哨戒任務② 3人の猿山のボス
1時間後に出発するので、それまでは自由にしろ、という言葉で士官の話は終わった。
数人から10人程度のグループで固まっているな。
常連で顔見知りの者が多いんだろうな。
公式な記録にはあまり残されていなかったが、元々国軍にいた者から聞いたところでは、混成部隊は戦場でも危険な所に送られやすく、そして結構な戦果を上げるらしい。
そういった状況での連帯感はあるのかもしれないな。
そして、グループの集まり方や、集まった者のカラーというか雰囲気を見ると、派閥のようなものもありそうだ。
強い者を頂点において、非公式なグループリーダーとして動くようなカンジか。
雑に言えばボスが居る猿山がいくつもあるようなもんかね。
驚いたことに・・・というほどでもないか、200人余りいる混成部隊の中に、俺以外のギフト持ちはいないようだ。
国軍のはみ出し者でもギフト持ちなら混成部隊には入れられないんだろうな。
広間の後ろの方から混成部隊の兵士を眺めて観察していると、俺も観察されていたようで、中には今年の『御前武試』の優勝者だと気付いた者もいたようだ。
猿山のボス・・・小集団のリーダーっぽい者が3人、俺の方に向かってくる。
「お前、そのバッジをしてるってことは、ギフト持ちの学校の生徒だな。なんでここにいやがる」
「馬鹿かお前!こいつは結構な有名人だぜ!ギフト持ちの貴族を半殺しにして、その罰でここに来てんだろうが」
「お前ら、今年の『御前武試』を見てなかったのか? こいつは今年の優勝者だぞ」
「知ってらあ、このボケが!」
俺の前に来て、口々に互いにマウントを取り合いながらしゃべっている。
本当に猿山のボスだな。
そして俺が口を挟む暇がない。
俺が無言で見ていると、次第に口論が収まってくる。
「俺に何か用か?」
誰にというわけでもなく、眼の前に問いかけてみる。
「随分と落ち着いているな。
ん?そのバッジの色は今年入学か?
お前、それで12歳なのか?」
「え?マジで?」
「俺は知っていたぞ」
なかなか目敏いな。
でも話が早いのか、話が進まないのか、よく分からなくなってきた。
「で?」
顎をしゃくって話を促す。
「お、おう・・・なんか調子狂うな。
いや、新入りのお前がどれくらいデキるのか、確かめようと思ってな」
最初に話しかけてきた男が言うと、他の2人は特に否定しない。
同意見のようだ。
「確かめる、な。
力比べでもするか?」
「おう。話が早えな」
「それじゃ、お前ら3人で、俺を押してみろ。
1分かけて、少しでも俺を後退らせたら、お前らの勝ちだ」
「あ?俺らを舐めてんのか?」
「まあ、とりあえずやってみろ」
俺はその場で手の甲を相手に見せて、自分側に振って「かかってこい」と挑発する。
「1、2、3、・・・」
そして口でカウントを始める。
俺に文句を言ってきた男が押してくる、が、当然びくともしない。
それを見て他の2人も押してくる、が、当然びくともしない。
3人とも本気で押してきた。
顔の表情と血管の浮き出しっぷりがすごいな。
それでも動かないので、最初の男が後ろに下がり、走って勢いをつけて体当たりをしてきた。
俺は構わずにカウントを続ける。
「・・・57、58、59、60。
終わりだな」
3人は全力を尽くしていたようで、うつむいて息を切らせている。
周りで見ていた者は感嘆の声を上げているようだ。
「すげえ!」と騒がしい者もいる。
呼吸が収まってきたのか、3人が話しかけてくる。
「あんた、すげえな! これがギフト持ちの力ってやつか」
「貴族のギフト持ちを半殺しにしたって話も納得だぜ!」
「『大力』というギフトだったか。初めて世に出たユニークギフトらしいな。底が知れん」
力を認めると、割とすぐに認めてくるらしい。
分かりやすくていいな。
それから改めてお互いのことを話した。
最初に話しかけてきた長身でごつい筋肉の男がマクシ。
混成部隊には傭兵として参加しているそうだ。
混成部隊に参加する内に、自然と集まった傭兵団の頭として知られているらしい。
貴族のギフト持ちを半殺しにしたことに拘っていた、背は俺より少し高いぐらいで、見かけは痩せ気味、細マッチョというやつか、そして皮肉屋っぽい男がケニー。
こいつもマクシと同様に混成部隊には傭兵として参加しているようだ。
特に傭兵団などには属しておらず、一人で動くことを好んでいるが、ケニーに助けられて生き延びた者が結構いるようで、慕われているらしい。
冷静な語り口で話していた、背は低いが筋肉の塊みたいな男がリビオ。
国軍に属しているが、上官に従順でないことから混成部隊に入れられることが多いらしい。
混成部隊に参加する回数が多いことから、新たに国軍から飛ばされてきた者の面倒を見ている内に、混成部隊の国軍所属の者のリーダーのような立ち位置に置かれているようだ。
3人ともなかなか個性があって面白いな。
俺も経歴をまとめて話すと、この3人には妙にウケた。
『御前武試』を見ていたリビオも、貴族を半殺しにしたことに拘っていたケニーも、裁判の内容は詳しく知らなかったようで、ジュリアン・ローゼルスタッドのギフト詐称を証明したシーンの話には本気で聞き入っていたようだ。
周りでも、妙に静にして話を聞いていた者が多かった。
混成部隊の結構な数の者に、俺の存在が認められたかな。
離れたところにいる国軍の士官連中は苦い顔をしているし、混成部隊の中にも妬みか分からないが、あまりいい感情を持ってなさそうな者もいそうだ。
まあ、様子を見ながら、この混成部隊で俺がどうするか考えるとしようか。
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