2度目の戦争② 会敵、勝利
草原の向こうから、トロイト王国軍が姿を現した。
まだ遠くだが、整然と陣形を維持しながら移動していることが分かる。
相変わらず、軍の統制度合いは格段に向こうが上だな。
アクチュア王国軍は、騎馬の伝令が忙しそうに行き交っている。
こちらは見事に浮足立っているようだ。
さあ、こちらのブタ将軍が余計な指示を出す前に、勝負を決めるか。
混成部隊の常連連中に声をかけ、そして俺一人で少し前へと歩いていく。
混成部隊からも20mほど離れた所で立ち止まり、
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
俺は、身体術で声帯と肺を強化した大声で吠えた。
併せて、精神魔術と生命魔術も広範囲で行使している。
狙いは敵軍と、こちらの本陣だ。
ブタ将軍たちは失神・失禁してこの戦争中には何もできないだろう。
トロイト王国軍の兵士はもちろん、騎士の乗る馬も恐慌状態に陥って、騎士が次々に落馬している。
「いくぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
俺は土魔術で生成した10mの剣を掲げ、背後に声をかけた後、トロイト王国軍に向かって走り出した。
混成部隊が俺に続き、そして前線の部隊も続き、それにつられて本陣以外の部隊も動き出した気配を背に感じながら、俺は走り続ける。
「大力のアルトの前に立つ敵は、すべて殺す!」
俺は大声で宣言しながら10mの剣を振るう。
恐慌で動けない兵も、立ち直ろうとしていた兵も、等しく血肉になって吹き飛んでいく。
俺は100m10秒ほどの速さを保ち、1秒に1回剣を振るい続けた。
「大力のアルトの前に立つ敵は、すべて殺す!」
再度宣言すると、俺が剣を振る前に、敵が逃げて俺の正面の兵が割れていく。
俺よりもかなり後方で、混成部隊や前線の部隊が会敵し、一方的に敵兵を倒していることが感じられた。
こちらの士気は上々で、相手の士気は最低レベル、更にデバフも入れている状態だからな。
会敵前の軍の統制度合いの差など関係なくなっただろう。
兵個人の能力では同じかこちらが上くらいだしな。
俺は察知した敵本陣の方に、少しずつ進路を変えて進み続ける。
立ち止まって戦おうとしていた者も、逃げ遅れた者も、等しく肉片に変えながら進んでいると、装備の充実した兵が守る本陣が見えてきた。
前回の戦争で逃げた兵に俺の話を聞いたのか、本陣を最後方の中央ではなく、最後方より少し前の左寄りの位置に置いたようだったが、見つけてしまえば同じだな。
今回は敵将の死骸の確保などは考えていないので、そのまま走り続けて本陣も同様に吹き飛ばした。
そのまま左後ろの隅、敵からすると右翼最後方で、俺は敵軍を通り抜けた。
後方中央からまた突っ込んで殲滅することも考えたが、そうなると敵軍が死兵になって、前線の部隊がやばそうだと思い、敵の右翼の左端よりも左、誰もいない所を走って敵軍の先頭の方に戻った。
「誰がいたのかは分からんが、トロイト王国軍の本陣をまとめて吹き飛ばしたぞ!」
宣言して、再度精神魔術を乗せ、恐怖を呼び起こす。
一瞬、両軍ともに静かになり、静寂が戦場を支配した。
そして、トロイト王国軍の兵士は統制も何もないように、個々に必死で逃走し始めた。
殿のいない逃走する軍は脆い。
追撃戦でアクチュア王国軍は更に戦果を上げ、勝敗は確定した。
「第13大隊の第5中隊の連中には話を聞いていたんだが、実際に見ると凄まじいな」
混成部隊の方に行くと、現場を取りまとめているリビオが話しかけてきた。
そしてニヤリと笑うと、俺に背を向けて混成部隊の方を向き、
「大力のアルト、ばんざーい!」
と大声を上げた。
「大力のアルト!」「アルト!」「大力!」と混成部隊から次々に声が上がり、他の部隊でも声を上げだした。
誰だ?どさくさに紛れて「夜も大力!」と叫んだやつは?
俺を見て、アクチュア王国軍の兵士たちが歓呼の声を上げている。
それに応えるように、10mの剣を右手で上に掲げると、「うおーーーー」と言葉にならない声が上がった。
この戦争での成果は、誰にも誤魔化しようのない、俺の戦功になっただろう。
まあ、誤魔化しそうな連中は失神・失禁中だけどな。




