たった2人のアルト隊③ 北ルート侵攻阻止、挟撃
ストング王国軍の侵攻の目的は、アクチュア王国に奪われた領地の奪還だ。
そして、アクチュア王国軍の占領地を治めるための要が、新たに建設された拠点になる。
北のストング王国軍はアクチュア王国軍の陣を抜いて、拠点に向かうだろう。
俺は長さ10mの剣を掲げて、「通るぞ!」と声をかけてアクチュア王国の兵にスペースを作らせ、アクチュア王国の陣を拠点側に抜ける。
ダミエンも問題なくついてきているな。
俺たちがアクチュア王国の陣を通り抜け終えると、北からアクチュア王国の陣を抜いたストング王国軍が進んでいるところが見えた。
拠点側のアクチュア王国軍の兵は、500人程度か。
ストング王国軍によってもうこの世から去っているだろう、あの愚か者寄りの指揮官は、ほぼ全軍を表に出していたんだな。
「拠点に向かっているストング王国軍を追いかけろ!
俺たちが正面から奴らを食い止める。
挟んで討ち取れば、手柄が狙えるぞ!」
アクチュア王国軍全体に風魔術で声を届ける。
これで大部分が北から侵攻してきたストング王国軍を追うだろう。
東と北東のストング王国軍は既に瓦解している。
今拠点に迫っているストング王国軍の足を止めるだけで、人数差と陣形の優位で押し潰せるだろう。
これがこの戦場での最後の仕事になりそうだな。
「なるほど。
こうして前の戦争でも軍を動かしたのか」
ダミエンが納得顔で頷いている。
「俺が指揮権を持っているわけじゃないからな。
その場の雰囲気と、目先の利益で動かすのさ」
俺は答えながら、走るスピードを上げる。
拠点の前面で構えている500人のアクチュア王国軍の陣と、侵攻するストング王国軍のちょうど真ん中に、俺とダミエンが到着した。
「東と北東からきたストング王国軍は、大力のアルト率いるアルト隊の手によって壊滅したぞ!」
風魔術で迫るストング王国軍と、背後の拠点前のアクチュア王国軍に声を届ける。
そして俺は長さ10mの剣を何度か素振りして見せる。
ダミエンも繋いで4mになった棒を大きく振り回して見せていた。
たった2人だが、1人が10mの剣を振っていて、同じ深黄緑の制服を着ているので、2人が同じ部隊だということは分かるだろう。
ストング王国軍の先頭の兵の足が分かりやすいほどに鈍った。
トロイト王国軍と違って隊列を崩さずに移動しているわけでもないから、ストング王国軍の兵と兵の隙間は広めだ。
その隙間が前の兵の足が鈍ることで埋まっていく様子が見えた。
俺はたまに剣を左右に振りながら、歩いてストング王国軍に近づいていった。
ダミエンは頭の上で棒を回転させながら歩いている。
全体の足止めのためにしていることだが、俺が指示せずともダミエンはそれを理解して動いてくれるな。
ストング王国軍の前線の動きが更に鈍り、より前後が詰まっているのが見える。
そして、ストング王国軍の後ろからアクチュア王国軍の騎馬の兵が迫っているのも感じ取れた。
足の早い騎馬兵だけで先に追いかけてきたようだ。
なかなか目端の利く者がアクチュア王国軍にもいたようだな。
ストング王国軍の兵士たちの動揺が伝わってくる。
俺はストング王国軍との距離を詰め、前線の兵を20人ほど薙ぎ払った。
1度剣を振ったところで俺は足を止めた。
ダミエンは俺の右後方に距離を置いて控えている。
ストング王国軍が拠点方向に進まなくなった。
騎馬兵のみで来たアクチュア王国軍はストング王国軍に突入せずに近づいて威圧するだけに留めているようだ。
アクチュア王国の歩兵もかなり近い距離まで来ている。
あの騎兵たちは、うまい位置取りだな。
俺は一度薙ぎ払った場所に立ってストング王国軍の兵士たちを睨んでいるだけだが、俺を攻撃してくる者は1人もおらず、数人ずつ左右に兵士が何度も逃げていた。
手を出せば殺される。
そのイメージを十分すぎるほどにこの場で植え付けることができていたようだ。
ストング王国軍の後背にアクチュア王国軍の歩兵の前線が接触したようだ。
大きく声が上がりだした。
そのタイミングで、俺は前線を中央から右側に、ストング王国軍から見ると中央から左翼側に、前線を削ぐようにして剣を振るいながら走った。
ダミエンは右後方で走ってついてきて、俺が剣を振るうより先の、拠点側にこぼれたストング王国兵を残さず処理している。
俺たちが離れたことで、ストング王国軍の右翼が前に出だした。
俺たちはストング王国の左翼の端で折り返して、右翼側が張り出している形の前線に沿って、左翼から右翼へと前線を削ぎながら進んだ。
ダミエンは左後方に配置を変えて、こぼれた敵兵を処理している。
ダミエンの攻撃範囲からも漏れて更に前に出ているストング王国兵は、拠点に向けて移動を始めたが、その人数は少なく、勢いもない。
それくらいは拠点側のアクチュア王国軍に任せて大丈夫だろう。
左翼から右翼へ、右翼から左翼へ、そしてまた左翼から右翼へ。
有仁の世界の自動車のワイパーのように前線を削ぎ続けていると、新たに前線になったストング王国兵の士気も落ちて、逃げる者が増えてきた。
後背から攻めるアクチュア王国兵は、もう既にここにいるストング王国兵の倍以上になっているようだ。
もう大勢は決したかな。
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