国王への報告④ 独立戦闘部隊創立、男爵位叙爵
今回の戦争でも謁見の間に呼ばれることになった。
何だか、少し慣れてきたな。
しかし、今回は俺以外からまともな報告がされることになりそうだ。
これは初めてだな。
報告の前に、バーレイ将軍が国王と親しげに言葉を交わしている。
まあ、バーレイ将軍は大貴族たちに阿ったりはしないだろうし、国軍の名目上のトップに敬意を払うだろう。
普通にしているだけで、国王からは好感を持たれそうだな。
バーレイ将軍なら、学校の図書室に置かれていたような戦争の報告書も謁見前に提出していそうだ。
口頭でも説明し、その説明に対しても報告書に対しても質問に答えるということだろう。
バーレイ将軍の戦争の経過説明が終わった。
さすが、簡にして要を得る、虚飾のない見事な報告だった。
心の中で頷いていると、国王が考え込み出した。
「戦場全体を見据えた素晴らしい作戦と、素晴らしい戦果であった。
・・・ただ、一つ分からぬ点があった。
北東ルート、北北東ルート、そして東ルートへと転戦した、アルトとアルトが率いた混成部隊の動きだ。
この距離を、戦いながらこの時間で移動したというのは信じがたいな。
アルトだけなら身体術で可能だったと理解できる。
だが、混成部隊の全員がこの移動についてこれたというのは、一体どういう仕掛けがあったのだ?」
「はい。儂もそこが気になっておったのですよ。
アルトからも報告を受けていなかったもので」
バーレイ将軍が白々しい顔をしながら、口の端が上がっている。
この爺さん、俺に聞いてこなかったのはワザとだな。
「アルトよ。
どういうことか教えてくれぬか?」
「はっ。申し訳ございません。
結果こそが重要と思い、過程の詳細については特に報告しておりませんでした」
国王の問いに、とりあえず釈明する。
「混成部隊には、疲労を回復する生命魔術を行使することで、行軍速度を落とさず、転戦させていました」
「何と!
そなたは、そのようなことまでできるのか?」
国王は驚いているし、バーレイ将軍も声には出さないが驚いていた。
「はい。エルン・ソーディスの妻、アデリナ・ソーディスに学びました。
アデリナ・ソーディスは王都においては魔術を研究する部署に勤め、エルン・ソーディス率いる独立戦闘部隊のための魔術を開発していたと聞き及んでおります。
南東辺境開拓地域においても、大森林で戦う者のため、魔術の開発を続け、この生命魔術を開発したそうです」
・・・ということにしておく。
実際は、『御前武試』の準決勝で当たった生命魔法ギフトと槍士ギフトを併せ持つソフィアが使っていた魔法を見て魔術の術式に落とし込んだんだけどな。
エルン村で大森林探索を行う者は、身体術を使えることが必須になっているので、今更疲労回復の魔術なんて必要とされないんだよな。
「そうか。エルン・ソーディスだけでなく、その妻も傑物であったか。
その2人の技術や成果を、そなたが引き継いでいるのだな」
国王は感慨深げに話している。
バーレイ将軍も感心しているようだ。
嘘で誤魔化した罪悪感がちょっとあるが、キレイな話になったので、ヨシとしよう。
国王が改まって、俺に向き合った。
「アルトよ。
そなたを、戦場において国軍の指揮命令系統から独立した単独での独立遊軍として認めてから、先の戦争では軍の先頭に立ち、軍を先導して成果を出した。
そしてこの度の戦争では、混成部隊を率いて、3つの戦場を転戦し、その全てで格別の戦果を上げた。
そなたは、独立戦闘部隊を率いる資質が十分にあると、戦場において示したと言える。
ここにいるモルガン・バーレイも、この度の戦争でアルトの部隊を率いる才を認めたと報告があった。
よって、独立遊軍として認めた時に述べた通り、そなたの活躍をもって独立戦闘部隊の創立をここに認めよう」
謁見の間が静かになった。
軍事閥の貴族家が批判の声を上げそうなものだが、バーレイ将軍がいるからか、国王が以前の宣言の履行の形で述べたからか、特に声は上がらなかった。
表情が認めてない貴族はそこら中にいたが。
「そして、アルトの成し遂げた功績に対し、独立戦闘部隊の創立だけでは足りぬ。
アルトよ。
アクチュア王国国王、アレクサンドル・アクチュアの名において、そなたの功績を讃え、そなたを男爵位に叙爵することを、ここに宣言する」
国王が宣言すると、今度は立ち並ぶ貴族家の者たちがざわめき始めた。
特に大貴族家の者は、批判的な声を上げている。
国王は周りの声に関わらず続ける。
「アルトよ。そなたを男爵とするにあたり、家名が必要となる。希望する家名はあるか」
「いえ・・・」
「ふむ。『大力』のギフトにより功績を立てたアルトにふさわしい家名か。
大きな力、ビッグパワー・・・」
「恐れながら!」
俺が声をかけ、国王のつぶやきが止まる。
「私の育ての親でもあり、数え切れない恩を受けた、エルン・ソーディスの名にちなんだ家名を、授けていただけますでしょうか」
「ふむ。そうか。
受けた恩を重んじ、家名にも刻みたいというそなたの心がけは殊勝であるな。
・・・アルトよ。
そなたはこれより、アルト・バウエルンを名乗るがよい」
「はっ。これより私は、アルト・バウエルンを名乗ります」
・・・危ないところだった。
一生アルト・ビッグパワーと名乗ることになるところだったぜ・・・
エルン村長から自分の時も直球の家名をつけられたと聞いていたから、とっさに割り込むことができた。
まあ、エルン村長の名にちなんだ家名というのは悪くないな。
こうして俺は、ついに独立戦闘部隊を率いることができるようになった。
そして貴族の仲間入りも果たした。
俺はまた、新たなステージに上がることになった。
第二部はここまでとなります。
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