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大力(嘘)で身を立てる  作者: ろん
第一部 辺境開拓村

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生産系ギフトによる魔術①

今日は魔術についていろいろ確認し、考えてみよう。



ギフトで使う魔法とは異なり、魔術は術式の理解と魔素を体外で扱う技術があれば、ギフトなしでも扱うことができる技術だ。



すでに俺も、アデリナさんが魔術を扱うところを見て術式を理解し、真似ることができている。少しながら術式を修正しての応用もできた。


いくつか魔術についての方向性についての仮説と案はあるものの、すでにある魔術を確認することでわかることも多そうだ。



ということで、今日はアデリナさんについて回り、日々の作業の中でどのように魔術を使っているのか、どういった場面では使っていないのか、普段使っていない魔術にはどのようなものがあるのかなど、いろいろ観察してみようと思う。




アデリナさんの後ろについて家を出ると、玄関を出てすぐのところでエルン村長の次男のレフ兄さんが待っていた。


「アルト、今日は俺の作業も見てもらうからよろしくな!」


レフ兄さんはなんだか嬉しそうだ。


鍛冶のギフトを持っていて、エルン村でただ一人鍛冶ができる人材になったから、武器・防具や農具の修理などの仕事がレフ兄さん一人に集中し、目先の仕事に追われてちょっと閉塞感を感じているらしい。



レフ兄さんはまだ8歳だしね。

俺達兄妹がエルン村に来てすぐくらいにギフトに覚醒して、それ以降は村の重要人物になってしまっているけれど、たまには別の作業でもして息抜きくらいしたいだろう。




アデリナさん、レフ兄さんと俺の3人で農業エリアまで歩いていく。


家が建っているところとは少し離れたところに農業エリアを作っているらしい。



俺がエルン村に来てから1年が経つけれど、季節の変化を感じたことがないな。


それに、食事の内容はたまに変わるものの、気候の変化とはあまり関係なかった気がする。


アルトとしては特に気にしていなかったが、有仁としてはそれも違和感のあることだった。



麦っぽい穀物が育っている畑を通り過ぎて、まばらに草が生えている荒れ地のようなところでアデリナさんは立ち止まった。


「ここで畑を作るわね」


アデリナさんがしゃがんで地面に手をついて魔術を起動すると、アデリナさんが手をついたところとその左右に2本ずつ、合計5本の畝が伸びていった。



アデリナさんがレフ兄さんを促し、レフ兄さんがアデリナさんの作った畝の隣に1本の畝を作った。


幅・長さ・高さはアデリナさんと同じ。


農地を作るときの規格として予め決めてあるんだろう。



地面を柔らかくして、畝に成形していく術式になっているようだ。


畝の幅・長さ・高さ・本数はそれぞれ術式の中の一箇所で指定されているから、そこが変数を指定する箇所かな。


変数を変えると術式の効果を変えられそうだ。


土に変化を与えて成形する、というプロセスはいろんなことに応用できそうな気もするな。



理解したことを示すため、俺は同じ魔術でレフ兄さんの隣に3本の畝を作った。


「いきなりできるのかよ!」


アデリナさんかレフ兄さんの真似をするのではなく、早速応用したことで、特にレフ兄さんは驚いたようだ。



「シンプルな魔術だけに、いろんなことに応用できそうですね。土を固くすることで道路を敷いたり、物づくりにも活かせるんじゃないですか?」


「ええ。その通りよ。道路の方は私の農業ギフトで、物づくりの方はレフの鍛冶ギフトで似たような魔術が初めから使えたから、それを教え合って共有しているわ」


何ができて、何ができていないか、後で整理したほうがいいかもしれないな。


とりあえず今日は今使っている魔術を一通り見せてもらおう。



道を作ったり水路を作ったり、箱を作ったり剣の鋳型をつくったり、土を扱う魔術を順に見せてもらった。


農業ギフトで扱える魔術は農業とその周辺、鍛冶ギフトで扱える魔術は鍛冶とその周辺に特化していて、少し離れた分野だとギフトでは使えなくなってしまうようだ。


農業に使う魔術をレフ兄さんが使えるようになったのは、鍛冶ギフトに頼らず、ギフトなしで魔術を身に着けたからということになる。


農業ギフトや鍛冶ギフトなどの生産系のギフトはジャンル外の魔術開発や応用にはあまり向いていないんだろうな。



エルン村長とアデリナさんに魔術の応用が簡単にできると伝えた時、特にアデリナさんが驚いていた理由がよく分かった気がする。


自分のギフトでは開発できない、ギフトに頼らない魔術開発は本当に大変なようだ。


アデリナさんが、独立戦闘部隊を率いるエルン村長に頼まれて時間をかけて開発したのが、塩を作成する魔術らしい。


農業ギフトで使える水を生み出す魔術と、この塩作成の魔術が、エルン隊の活用に必要不可欠だったそうな。


水と塩があれば、部隊として補給に頼らず長時間の活用が可能になり、それがエルン隊の大きな強みになったようだ。



今も、エルン村で使う塩はこの塩作成魔術で作られている。


今はエルン村長とアデリナさん、レフ兄さんしか使えなかったらしいけれど、村の存続に必要な技術だし、ギフトなしで魔術を使えるようにしていくことで解決したいことの中でも重要な項目だな。



話には聞いていた塩作成の魔術を見せてもらった。


土を生み出す魔術をベースに開発したものだと思うけれど、驚くほどシンプルで効率的な術式になっている。


塩の組成NaClを指定して、少しNaCaやNaKを混ぜて生成する。


当然化学式や構造などを知っているはずもないから、文字通りの試行錯誤で微妙に変化させながら幾千幾万とテストをして完成させたんだろう。


この作品を読んでいただきありがとうございます!


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