ピエール商会① マーケティングミックス
以前、俺からマーケティングの4P・4Cの話を引き出し、倉庫に連れて行って5S活動の話も引き出していった商人が、大きく成長していた。
その商人、ピエールは、新しいことを取り入れることに貪欲な男だった。
それも、形だけではなく、自分で理解し、解釈した上で可能なことから手を付けていった。
商売の規模が大きくなり、ピエール商会を立ち上げ、俺が企画した国内物流を活用して王都の外でも商売の手を拡げている。
ピエールにポロっと話を漏らしていろいろ聞き出されてしまったが、話した内容はピエールだけではなく、他の商人や商会にも話したし、ピエールも特にそれを止めなかった。
ただ、話を聞くだけの者と、聞いて納得する者と、納得して動く者の違いはある。
動く者は僅かで、動く者を見て結果が出ればやってみようと考えている者が少しいて、ほとんどの者は聞いただけで満足していた。
まあ、そんなもんだろうな。
目の前の仕事を熟しているだけでも忙しい。
その生活の中に、「重要ではあるが、緊急ではない」仕事を入れることができる者は、なかなかいないだろう。
マーケティングの4Pについては、ピエールから何度も聞かれることになった。
4Cよりも4Pの方が実践に繋がると考えたらしく、4Cの方はそれほど聞かれることはなかった。
供給側から見た4P(製品、価格、流通、プロモーション)の方が、需要側から見た4C(顧客価値、コスト、利便性、コミュニケーション)よりも、この世界では合っていると俺も思う。
商品や、販売戦略などによって、マーケティングミックスを考えることについてはピエールに伝えた。
マーケティングミックスとは、マーケティングの4Pそれぞれを単独で考えるのではなく、組み合わせで考えることだ。
分かりやすく4Pと4つに区切っているが、重なる領域もあるし、連なる領域もある。
商品にあった組み合わせや考え方も、当然にある。
例えば、魔獣の素材を使うことに拘った家具を取り合う場合、最初から製品と価格の選択肢は限定される。
製品:
素材の入手の機会が限られるので、少量生産になる。
価格:
薄利多売には向かない。素材の仕入価格に加工代、必要経費を乗せた価格が下限になる。
この最低条件を織り込んでマーケティングミックスを考えると、次のような例が考えられる。
製品:
一つひとつをデザインまで追求して作り込んだ逸品として生産。
受注してから顧客とデザインを相談する方向性もアリ。
価格:
製造原価(素材、加工代、経費等の合計)に大きく利幅を乗せ、高価格に設定。
数量限定の高級品という位置づけにする。
流通:
卸業者、小売業者に卸すのではなく、直接顧客に製品を届ける。
アフターサービス・メンテナンスなどで顧客と継続的な関係を築く。
プロモーション:
試作品の貸し出しで、貴族や豪商のパーティーなどで使用してもらい、認知してもらう。
王家、大貴族、センスがいいと有名な貴族等の影響力のある者に贈り、御用達の名を得る。
限定された選択肢の中から、製品と価格の設定を考え、それに見合った流通とプロモーションを考えるのが基本になるだろう。
既に構築した流通網や、プロモーションに使えそうな手段があるなら、それに合わせた製品と価格を選択することもあるかもしれない。
マーケティングの4Pが各要素を邪魔しないように、相乗効果を発揮できるようなマーケティングミックスを打ち出せれば、この世界なら結構な優位に立てるんじゃないかな。
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