たった1人のアルト隊③ 開戦、情報拡散の効果、探り
さて、俺もそろそろ動くとするか。
俺はアクチュア王国軍の最前列より前に出て、長さ10mの剣を土魔術で生成した。
前の戦争で生成したものより、薄く、幅は広く作った。
それを正面に刃を向けながら持ち上げた。
背後のアクチュア王国軍から歓声が上がる。
あまり意図していなかったが、戦場で何度も戦果を挙げてきた者が先頭で巨大な剣を掲げたら、士気が上がるものかもしれないな。
俺は敵軍に向かって真っ直ぐ歩いていった。
剣は変わらずに正面で掲げ、刃も正面に向けている。
真正面にいる敵から見ると俺の持つ剣はかなり薄く見えるだろう。
俺はそのまま歩き続けた。
トロイト王国軍もこちらに向かって行進を続け、アクチュア王国軍の最前列とトロイト王国軍の最前列のちょうど真ん中当たりに俺が位置した時、トロイト王国軍の俺の真正面に位置する敵兵が動揺していることを察することができた。
俺は左に進行方向を変えた。
俺の持っている剣は真正面から見たら幅広く見えるだろう。
先ほど動揺していた敵兵が落ち着いたことを察することができた。
国際行商で諜報ギフト持ちのリュクに吟遊詩人としてエルン隊、エルン村、大力のアルト、の三部作の歌を広めてもらっている。
その歌の中で、
・大力のアルトが巨大な剣を持つこと
・大力のアルトの進行方向にいる者には大力のアルトの持つ剣が薄く見えること
・大力のアルトの持つ剣が厚く見えれば自分たちの方にこないこと
・大力のアルトが敵になっても剣が厚く見えている内は大丈夫、剣が薄く見えたらこちらに向かっている、正面に立たないようにとっとと逃げろ
という内容を盛り込んでもらっている。
有仁が昔見た鮫の映画で、襲われる者から見ると鮫の背びれが薄く見えていた。
襲われたら必ず死ぬ相手が、近づいてくるかどうかを、背びれが薄く見えるか厚く見えるかで遠くからでも判別できる。
剣が向く方向でそれを再現しようと考えていたんだが、それなりに大力のアルトの歌がトロイト王国軍の兵士に周知されていることが検証できたな。
俺はそのまま左方向に歩き続ける。
巨大な剣を持つ男が、敵軍から見ると右翼方向に移動していることが、よくわかるだろう。
正面を向くとトロイト王国軍の前線の右端が正面になるところまで歩いて、俺はトロイト王国軍の方へ向きを変えた。
トロイト王国軍の整然とした動きとは別に、少数の人間が右翼に向けて移動していることは分かっていた。
俺を狙っている、ギフト持ちとその仲間というところかな。
複数人のギフト持ちで俺を襲う計画なら、キャンセルのギフト持ちが混じっていることはまずないだろうな。
味方のギフト持ちのメリットを消してまで、俺のギフトを使えなくさせるような思い切った作戦を使ってくる可能性はゼロではないが、集めた情報からその可能性は極小だと判断している。
いたらいたで、何とか対応してみせるけどな。
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