国王への報告① 正直に報告
第13大隊の駐屯地に戻り、中央にある広い運動場に隊員が集められ、出発時と同じように偉そうな士官、大隊長が挨拶をしている。
相変わらずほとんど聞いている者がいないが、俺は聞いていて面白い。
第13大隊の第5中隊が威力偵察で敵軍全体を撃退するという手柄を挙げた。
第5中隊が属している第13大隊の功績になるのは間違いない。
しかし、第5中隊では貴族出身の士官が誰1人威力偵察に参加しなかった。
代わりに率いていたのが騎士の身分はあるものの、平民出身で平隊士の俺だ。
嫌悪している俺に触れないように、第5中隊が属する自分の指揮する第13大隊を褒めようとして、必死で言葉を選んでいるのが分かる。
意地が悪いかもしれないが、その滑稽ぶりが俺にとってはエンタメ感すらあるな。
第13大隊の大隊長が時折言葉に詰まりながら話している途中で、国軍の総本部の制服を来たそこそこ地位の高そうな士官が駆け込んできた。
「第13大隊第5中隊所属のアルトはいるか!?」
俺が名乗り出ると、早急に王城に出頭するようにとのことだ。
そのまま、その士官が乗ってきた馬車に同乗して王城に向かうことになった。
馬車で俺を迎えに来た士官に事情を聞くと、先の戦争について謁見の間で国王が直々に聴取するとのことだ。
俺は、何らかのタイミングで聴取されることまでは読んでいた。
あの将軍や取り巻きは、戦争の勝利は自分たちの手柄だと主張するだろう。
だが、どうやって勝利できたかをうまく説明することができず、矛盾の多い説明をするはずだ。
齟齬が大きすぎる説明を聞いて、追求されたら、俺のことを話さざるを得ないだろう。
将軍たちは名誉に目が眩んで、大体そんな流れになるだろうなと考えていた。
・・・いきなり国王の聴取を受けることになるとまでは読んでいなかったが。
対面にいる士官は口が重く、それ以上の情報を入手することはできなかったが、馬車に乗っている内に、いくつか考えられるシナリオを想定し、それぞれのシナリオを検討することはできた。
馬車は内壁の門を通り、王都の中央にある王城の門も通り、城の建物の前で止まった。
馬車を降りて、士官の先導に従って王城の中に入る。
建国してすぐに立てられた城だから竣工から200年ほどか。
石造りで華美さよりも堅牢さを重視しているように感じる。
王城の入るとギフトが切り離された感覚があった。
裁判所の中に入った時と同じ感覚、キャンセルのギフトが使われているのだろう。
真っすぐ進み、荘厳な扉の前で、謁見の間における作法を士官から伝えられた。
そういう話は馬車でもできたんじゃないのかと思うが、そういう慣習なのか、この士官が平民騎士を嫌悪しての嫌がらせなのか、判断が難しいな。
位の高そうな文官が扉から出てきて、俺についてくるように告げた。
迎えに来た士官は頭を下げたまま動かない。
謁見の間で伝えられた作法通り顔を上げずに文官についていき、文官に指示された場所で片膝をついて跪く。
「アルトよ。
そなたは、先の戦争において所属する中隊を率い、威力偵察をすることをこの度の将軍に命令された。
その命令に従い、敵軍と会敵し、その場でトロイト王国の名将アルノー・サランジェを討ち取った。
これに相違ないか。直答を許す」
「はい。相違ございません」
「この度の戦争で勝利を得たこと、これは喜ばしい。
ただ、軍を率いた将軍であるジョルダン・マルタンに話を聞いていたのだが、いまいち要領を得ぬ話が多く、状況を掴めなんだ。
詳しい経緯を、そなたから語ってくれぬか」
「はい。畏まりました。
私から見た視点からですが、語らせていただきます。
10個大隊が集合した時点からの話ですが・・・」
俺は『正直に』経緯を語った。
・集合した初日から1大隊ずつを進ませたこと
・将軍とその取り巻きが最後尾の第15大隊でずっと酒を飲んでいたこと
・初日、2日目、4日目、6日目に斥候を放つようにと俺が提言したこと
・6日目に提言した時に、指揮官が「そこまで言うならお前たちの中隊だけで斥候に行ってこい!ついでに威力偵察、一当てして十分に敵を知るまで帰ってくるなよ!」と発言したこと
・自分の所属する第13大隊第5中隊の中隊長と貴族出身士官は第13大隊に残留し、それ以外で威力偵察に出たこと
・丘に陣を構えた1万以上のトロイト王国軍を発見し、俺が10mの剣を生成して突撃し、アルノー・サランジェを討ったこと
・アルノー・サランジェの死骸を持参して将軍に報告し、交戦した丘に連れて行って勝利を証明したこと
・将軍が勝利した後に何をするか、何も考えていなかったため、俺の提言したとおりに丘に拠点を作ることになったこと
俺が話をしていると、国王の顔が少しずつ愉快げになり、口の端が上がっていくと同時に、将軍、ジョルダン・マルタンという名前だと初めて知ったが、の顔が赤くなり、体がブルブルと震えて、その震えが大きくなっていった。
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