哨戒任務③ 出発、初日の飯
「出発の時間だ!」と士官の中でも上位の者が叫んだ。
広間の入口付近に積まれていた背負い袋を受け取り、表に出ていく。
士官が説明していたが、ほとんどの者が経験者なのか、スムーズに受け取って動いていた。
一部まごついていた者がいたが、周りの者に教えられて受け取っていた。
俺も受け取った。
寝袋や携帯食料、水筒などが入っているらしい。
周りでは誰も中を確認していないな。
それだけ信頼できるのか?
俺は念のために背負い袋の中身を確認する。
ランダムで配っていたし、俺向けに荷物の細工などはできなかったとは思うけどな。
聞いていたものは一通り揃っているようだ。
携帯食料は、固形のナニかとしかいい難いが、少しデカくて固くて黒い、有仁の世界のカロリーバーみたいなものかな。
味は保証できなさそうだが。
俺の傍にいたマクシやケニーは「心配性だな」と笑っていたが、リビオはなぜかうんうんと頷いていた。
広間にいた士官の中でも地位が低そうな3人が表に出ていた。
その3人の士官は馬に乗って「出発!」と言って東側の外壁の門に向かって進み始めた。
その士官たちの後ろを6人ほどの兵士が徒歩で続いた。
士官の世話係みたいなものか。
その後ろを、特に整列などせずに混成部隊の者が続いていく。
この調子で国境沿いまで向かって、それから哨戒任務に就くのか。
何というか、いろいろ雑だが、これが混成部隊の運用なんだろうな。
昼前に王都を出発し、途中何度か小休止を取り、日が暮れても進み、50kmほど進んだ所で夜を明かすことになった。
道沿いに開けた場所があり、火を使った後などが残っていた。
ここは日頃から旅をする者などが使う場所なんだろうな。
暗くなってから夜を明かす準備を始めるのは不思議な気もするが、こちらの世界では常識なんだろうか。
少し離れた場所にある林で枯れ木を取ってきて、背負い袋に入っていた火打ち石で火をつけようとして、苦労している者も多いようだ。
俺は日常的に使える魔術はもう隠さなくていいと考えている。
林の奥まで入って、ウサギを4匹仕留めた。
ちなみに、日本だとウサギを鳥だと誤魔化すために1羽2羽と数えていたらしいが、こちらでは普通に1匹2匹で数えている。
携帯食料を昼に食べてみたが、まずいというか苦く、塩辛かった。
必要な栄養を取るためにいろいろぶち込んで、保存のために塩を多めに使っているんだろうか。
まあ、食えないというほどではないが。
固くて歯応えがあるから、何度も噛む必要があり、それで食事をしたような気になるのかもしれない。
士官の3人は自分たち用に食事を用意させていたけどな。
夜も、ついてきた6人の兵士に食事を作らせているようだ。
夜は携帯食料以外のものも食いたかったので、仕留めたウサギを水魔術で血抜きをして、捌いた後に、焼いて食べる用の肉には土魔術で生成した塩をすり込んだ。
ウサギの骨がらを土魔術で作った鍋で煮込み、出汁を取る。
出汁を取ったら塩をすり込んでいない、小口に切ったウサギ肉を入れて煮込み、塩で味を調える。
煮込んでいる間に塩をすり込んだ肉を木の枝に刺して焼いていく。
学校の食堂のナセル料理長に、行軍中にできそうな調理法を教わってきたんだよな。
万全の料理とまではいかなくても、それなりに食える料理は作れるようになった。
何人か、いや、かなりの数の目が俺の方を向いている。
俺が使った魔術に驚いたのかもしれないが、それ以上に焼いている肉と鍋への視線の方が強い。
「欲しいやつはいるか?」
視線の方に声をかけると、「欲しい!」「くれ!」「よこせ!」と声を上げながら寄ってきた。
マクシ、ケニー、リビオを含めて22人か。
まともな食事を食いたい人間はそれ以上にいるんだろうが、まあ、それほど親しくない、それでいて力を示した人間に、そう簡単にねだりにはこれないか。
分けると満足な量ではなくなるが、この22人と俺で均等に分けてやるか。
まだ初日だが、昼と夜を携帯食料だけで過ごしたのは辛かったようで、焼いたウサギ肉とウサギ肉スープはなかなか好評だった。
心底から感謝してくるやつもいたな。
まあ、飯の恨みは怖いが、飯の恩は重い、ってやつだな。
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