初めての訓練参加②
また俺からエルン村長に向かって突っ込んだ。
今度はそのままエルン村長の間合いに入り、エルン村長は木剣を振ってきた。
それを木剣で防ぐと見せかけて、わざと頭で木剣を受け止め、エルン村長に斬りかかった。
エルン村長はさっきよりも驚いた顔を見せながらも、木剣を戻してそれを受け止める。
俺は足を止めて何度も斬りかかり、エルン村長と打ち合った。
時折わざと体でエルン村長の攻撃を受け止めて見せる。
肌と肌の表面からわずかに離れた空気中を身体術で強化しているので、金属音を立てて木剣を跳ね返している。
ある程度打ち合ったあと、身体術の強化を切ってわざと腕に攻撃を食らってみる。
バキャッという音とともに俺は吹き飛ばされた。
腕もしっかり折れている。
うん、超痛い。
エルン村長も周りのみんなも「あっ」と声を上げ、駆け寄ってくる。
みんなが近くに来る前に身体術で腕を治して見せる。
エルン村長やキリル兄さんはほっとしただけだけれど、他のみんなは折れていたはずの俺の腕を見て「あれ?」と首を傾げている。
「最後はさすがに少し焦ったけれど、スピードと立体的な機動力、あれだけ動き続けても息も切れていないスタミナ、木剣が直接当たっても耐えられる防御力、それにやられてもすぐに復帰できる回復力を見せた、というところかな」
エルン村長がみんなに向けて解説した。
「はい。僕が訓練に参加しても問題ない、ということは伝えることができたかなと」
「はー。ギフト持ちだとわかっていても、心配させるようなことをするんじゃねーよ」
参加者の一人、エルン村長と一緒に最初から開拓に参加していた槍術のギフト持ちのマクシムさんが、俺の頭を乱暴にかき混ぜながら愚痴ってきた。
「ごめんなさい。まずわかりやすく納得してもらえるのがいいかなと思って」
俺が答えると、ため息を付きながらさらに乱暴に頭を揺すってきた。
「わかりやすかったが、それ以上に驚いたんだよ!もう少しやり方を考えてくれよ」
呆れながらマクシムさんは手を離した。
「攻撃力についてはあの場で見せなかったのが気になったが、なにか理由があるのかい?」
マクシムさんと同期の剛力のギフト持ちのエフゲニさんが尋ねてきた。
「威力を完全にコントロールできる自信がまだなくて、対人訓練ではちょっと・・・」
「俺の『剛力』でも、イゴールの『怪力』でも、ギフトによる力のコントロールは最初からある程度できていたんだけど、『大力』はその辺りが違っているのかね?」
「ええ。その代わり力の上限はかなり高いようです。使いこなすにつれてどこまでも上げていける感覚です」
「・・・それはちょっと考えにくいほどの効果だな。それならコントロールが難しいくらいのデメリットがあっても当然なのか。。。」
同系統『剛力』のギフト持ちだけに、エフゲニさんは違いが気になったらしい。
「試しにエルン村長の剣を振ってみます」
隅に置かれている巨大剣を片手で持ち上げると、周りから「うわっ」という声が上がる。
他の訓練参加者から離れた場所に行き、振ってみる。
最初は両手持ちで振り、片手でも振る。両手だと方向を変えたりするのに便利だけれど、片手の方が可動域が広くなるな。
一度動きを止めて構え、木剣と同じように巨大剣を左右に薙ぎ払い、振り上げて振り下ろし、地面スレスレで止める。
10mほど上空に飛び上がりながら切り上げ、上空で足場を作ってその場で地面に向けて振り下ろし、巨大な敵を想定して更に10mほど飛び上がり、水平に薙ぎ払う。
そして地面に下りて構え、一呼吸おいてから地面に巨大剣を置く。
「「うおおおおお!」」
周りから歓声が上がる。
「もうこれは即戦力、というかエルン村長に並ぶ最大戦力じゃないか?」
「これはとんでもないな。アルトはまだ5歳だろう?王都に行かなければならない12歳まであと7年も残っているぞ」
「いきなりの戦力充実だなー」
戦力の増大はそのまま戦闘を担当するものの命の安全に繋がるため、みんな大いにテンションが上がったようだ。
パンパン
エルン村長が大きく手を叩いて注目を集める。
「アルトの力はみんなに見てもらったとおりだ。今後は大森林に向かうメンバーにも組み込んでいくつもりだ。ただ、それだけではなく、村の生産方面でも関わってもらう予定がある。戦闘専門というわけにはいかないことを理解しておいてほしい」
エルン村長が告げると少し不満のある顔をするものもいたが、今までよりも戦力が増強されることには間違いないので反論の声は上がらなかった。
とりあえず、俺の戦闘力については村のみんなに周知してもらうことができ、大森林探索のメンバーにも入れてもらえそうだ。一つ大きな課題を達成できた。
次はエルン村の内政面、農業や生産に関わっていき、新たな魔術も開発していこう。
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