命名、『アルト隊』
俺はいつもの隠れ家的店の個室で、ダミエン・ブライム・リュクの民間にいた軍事系ギフト保有者の3人と飲みながら話していた。
個別に話すことが多くて、この4人で集まって飲むというのは今まであまりなかったかもしれないな。
3人とも独立戦闘部隊に参加してもらうから、国軍を辞めた3人がまた出戻ることになる。
まあ形式上の話で、ダミエンは独立戦闘部隊の副官としてだが、ブライムとリュクは当分は訓練生扱いで所属して今まで通り国際行商の業務がメインになる。
この3人は俺よりもかなり歳上だし、国際行商に最初から絡んでもらっているし、それなりに信頼関係ができていると思う。
外に出すとまずい話をうっかり他言するようなこともないだろうから、独立戦闘部隊や国際行商の展望などもいろいろ共有してきた。
俺が貴族になって独立戦闘部隊を創立することになり、間違いなく前に進んでいることを実感できるようで、3人とも今が楽しいようだ。
国際行商の、そして最近では国内物流でも情報が積み上がっている、ガエル・ヘンリオン主催の娼婦ランキングの話などで4人でゲラゲラと笑っていた時、ふとリュクが俺に言ってきた。
「そういやアルトよー。
お前の創る独立戦闘部隊の通称はまだ決まってないのかー?」
「ん?ああ、まだだな」
「お前の独立戦闘部隊の事も歌にして広めていくんだろー?
これっていう名前がないと歌いづらいじゃねーか」
「「「ああー」」」
俺だけじゃなく、ダミエンやブライムも納得して声を上げた。
「そうだな・・・エルン村長のエルン隊の流れで、『第二エルン隊』とかで考えていたんだが、エルン村長にそれだけはダメだと念押しされているからなー」
「辺境にいたときから考えていて、そんでもってダメ出しされてたのかよ!」
俺が発言すると、ブライムが笑う。
「『大力隊』とかでもいいんじゃないか?
『大力』はアルトしか覚醒していないユニークギフトなんだしな」
「『夜も大力隊』の方がインパクトあるんじゃねーか?ギャハハハ!」
ダミエンが意見を出すと、ブライムがふざけた意見を出して自分で笑いが止まらなくなっている。
「まあ、エルン村長がエルン隊なんだから、俺の隊は『アルト隊』が無難かねえ。
自分の名前のついた隊の名前を自分で呼ぶのがちょっと恥ずかしいんだが」
「そんな理由かよ!」
「それが嫌ならやっぱ『夜も大力隊』だな!アハハハ」
「まあ、真面目な話、アルト隊が歌としても分かりやすいかなー。
エルン・ソーディスのエルン隊、アルト・バウエルンのアルト隊ってね」
ダミエンが理由につっこみ、ブライムが再度ふざけて、リュクが真面目に話をまとめる。
「そういやバウエルンって家名になったんだったな。
エルン・ソーディスを尊敬しているアルトらしいが」
「ああ、家名にまでするなんて、ちょっと重い気もするがな」
ダミエンが俺の家名に感慨を覚え、ブライムは皮肉ってきた。
「まあ、ある意味仕方がなかったんだ。
危うく俺の家名がビックパワーになるところでな」
「何だそりゃ?」
謁見の間のやり取りを真似して伝えると、3人とも爆笑して目から涙まで出ていた。
ネタの威力としては十分だが、あれほどの危機感は戦場でもなかなかなかったんだぞ。
そのことを伝えると、更にツボに入ったのか、3人の笑いが止まらず、ブライムは椅子から転げ落ちた。
風魔術で部屋から声が漏れないように音を遮断していたんだが、騒ぎ過ぎで振動が伝わったのか、店主が顔を出してきた。
笑いが止まらずのたうち回っている3人を尻目に、俺は店主に深く謝罪した。
とりあえず、こんな経緯で、俺が創立する独立戦闘部隊は『アルト隊』と呼称するようになった。
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