2度目の戦争① アルト13歳、独立遊軍としての動き
年が明けて、俺は13歳になった。
昨年はいろいろと想定外なことがあって、想定していた以上に物事が進んだ。
振り返ってみると、悪くない1年だった。
あと数ヶ月でオレグとイリナが王都にくる。
いろいろ話せることができたな。
俺が12歳から13歳になったことでは、特に何も変わらないが、今年15歳になった者はいろいろ変わるだろう。
ギフト保有者養成学校は15歳になったら強制的に卒業だ。
斧士ギフト持ちのマルセルと剛力ギフト持ちのサブリナは、国軍に入るんだろうな。
今年14歳になった体術ギフト持ちのボリスも、学校を卒業して国軍に入るようなことを言っていた。
平民出身のギフト持ちが国軍で受ける洗礼に耐えて、がんばってほしいところだな。
年明け早々に、国際行商や国内物流も動いている。
棍術ギフト持ちのダミエンは、今年からどちらにも参加しないことになっている。
国際行商の商隊の責任者は斥候ギフト持ちのブライムが担い、国内物流の責任者には傭兵団の代表にもなっているマクシが就くことになっている。
国際行商は参加メンバーが自主的に動いて結果を出しているし、国内物流は仕事が固まってくれば護衛任務に集中していればいいから、何とかなるだろう。
俺の方は、次の戦争への参加要請が出ている。
国王の宣言でも、戦場での独立性は保証されているが、戦場を選ぶ権利は保証されていないんだよな。
まあ『順当に』手柄を立ててみせるさ。
そういえば、混成部隊から傭兵の有力者を国内物流に引き抜いたことで、国軍のはみ出し者として参加しているリビオから文句というか、戦力的な不安について言われたな。
マクシとケニーは傭兵として参加している者を取りまとめるリーダーのようなポジションだったからなあ。
まあ、勝ち戦にはしてやるつもりでいるから、何とかがんばってもらおう。
戦争のため、部隊の移動が始まった。
俺は独立遊軍として、全軍の集合地へ直接向かう。
第13大隊の大隊長や第5中隊の中隊長などは何か言いたげにしていたな。
普段、第5中隊に出入りしていたから、第5中隊の隊員として戦争に参加するとでも思っていたのか。
特に配慮してやる義理もないけどな。
第5中隊の連中は面と向かって文句を言ってきた。
「俺たちの行軍中の飯はどうするんだ!」
だとさ。
自分たちでなんとかしろ、工夫次第でお前たちでもできるだろう、と言って、少し威圧して黙らせた。
飯の恨みは怖い・・・というか面倒臭いので、はっきりさせとかないとな。
今回の戦争のアクチュア王国軍の集合地は、前の戦争で敵の将軍を討った丘の麓だ。
今は丘が拠点化され、兵站の結節点になっているらしい。
前の戦争の将軍・・・ジョルダン・マルタンだったか、あいつは俺が何も言わなかったら、あれほどの重要地点をそのまま放置して帰りそうだったからな。
国軍としての成果が形になって何よりだ。
それにしても、兵站についてだけは、文句の付け所がないくらいにしっかりしているんだよな。
俺が参加した哨戒任務でも、前の戦争でも、兵站の面でのトラブルは一度もなかったように思う。
現場の指揮官はお世辞にも有能とは言えない者だった。
兵站に関しては現場とは切り離して、独立で管理しているんだろう。
まあ、豊富な兵站は豊富な物資、豊富な物資は巨額の売買、巨額の売買は巨大な利権・・・と繋がって、戦争で利益を得ている者の懐が温まるのだろうけども。
日本なんて近代に至るまで兵站を軽視し続けていた訳だし、利益目的とはいえ、アクチュア王国軍の兵站の確保については素直にすごいと思うよ。
ポールラント平原の、以前交戦した丘、そこには砦のような頑強さを備えた拠点が立っている。
その拠点を見上げる場所、丘の麓に今回の戦争に参加する軍の各部隊が集まっていた。
俺は第13大隊の制服ではなく、動きやすいと言うだけの普段着姿に、剣帯で剣を帯びているだけの格好だ。
騎士のバッジと、過去のエルン隊とほぼ同じ、剣を模した形状の独立遊軍であることを示すバッジを着けてはいる。
軍の上層部には俺が独立遊軍であることは知らされているだろうし、それ以外でも目端の利くやつは知っているだろう。
第5中隊に混じっていると悪目立ちしそうなので、今は混成部隊の方に混じっている。
混成部隊は格好がバラバラなので、それほど目立たないだろう。
目立たないと思っていたのに、偉そうな士官に呼び出された。
軍の将軍がお呼びだそうな。
面倒そうだし、断っても面白そうだが、とりあえずはついていくか。
丘に近い場所に張られた天幕に入ると、豪奢な椅子とテーブルがあり、軍人とは思えないような肥えたおっさんが座っていた。
挨拶もなく「ワシの指示に従え」「危なくなったらワシを守れ」などとつらつら言ってくるので聞き流す。
肥えたおっさん、おそらく将軍が話し終えた事を確認して、
「私は独立遊軍として、自分の裁量で動きます」
と告げて、回れ右で天幕の外へ歩き出す。
将軍がブチ切れて「こいつを処罰しろ!」と叫び、天幕内の取り巻きや兵士が俺の方に寄ってきたので、「俺の邪魔をすれば殺す」と精神魔術を乗せて威圧した。
取り巻きや兵士、そして将軍も震えて動かなくなったことを確認して、「失礼」と一声かけて天幕を出ていく。
俺が天幕を出て少し経つと、天幕の方から言葉になっていない怒鳴り声が聞こえてきた。
なかなか活きのいいブタだったな。
今回の戦争は、アクチュア王国に重要な地点に拠点を築かれたことで、それを奪還しようとトロイト王国が兵を挙げ、それに対応するためにアクチュア王国も兵を集めた、という流れになっている。
アクチュア王国は丘の拠点を背にして、陣を構えている。
大隊ごとの配置はともかく、相変わらず中隊以上のまとまりがない、緩い陣構えだ。
そして、混成部隊は最前線に配置され、俺もそこに混じっている。
将軍の下に俺を呼び出しに来た取り巻きが、混成部隊の近くをウロチョロしていたが、俺が睨むと撤収していった。
混成部隊の取りまとめ役になっているリビオが俺に「何をやったんだ?」と聞いてきたので、「将軍たちとまとめて脅しておいた」と素直に答えると、周りの兵士と一緒にゲラゲラと笑っていた。
今回初めて混成部隊に参加した者は緊張したままだが、常連の連中の士気は結構高いな。
俺がここにいることで、士気が上がっている面もあるか。
この作品を読んでいただきありがとうございます!
もしよろしければ、ブックマークと評価の方もよろしくお願いします。




