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大力(嘘)で身を立てる  作者: ろん
第一部 辺境開拓村

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生産系ギフトによる魔術②

水を生成する魔術と、水を集めて動かす魔術も見せてもらった。


生成するより元からあるものを動かすほうが効率的で省力化できるのだけれど、井戸から水を集め、容器に移す魔術と、容器に入っている水を放水する魔術はポンプとホースくらいの役割しか果たしていなくて人力でやれることの延長くらいしかできていなかった。


簡易で効率的な水を扱う魔術の必要性は高そうだ。




作物がある程度育った畑の前に移動し、生命魔術による作物の生長促進を見せてもらうことになった。


これは有仁の世界には代替できる技術がない、こちらの世界独特の技術だな。



アデリナさんが作物の前で手をかざし、魔術を発動する。


見てわかるくらいのスピードで、少しずつ作物が大きくなっていく。



これはすごいな!

・・・すごいけれど、気になるところもあった。



ある程度作物が大きくなったところでアデリナさんは魔術を止めた。

ちょっと質問させてもらおう。


「魔素の動きを見ていたら、アデリナさんが魔術で魔素を作物に送っていると同時に、この作物が魔素を動かして抵抗しているように見えました。これはどの作物でも同じなんでしょうか?」


「そうね。この辺境は大森林に接していることもあって、魔素が豊富だからか、植えた作物もすぐに魔素を取り込んで魔物化が進むのよ。そうした作物は外部から送られる魔素には抵抗するから、その抵抗を押し切って魔術の効果を実現することになるわ」


なるほど。

いつも食べさせてもらっている料理も、かなり魔素を含んだ素材で作られていたし、それも辺境特有のことなのか。


「作物に魔素が含まれていないとデメリットがあったりしますか?」


「魔素が含まれている作物は身体術で体内の魔素を使う人たちが魔素を補充する手段になるのだけれど、魔獣の肉に比べてそれほどの量でもないし、作物に魔素が含まれていないことのデメリットは特にないわ。逆に、魔素が含まれていると、身体術や魔術を使えない人たちには苦みを感じるらしいから、魔素が含まれていないほうがメリットが大きいくらいね」


ふむ。それなら先ほどアデリナさんが使った魔術も、仕組みを少し変えるだけで効果を大きく変えられるかもしれないな。


これは農業生産に大きく影響を与えることになるかもしれない。



アデリナさんが生長促進の魔術を使った作物とは別の畝の作物に向けて、改良した魔術を使ってみることにした。



『その作物自体が持つ魔素を使った』生長促進の生命魔術を使うと、作物の抵抗もなく先程のアデリナさんの魔術行使時よりも速いスピードで作物が生長し、ついには実をつけた。



アデリナさんもレフ兄さんも驚いたようで、声もなく俺が魔術を行使した作物を凝視している。


「作物の持つ魔素が薄くなりますが、生長促進はかなりスムーズにできるようになりましたね」


俺が声をかけるとアデリナさんが再起動して、


「いきなりすごいものを見せられて驚いたわ!私の魔術を見て、作物の中の魔素の動きを見て、この場ですぐに魔術を改良して行使したのね!」


と意気込んで俺の両肩を掴んできた。


「母さんは興奮しすぎじゃない?でもまあ、分かる気もするけど。こんなにすぐに魔術を改良できるんだな~」


レフ兄さんも感心してくれたようだ。




少し落ち着いたアデリナさんに頼まれて、2人の前で何度も改良した生長促進の魔術を使ってみせた。


アデリナさんは農業ギフトで使っていた魔術との差異に注目していたからか、俺が10回ほど使ってみせたところでアデリナさんも術式を把握して使えるようになった。


レフ兄さんは使えるようにならなかったが、後でアデリナさんに仕込まれるだろう。




日が沈みかけてきたところで、レフ兄さんがいつも働いている鍛冶小屋に向かった。


「ここがレフ兄さんの仕事場かー」


「おう!」


レフ兄さんに声をかけると誇らしげな返事だ。

8歳で村の鍛冶を一手に担うっているのは大変だろうけれど、やりがいもあるっていうことかな。



中に入ると、「鍛冶」で思いつくような設備はほとんどなかった。

炉とかヤットコとかもない。


作業場所は燃えにくい素材でできているけれど、パッと見では何をする場所かはわからないくらいだ。


ほとんどの作業を魔術でこなしているということだろうか。



折れた鉄製の剣を修理するところを見せてもらった。


熱してくっつけて冷やすプロセスを、火魔術・土魔術・風魔術・水魔術を次々に行使して進めていた。


この作業の速さがあるから、鍛冶仕事を一人で担えているんだな。



でも、鍛冶ギフトを持っていない人には難しいやり方じゃないだろうか。

レフ兄さんがギフトに覚醒する前はどうしていたんだろう?


アデリナさんに聞くと、


「村では誰も鍛冶をできる人がいなかったから、壊れた物はまとめて近くの町に持っていって修理してもらっていたのよ。ないものはすべて町で購入していたしね。今はレフのお陰でとても助かっているわ」


とのことだった。

レフ兄さんは「へへっ」と鼻の下を指でこすって照れていた。




最後に、鍛冶小屋から出て鉄を生み出す魔術と鉄を集める魔術を見せてもらった。



鉄を生み出す魔術は土を生み出す魔術や塩を生み出す魔術に似ていた。純鉄だけでなく炭素を含む鋼鉄なども生成できていた。


鉄を集める魔術は地中から、かなり広い範囲で鉄を集めて固めていた。


やはり生み出すより集める方が効率がよさそうだった。


有仁の世界と同じで鉄が最も存在量が多い金属なんだろうか。


鉄より多いケイ素を集めたりもできるかもしれないな。




今日一日で魔術で何ができていて、何ができていないか、その境目や傾向も含めていろいろ学ぶことができた。


今はできていないこと、そもそも着手していないことなど、エルン村に有用な魔術をいろいろ作っていきたいところだ。


戦闘に使える魔術なども開発していこう。



魔術以外でも、農業ギフトや鍛冶ギフトから得られる知識についても垣間見ることができた。


今はギフト持ちだけの属人的な暗黙知となっているので、共有して継承していける形式知としてマニュアルなどを残していきたいところだな。



俺にできることはまだまだたくさんありそうだ。


この作品を読んでいただきありがとうございます!


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