拘置所の中での考察、リスクマネジメント
拘置所の中で、俺は考えていた。
どうすれば、ジュリアン・ローゼルスタッドが下町で暴れ、被害を与えることを防げたか。
何かしらの行動を起こすことが分かっていたのだから、見張っておくべきだったか?
恨みのある俺に直接何かをしてくるものだと思い込んでいたから、何の備えもしていなかったな。
ジュリアン・ローゼルスタッドは、ローゼルスタッド侯爵家で持っている情報で俺が下町にたまに出かけていると知っていたとしても、どういった繋がりかを知っていたわけじゃないだろう。
単に、俺の知り合いというだけで、下町の人間を甚振って憂さ晴らしをしたかっただけだと思う。
そんな動機でそんなことをする馬鹿がいるとはなあ。
リスクマネジメントはある程度考えてきたつもりだった。
リスクを『リスクが顕在化する確率』と『リスクが顕在化した時の被害の大きさ』の掛け算で考える、定番のリスク管理手法で考えていた。
『リスクが顕在化する確率』と『リスクが顕在化した時の被害の大きさ』のどちらも大きければ、『リスク回避』、リスクの根本から消す、リスクが起こりそうな行動自体を止める、などの対応をする。
『リスクが顕在化する確率』が低く、『リスクが顕在化した時の被害の大きさ』が大きければ、『リスク移転』、有仁の世界なら保険に加入するなどの対応があった。
こちらでも通用する方法だと、リスクのある事業を外注するとかだろうか。
俺が魔獣退治などを引き受けるのは、商会側のリスク移転を受けていることになるか。
『リスクが顕在化する確率』が高く、『リスクが顕在化した時の被害の大きさ』が小さければ、『リスク低減』、俺・・・は例にならないが、一般的な兵士が魔獣退治に行くなどの場合、人数を増やす、装備を充実させる、などで危険を減らすだろう。
『リスクが顕在化する確率』と『リスクが顕在化した時の被害の大きさ』のどちらも小さければ、『リスク保有』、リスクのことをあまり考えず、起こった時は受け入れる。
俺は、ジュリアン・ローゼルスタッドのケースでは、『リスクが顕在化した時の被害の大きさ』が極小だと思って、『リスクが顕在化する確率』が高いが、『リスク保有』の対応でいいと思っていたんだよな。
商人や商会の護衛では盗賊が襲ってきたこともあったし、俺が護衛していなければ被害が大きかったかもしれない。
ジュリアン・ローゼルスタッドに専念していれば、そちらのリスクはどうなっていたか。
・・・やはり俺1人で何でも対処するには限界がある、ということだろうな。
つらつらと考えていると、裁判所からの呼び出しがあった。
俺は拘置所に入る時には外されていた手縄を再度つけられ、裁判所に向けて連れて行かれた。
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