国王への報告② 独立遊軍
国王が脇に控えているジョルダン・マルタンに向けて問う。
「ジョルダン・マルタンよ。
そなたの説明とアルトの説明が大きく異なっておるな。
そなたの説明の不明瞭な所を、アルトの説明では明確になっていたように思える。
アルトの説明の通りで、相違ないか」
俺はジョルダン・マルタンの顔を凝視した。
「・・・・・・はい。相違ございません」
反論されても論破できそうだったが、長くなりそうだったので精神魔術で軽く威圧した。
まあ、本当に事実だし、構わないだろう。
「ジョルダン・マルタンよ。
そなたの虚偽の申し立てと、軍務中の不適切な行いについては後に問う。
今はそのまま控えておれ」
国王はジョルダン・マルタンがそのまま認めたことに驚いた様子だったが、すぐに真顔になって告げた。
ジョルダン・マルタンは赤くなった顔が今度は真っ青になり、俯きながら「・・・はっ」と小さく返事をした。
国王は正面、俺の方に向き直った。
「アルトよ。
聞けばそなたは『大力』という過去に例のないユニークギフトを保有しておるとか。
そなたはそのギフトの力を持って万の軍勢へと立ち向かい、我が国の軍を苦しめてきた名将アルノー・サランジェを討ち、敵軍を撤退せしめた。
近年稀に見る大勝利を我が国にもたらし、また我が国の将兵を安全に帰参せしめた。
その功に報いたいと思うが、何か望みはないか」
国王の言葉に、立ち並ぶ貴族家の者たちがざわめき始めた。
特に大貴族家の者は、「生意気な」「平民にはあまりに過大な言葉だ」などと批判的な声を上げている。
「戦場において、無能な指揮官や士官がいかに有害であるかをこの度の戦争で学ぶことができました。
敵軍と同じだけの兵士を揃えても、無策な指揮官や、まともな指示もできない士官がいれば、当然に敗北するであろうことが、よく分かりました」
俺の発言に、貴族家の者の批判の声がより大きくなった。
軍事閥の貴族家の当主や子息が指揮官や士官になっているので、自分たちを批判されたと思ったのだろう。
騒がしくなってきた所で、国王の笑みが深くなる。
そして真顔になり、玉座から立ち上がった。
貴族たちは一斉に沈黙した。
「アルトよ。
それで、そなたは何を望む」
「愚かな将や士官の命令を拒否し、己の意志で動かせる遊軍となる部隊、過去に存在した独立戦闘部隊の創立を、望みます。
ただ、私は現在12歳。
若輩な上に、国軍の任務には2回、戦争には1回参加した経験しかありません。
まずは、私1人単独で、我が『大力』ギフトを持って活躍してみせます。
如かる後に、独立戦闘部隊の創立を許可していただきたく」
いつものことだが、俺が12歳だと言ったところで国王が、そして批判していた貴族家の連中まで一瞬思考停止したようだ。
まあ、ちょっと狙ったんだけどな。
国王はすぐにまた真顔になった。
「あい分かった。
アルトよ。
そなたには戦場において国軍の指揮命令系統から独立したそなた単独での独立遊軍として活動することを認める。
また、そなたの活躍次第で、独立戦闘部隊の創立も、検討しよう」
「はっ。ありがとうございます」
国王の宣言に、また貴族家の連中が騒がしくなったが、この場で国王の宣言を否定するほどの材料は持っていないようだ。
騒がしいままの謁見の間を、国王の「では、下がってよい」との言葉を受け、俺は去っていった。
俺は議論の流れと、国王の態度で、いくつかの選択肢やシナリオを想定していた。
どちらも俺にとって肯定的な流れだったので、元々考えていた選択肢の中で、最上のものを選ぶことができた。
今このタイミングで独立戦闘部隊を創立することも考えていたが、それを留保しつつまず単独で動けることを優先した。
独立戦闘部隊を創立すると、文字通り『独立』した立ち位置になるから、国軍の各部隊との交流が妨げられるリスクがあったからだ。
現状ではベストな選択肢を掴み取ることができた、と俺は満足している。
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