3度目の戦争④ 北北東ルートの戦闘
「次は北北東ルートに向かうぞ」
俺が声をかけると、混成部隊の連中は威勢よく声を上げて答えた。
士気はとても高い。
混成部隊では4人が脱落、戦死したようだ。
今は振り返らずに進む。
北の方向、北北東ルートを行くストング王国兵と合流する方向に逃亡する兵を、追われていると感じる程度には距離を詰めて進む。
逃亡兵が北北東ルートの兵と合流した時点で、北北東ルートで既にアクチュア王国軍1万とストング王国軍1万が会敵しているか、まだしていないかで、若干対応が変わってくる。
まだしていない方が俺としては楽なので、しっかりと逃亡兵を追い立てて急がせよう。
北北東ルートの兵が俺の視界に入った時、アクチュア王国兵も遠くに見えた。
互いに認識して戦闘に入る前の段階だったようだ。
そこへ北東ルートからの逃亡兵がなだれ込む。
混乱して何を言っているのか分からない者もいるが、「俺たちの軍があっという間に蹴散らされた」「皆殺しにされそうなところを逃げてきた」「化け物がいる」「追われている」などの情報を口々に北北東ルートの兵に伝えているようだ。
混乱が伝染しそうな所で、俺たちが姿を現す。
北北東ルートの兵士たちは200名程度の兵しかいないことに拍子抜けするが、北東ルートの逃亡兵は恐慌に陥る。
まだ精神魔術をかけていないが、十分に心理的に追い詰めることができているようだ。
絶望の表情を浮かべて絶叫する兵士が多数いて、北北東ルートの兵士たちは理由がわからず、混乱が広がっていく。
1万人に混乱・恐慌した3千人を混ぜると、こうなっていくんだな。
狙ってやったことだが、想定以上に効果があったようだ。
混成部隊の兵士は、北東ルートの逃亡兵に追いつかないペースに抑えての移動だったので、まだそこまで疲労していない。
追いかけた兵士が混乱しているのを見て、面白がっている者も多い。
俺が片手を上げて、合図してから混成部隊から前に出る。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
声帯と肺を強化して蛮声を上げ、精神魔術と生命魔術をストング王国兵全体にかける。
そして、敵軍に向かって走り出す。
1万のアクチュア王国軍はまだ接敵する距離までは来ていないことを確認する。
北東ルートの兵を蹴散らす時に使ったものと同じサイズの、10mの剣を作り出し、右腕で上に掲げる。
「大力のアルトがまた来たぞ! 俺の前に立つ敵はすべて殺す!」
そう声をかけると、北東ルートから逃亡した兵が悲鳴を上げながら逃げ惑う。
北北東ルートの兵もそれに巻き込まれ、混乱が伝染しているようだ。
縦に伸びている北北東ルートの軍のちょうど真ん中あたりを側面から突っ込み、剣を振るった。
血肉が上空に飛ぶように少し調整して振るったので、離れた場所からでもよく見えただろう。
続けて何度も剣を振るい、ストング王国軍を前後に分断していった。
俺に続く混成部隊がその分断を拡げていく。
俺がストング王国軍を横断したあたりで、アクチュア王国軍も会敵したようだ。
混乱している所におれがデバフもかけ、前後に分断して更に混乱させたストング王国軍はまともに戦えず、アクチュア王国軍が圧倒的に優勢のようだ。
アクチュア王国軍と会敵している前に分かれたストング王国軍に、後ろから圧力をかけすぎると死兵になりそうなので、俺は後ろに分かれたストング王国軍の方へ再度突撃をかける。
後ろに固まっていたストング王国軍を、ストング王国軍の進行方向から見て右前から左後ろに斜めに切り裂いて、再度軍を突き抜ける。
後ろに分断されたストング王国軍の背後を左から右に悠々と移動してみせた後、右後ろから突入して左前に斜めに切り裂いて、軍を突き抜ける。
後ろに分断したストング王国軍は、もう軍隊としての形を保てていない。
・・・頃合いだな。
前に分断したストング王国軍、アクチュア王国軍と会敵している方の、左側を、後ろから前に、悠々と移動して見せ、分断した軍の真ん中あたりで止まる。
「後ろに分かれた軍は壊滅したぞ!今度はこちらの番だな!」
前方ではアクチュア王国軍と入り乱れているが、何とか区別してストング王国軍の兵に精神魔術をかけ、追加で恐怖を煽った。
北東ルートから合流した兵には泣き出してフラフラになりながら逃げる者もいて、北北東ルートの兵たちにも逃亡する者が出始めている。
アクチュア王国軍が浸透していないところを狙って剣をふるい、また上空に血肉が飛び散るように調整した。
「この場に残った敵は、皆殺しだああああああああああああああああああ!」
再度蛮声を上げる。
ほとんど全てのストング王国兵が逃げ出し始めた。
後ろに分断したストング王国軍の兵は既にほとんどが逃げ散っている。
その場に踏みとどまった兵もいたが、逃亡するストング王国兵に「邪魔だ!」と斬りかかられていた。
生きてこの場に残ったストング王国兵がほとんどいなくなった。
僅かに残ったストング王国兵を混成部隊の者と協力して虱潰しに殺していった。
捕虜は取らない。
俺の宣言が嘘になってしまうからな。
この場に残ったのは、アクチュア王国軍に属する者だけになった。
バーレイ将軍の天幕で会った、北北東ルートに当たる軍の指揮官を担っていた副将が俺の所にやってきた。
「アルト、お前の力はバーレイ将軍に聞いていた以上だった。
お陰で我が軍の損耗も少なく、早期に北北東ルートでも決着を着けることができた。
礼を言う」
貴族出身の士官が俺に頭を下げた。
バーレイ将軍が信頼してこちらの軍を任せるだけあって、この副将もなかなかの人物だな。
「いえ、役目を果たしただけです。
これより混成部隊と東ルートに先行します」
副将が驚いた顔をして、すぐに真顔に戻った。
混成部隊の連中は文句を言いそうな顔をしていたけどな。
「バーレイ将軍を頼む。
我々も行軍可能になるまでの休息後、すぐに向かう」
また頭を下げてくる副将に「承知しました」と答え、混成部隊に発破をかけて移動を始める。
少し進んだらまた生命魔術で疲労を回復してやるから、あと一戦、がんばってもらうぞ。
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