民間軍事系ギフト保有者への身体術指導
国際行商の第1回商隊で棍術ギフト持ちのダミエンを責任者にした。
責任者を引き受けてもらうために、商隊を無事に帰すことができたら身体術向上の修行に付き合ってやる、と約束した。
その約束を今、果たしている。
ダミエンの体で身体術を行使する。
一度軽く使ってみせたことはあるが、本格的に使うのはこれが初めてだ。
ダミエンは自力だと1.5倍くらいの強化で頭打ちになっていた。
同じ武術系の槍術ギフト持ちのマクシムさんは自力で2倍を越えていたが、人によって資質が違うのかもしれない。
今回は2倍の強化を施している。
初めて達した領域の身体術にダミエンは驚きながら体を動かし、試している。
嬉しそうな顔をしているが、同時に複雑そうな表情もしている。
まあ、察しがつくが。
ダミエンは、今まで棍術ギフトによって使えていた身体術と、俺によって行使された身体術の違いに戸惑い、どちらかを選ぶ必要があることに気付いたようだ。
今まで使っていた棍術ギフトによる身体術は、それこそ何十年も使い、磨き込んできたものだろう。
悩んでいるダミエンに、
「今まで使っている身体術も、俺が行使した身体術からヒントを得て、向上させることはできるかもしれない。
ただ、それで向上させられる度合いは微々たるものだ。
一から身体術を学び直せば、今まで以上に向上させていける可能性がある。
ただ、棍術の技術と身体術の強化を重ね直す努力が必要になるから、遠回りにはなる。
好きな方を選ぶといい。」
と告げた。
ダミエンはかなり悩んでいたようだが、身体術を学び直すことを選んだ。
年齢のこともあるし、日々の活動のこともあるので、キリル兄さんに施したような修行は絶対不可能だし、レフ兄さんに施したような修行も厳しいだろう。
それでも、かなり高いレベルにまで引き上げることは、できると思う。
ダミエンは、強度と固さと靭性のバランスを取りながら強化することには、やはり苦戦していた。
骨が折れるところまではいかないが、筋を痛めたり、関節が外れたりはしている。
それを身体術で痛みを感じさせながら治すと、泣きが入っていた。
まあ、止めると言い出さなかったから、根性はあるほうだと思う。
身体術で自分を治療できるようになれば、継戦能力が劇的に向上すると伝えると、そこまでするのかと顔はひきつっていたが、やる気にはなっていた・・・と思われる。
ダミエンだけではなく、他の民間の軍事系ギフト持ちにも身体術の強化を勧めた。
ダミエンのように一からやり直す方向ではなく、ギフトで使っている能力を伸ばす方向だが。
斥候ギフト持ちのブライムには、身体術で気配を消す技法と、身体能力の引き上げと、五感の感知能力、特に視力と聴力の強化を目標として、訓練してもらうことにした。
純粋に斥候としての能力強化だ。
ブライムには他者の体で身体術を行使する方法については何も言っていなかったので、最初に言った時は「何を言っているんだ?」と怪訝な顔をされた。
一度やってみせると、未知の体験に驚いて、続けて訓練したいと言ってきた。
身体術で気配を消す技法は、斥候ギフトで使っている技術の延長だと、そこまで伸ばすことはできなかった。
一からやるのはあまり現実的ではない。
エルン村ではキリル兄さんが少し習得できたものの、他の誰も習得できる気配がなかったしな。
まあ、ギフトの能力の延長なら、それほど時間も手間もかけることなく、順調に成長させられるだろう。
諜報ギフト持ちのリュクには、身体能力の向上と、五感の感知能力強化、それと心肺能力と声帯の強化を目標として訓練してもらうことにした。
諜報員としての能力強化もあるが、それよりも吟遊詩人としての能力強化を重視した。
リュクも乗り気だったので、順調に進められるだろう。
第1回商隊で吟遊詩人として各国を回り、自信がついただろうし、楽しんでもいたようだからな。
聴覚の強化を音感に繋げる技術や身体能力強化を指先の動きの洗練に繋げる技術、心肺能力や声帯の強化を発声に繋げる技術、吟遊詩人としての演奏能力や歌唱能力に関わる強化は驚くほどスムーズに進んだ。
リュクは吟遊詩人としての才能を元々持っていたのかもしれないな。
身体術の訓練のついでに、第2回商隊への参加についても要請した。
ダミエンが渋るかなと思ったが、意外にすんなりと引き受けてくれた。
商隊の責任者という立場は、大変だったようだが充実もしていたらしい。
第2回商隊が出発する前に、身体術の訓練をある程度まで仕上げないとな。
ギフトの能力の延長で取り組んでいるブライムやリュクはともかく、一から取り組んでいるダミエンは形になるまでやっておいた方がいいだろう。
・・・ダミエンの訓練の強度を上げるか。
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