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大力(嘘)で身を立てる  作者: ろん
第三部 貴族立身

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最低基準の次の訓練① マルセルとの模擬戦

俺が1人でアルト隊として戦争に参戦して帰還し、駐屯地に戻ると、斧士ギフト持ちのマルセルが最低基準のテストに合格したと聞いた。


ダミエンが100m10秒のペースで4時間走り続け、マルセルはそれに最後までついていくことができたらしい。


ボリスとサブリナも一緒にテストを受けたが、残り1時間でついていくことができなくなったようだ。


マルセル以外の2人もそれほど期間をかけずに合格できそうだな。




マクシ・ケニー・リビオの元混成部隊リーダー格の3人は、俺がいない間は自力で体内の魔素を動かす訓練に取り組んでいて、身体術の端緒にたどり着けたらしい。


体の一部を強化することはできるようになっていた。


全身を強化すること、筋力だけでなく強度や靭性もバランスよく強化すること、行使する時間を伸ばすこと、これらをそれなりのレベルで達成できるようになれば、あとは加減を覚えることで最低基準を突破できるようになるだろう。




他の5人、サリム・ガッド・トメルの傭兵3人組と貴族コンビもマクシたちと同様に体内の魔素を動かすことに取り組み、子爵家次男のガエル・ヘンリオンがマクシたちと同じレベルで身体術の端緒にたどり着いていた。


ガエル・ヘンリオン以外の4人も魔素を動かすこと自体は僅かながらできていたから、身体術の端緒にも大分近づいている。



サリムたちと男爵家四男のロッド・ダルモンは術士として伸ばしていこうと考えている。


発火の魔術を先に教えて使えるようにしてやったほうが、魔素の使い方もモチベーションも向上するだろうか。




「さあ、俺を殺す気でかかってこい。


そして自分が生き延びることにも留意しろ。

死んでさえいなければ、無理やりにでも治してやるからな」



運動場の真ん中で、俺は斧を持ったマルセルと向き合っている。


俺は1m弱の棒だが、マルセルは自前の刃引きされていない武器だ。


マルセルが最低基準を突破したので、本格的な訓練に移行する。



マルセルが斧を振るってきた。


身体術を使い、武器も強化しているが、どこか躊躇のある一撃だ。



俺は避けずにそのまま受ける。


マルセルの振るった斧は、俺の肩口に当たって跳ね返った。


マルセルは俺が避けもしなかったことに驚いている。



「殺す気でかかってこい、そう言ったのが聞こえなかったのか?」


睨みつけながらもう一度告げると、マルセルが身体術を全力に近いレベルまで行使して俺にもう一度斧を振るってきた。


俺は避けずにそのまま受ける。


マルセルの振るった斧は、俺の頭に当たって跳ね返った。


マルセルが全力に近い力で振るった一撃が、直撃しても全く通用しないことに驚いている。



俺は構えた棒を下げた。


「その程度か?」


マルセルに告げると、何度も斧を振るってきた。


全て体と服で跳ね返る。



俺が無造作に右手に持った棒を水平に振るう。


マルセルの左腕の二の腕が粉砕され、肋骨も折れて、マルセル自身も水平に吹き飛んだ。


「自分が生き延びることにも留意しろ、とも言っただろう?」


吹き飛んだマルセルに近づく。



マルセルは意識は失っていないが戦意を失って、左腕で右手を掴んで耐えている。


俺は棒を振ってマルセルの左太腿を叩き折った。


「自分が生き延びることにも留意しろ、聞こえていないのか?」


動かないマルセルの右太腿も叩き折った。



さっきから身体術の修練をしながらこちらを見学している隊員から驚きの声や悲鳴のような声が上がっている。


ここまでかな。



「これからお前の体を通して身体術を行使し、お前の体を治す。

魔素の流れを把握して、自分でできるようになれよ。


・・・折った時の数倍は痛いから、しっかりと歯を食いしばれよ」


マルセルの右肩を掴んで、マルセルの体を通して身体術で一気に治す。


ちゃんと歯を食いしばれていなかったのか、


「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ」


とマルセルが悲鳴を上げる。



全て治した時にはマルセルは気絶していた。


痛みで舌を噛んでいると面倒だったが、それは大丈夫だったようだ。



マルセルを叩き起こした。


気絶から覚めたマルセルは首を振って自分の体を見回し、全て治っていることに驚いている。



「自分が生き延びることにも留意しろ。

死んでさえいなければ、無理やりにでも治してやるからな。


そう言っただろう?」


俺が言うと、マルセルは引きつった顔をして返答しない。



「かなり加減して打っているんだ。

身体術であれくらいは耐えられるようになれ。


骨が折れたなら、自分で治せるようになれ。

その場でできないなら折れていない部位で何とかしてみせろ。


最初の一撃だと足は無事だっただろうが。

足で攻撃するなり、逃げるなりして生き延びる確率を少しでも上げろ」



「分かった」


マルセルは立ち上がって頷いた。



「じゃあ、続けるぞ。

武器を拾って構えろ」


俺が言うとまた引きつった顔をして、武器を拾いにいった。




マルセルは、ギフト保有者養成学校での温い訓練と、ここの訓練が同じようなものだと思っていたんだろうか。


国際行商の商隊に一度参加したことがあるし、国軍で訓練もしていたはずだが、厳しい訓練は一度も経験がなかったのかもしれないな。



戦場に出ても死なない程度には鍛えてやる。


訓練で何度も死ぬような思いをするかもしれないがな。


強くなりたいという意志があるなら、乗り越えてみせろ。



その後10回ほど骨を折って治療して、その日のマルセルとの模擬戦は終了とした。


最低基準を満たしただけでは全く足りていないことが自覚できただろう。


今後の訓練でその足りないものを身に付けてもらおうか。


何としてでも生き延びる意志、これも身に付けてもらうために、定期的に模擬戦の相手はしてやらないとな。



マルセルにそういった趣旨の内容を告げると、マルセルも、マルセル以外の訓練中の隊員も、より真剣に訓練に取り組むようになったようだ。


この作品を読んでいただきありがとうございます!


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