作物のそれぞれのメリット・デメリットを勘案して、

・魔素が濃い農作物のみ生産

・魔素が薄い農作物のみ生産

・両方を生産(必要に応じて比率を調整)

の選択肢があり、どれがいいかアデリナさんに相談すると、エルン村でも魔素は魔獣の肉から摂取するだけで十分なので、魔素が薄い農作物のみの生産が最も望ましいとのことだった。



それならば、農作物自体の魔素を消費する、俺が開発した生命魔術を積極的に採用する方向だな。


俺はその方向で農業の生産性を上げる仕組みを考えた。




農作物を生命魔術で一気に育てるには、農作物の魔素の濃度が濃い状態にあることが必要になる。


種または苗を育てる序盤では魔素が濃くなるように育て、ある程度生長したら生命魔術で農作物の魔素を消費し尽くして一気に収穫直前にまで生長させる。



農作物の生産に必要な要素を、水・土・光に分けると、魔素に影響するのは水と土だ。



土については、最初の農地を作る段階で魔素を多く含むように改良した魔術を開発した。



水については、魔素を多く含んだ水を出す魔術も開発したが、かなり効率が悪く、俺はともかくアデリナさんでも大量に水を出すのは大変そうだった。



既にある水を使う方向で検討することにして、どの水がいいかを調べることにした。


それまでは井戸水を使っていたが、井戸水よりも川の水の方がかなり魔素が多かったので、川の水を効率的に運んで利用する魔術を開発した。



川の水を確保して空中に保持する魔術だ。


用途と、使う人の熟練度を考えて、1辺が1m、2m、3m,4m、5mの立方体のサイズ別に行使できるようにした。

それぞれ1㎥、8㎥、27㎥、64㎥、125㎥で、最初は1㎥しか使えなくても熟練すればより大きなサイズの魔術も使えるようになるだろう。



また、その立方体の下に穴を開け、2種類のフタをするようにした。


穴だらけのフタと穴のないフタの2種類で、両方セットしている状態をクローズ、穴のないフタを外した状態をシャワー、両方外した状態をホースとして、水をまいたり移動したりできるようにした。


農作業だけでなく、水を貯めたり水を浴びたりする局面でも使える、我ながら用途の広い傑作魔術だと思っている。




水の供給、魔素の供給、農作物の生長促進と農作物内の魔素消費、そしてこれらによる農作物の収穫サイクルの大幅短期化。


これで食料の確保という面では相当に安定するだろう。


後は、このサイクルの担い手、魔術の使い手を安定的に確保できる仕組みがあれば、サステナブル、長期的に持続可能性のある仕組みになるな。


この作品を読んでいただきありがとうございます!


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