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大力(嘘)で身を立てる  作者: ろん
第二部 王都進出

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『御前武試』2日目② 決勝戦、いろんな意味での終了と始まり

決勝戦。


『御前武試』の最後の試合だ。


相手はジュリアン・ローゼルスタッド。


ローゼルスタッド侯爵家の現当主の三男らしいが、ギフトに覚醒したことで、次期当主候補となっているそうだ。



俺は準決勝までと同じ格好で、運動場の中央まで歩いていく。


ジュリアン・ローゼルスタッドは・・・なんかキラキラ光っているな。


わざわざ決勝戦向けに着替えたのか?


薄手の金属鎧だが、装飾がゴテゴテとついている。



決勝戦だからか、始まる前に司会もそれまでより長口舌でこれまでの戦いを振り返って解説している。


その間、俺は対戦相手と向き合わずに、高台の国王や大貴族たちがいる高台の方を向くように指示されていたので、そのようにしている。


ジュリアン・ローゼルスタッドの解説が多いのは、司会も貴族でそちら寄りだからだろうな。



「おい。このローゼルスタッド侯爵家の次期当主が直々に相手してやることを光栄に思え」


ジュリアン・ローゼルスタッドの方から何か聞こえてきたな。


「我がローゼルスタッド侯爵家は建国以来の・・・」


「・・・にまでその力は及ぶ・・・」


いろいろごちゃごちゃと言っている。


もしかしたら、ローゼルスタッド侯爵家が南東辺境開拓地域に、そして俺にしたことを、こいつは何も知らないのか?


ただの平民のギフト持ちで、大貴族家の威光にひれ伏す相手だと思っているんだろうか。



自分の実力も勘違いしていそうだが、剣術の講義で俺に仕掛けてこないくらいの危機管理はできていた。


まあ、それを家の力で何とかしてこようというあたり、こいつもしっかりクズでよかったぜ。



隣から聞こえてくる戯言を全て聞き流し、司会の長広舌が終わって、ついに試合開始の時間が来た。


「大力ギフト、アルト」


「・・・ちっ、剣士ギフトに覚醒した、ジュリアン・ローゼルスタッド!


ローゼルスタッド侯爵家の誇りにかけて、参る!」



パン


カラカラ



ジュリアン・ローゼルスタッドの剣を弾き飛ばし、剣は離れた場所に転がっていった。


俺はこいつの剣が地面に落ちる前に、首元に剣を突き付けている。



「審判」


「・・・え?・・・あ・・・勝者、アルト!」


審判が状況を判断できなくなっていたので、軽く精神魔術をかけて、見た通りのことを宣言させた。



俺は剣を引いて鞘に収め、唖然としているジュリアン・ローゼルスタッドに背を向けて運動場を去ろうとする。


「ふ、ふざけるなあーーー!!」


ジュリアン・ローゼルスタッドが叫びながら、腰につけていた短剣を抜いた。


「あ?」


俺は半歩引いて首をそちらに向け、殺気を込めてジュリアン・ローゼルスタッドを睨んだ。


生命魔術と精神魔術もこっそりかけてある。


「あ・・・あ・・・あ・・・」


ジュリアン・ローゼルスタッドは、短剣を取り落とし、震えながら膝から崩れ落ちた。

そして・・・失禁した。



「係員!早く来てくれ!ジュリアン・ローゼルスタッドが、失禁した!

試合が決まった後に後ろから襲ってこようとしたから俺が睨んだら、ジュリアン・ローゼルスタッドが失禁したんだ!早く来てくれ!」


俺は風魔術で声を遠方まで届くようにした上で、身体術で声帯を強化して大声で叫んだ。

まあ、王都の内壁の内側だったらどこでも聞こえたんじゃないかな。



貴賓席にあたる観客席の高台の上も大騒ぎになっている。


そこから俺を血管が切れそうなくらいに青筋を立てて俺を睨んでいるおっさんは、おそらくローゼルスタッド侯爵家の当主だろうな。


俺はそちらを見ずに無視する。


何かの係員が来たが、どうすればいいか分からなかったらしく、その場にいた審判に質問しても答えが得られず、オロオロしている。


俺にも質問されたので、「とりあえず、隠して運んではどうですか?」と言うと、何度も頷いて仲間を呼びに行った。


係員は大きな布と担架を持って、4人で戻ってきて、布でジュリアン・ローゼルスタッドを包み、2人で担架に乗せて運んだ。


地面が湿っていたので、残った2人が足で砂を蹴ってそこに被せようと苦戦していた。




「此度の『御前武試』の優勝者は、大力ギフトのアルトである!


皆の者、大力ギフトのアルトを讃えよ!」


諸々が退場し終わった後で、形式通り国王が優勝者を讃える儀式が行われた。


心なしか、国王の顔が晴れ晴れしているようにも見える。


ローゼルスタッド侯爵家の恥に、少しはスッキリしたのだろう。


ローゼルスタッド侯爵家の当主は、騒ぎが収まる前に学校から出ていったようだ。



観客席は大いに盛り上がり、俺の名前を讃えている。

まあ、貴族の恥かきっぷりを見れて面白かったのだろう。


景気の良さそうな顔をした者も結構いる。

俺の優勝に賭けた人間は少ないかと思ったが、賭博の主催者によっては1日目が終了した後で受け付けた2日目の賭けも行われ、そちらで俺に賭けた者もいたようだ。




とりあえず、ローゼルスタッド侯爵家に1つ、やり返すことができた。


今日から、いろんなことが加速していくはずだ。


気を引き締めて、俺に打てる最善手を打っていくぞ。


この作品を読んでいただきありがとうございます!


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