グローフィル子爵との面会
エルン村に毎年来ていた王都の使者、グローフィル子爵とは、王都に来てからもやり取りしている。
大体は手紙でのやり取りだが、少し込み入った話をしたかったので、会って話そうと思い、アポを取ってから訪問した。
「ご無沙汰しています。グローフィル子爵」
「ああ、久しぶりだね。アルト。
・・・相変わらず丁寧だな」
グローフィル子爵が行間に『顔の割に』と入ってそうな挨拶を返してきた。
今までの手紙でもいろいろと知らせてはあるし、いろいろ知らせてもらっているが、王都に来てからの俺の動きや、グローフィル子爵の知る貴族界隈や耳に入った噂話などを、雑談しながら交換していく。
「さて、まだまだいろいろ話題はありそうだが、顔を合わせて話したいということは、何か重要な用事があってきたのだろう?」
グローフィル子爵が話を向けてくれたので、俺も要件を切り出す。
「ええ。以前にも話したことがありますが、国内の物流支援組織と、国をまたぐ国際的な行商組織、この2つについて、いろいろ話がまとまってきました。
そのどちらにも必要になってくるのが、人材です」
グローフィル子爵は少し考えて、俺の言いたいことに思い当たったようだ。
「なるほど。貴族家である程度の教育を受けた人材が望み、ということか。
アルトも知っての通り、と言うか、アルトには話したこともあったか。
当家のような領地を持たない都市貴族は、家職がある分には何とかやっていけるが、家職を継がない、継げない親族は肩身が狭いからな。
何かしら政府の職に就くことができればいいが、皆が就ける訳でもないし、政府務めが肌に合わぬ者もいる」
俺は頷いて同意する。
「正直なところ、仕事の枠を求めている者は多いだろう。面子もあって自分たちからは切り出しにくいだろうが・・・なるほど、そこでワシか」
「はい。グローフィル子爵に紹介してもらう形を取れば、依頼しやすいでしょうし、どちらかが理由で雇わないことになっても、間に入ってもらっていることで穏便に解決できるだろうと考えています」
「ふむ。ワシを利益を与える形で活用しようというのは、相変わらず歳の割に世を分かっておるな」
グローフィル子爵はニヤリと笑う。
グローフィル子爵と、条件についても詰めていった。
基本条件として俺が提示したのは、
・国内物流、国際行商のどちらでも、平民と対等に仕事ができること
・国内物流は腕っぷし重視であること
・国際行商は多様な人材を求めている代わりに、不確実性と危険も大きいこと、それを許容できること
国内物流についてはグローフィル子爵もイメージしやすいだろう。
人当たりの良さなども評価するが、基本的には荷運びに必要な腕力と、道中の盗賊や獣への対応が中心になる。
国際行商については、行商だけが目的ではなく、情報収集・拡散、現地の協力者を作ることなど、様々な目的・目標がある。
国外で活動するリスクを許容できるなら、人格に問題がなければ採用してもいいと考えている。
俺に紹介する、という時点で、問題のある人物は撥ねているだろう。
俺が有用であることは、グローフィル子爵に示してきたからな。
国際行商の方で既にスカウトしている者に、吟遊詩人としての修行をしてもらっている話をすると、グローフィル子爵は面白そうに聞いていた。
小さく始めるなら、国際行商のほうが早く形になるかもしれない。
国内物流は依頼者ありきのビジネスになるが、国際行商は自分たちで大部分が完結するビジネスになるからな。
グローフィル子爵から、すぐに思いつく人材を挙げてもらって、「こういう人間はどうか?」とやり取りをしている内に、結構な時間が経っていた。
紹介したい人材がいれば連絡するように頼んで、暇乞いした。
グローフィル子爵の屋敷を出たところで、エルン村から王都に来る時に一緒だったサンチェスとゴバロの2人と出会い、少し立ち話をして別れた。
サンチェスとゴバロなら即採用したいところだが、護衛を引き抜くのはさすがに無理だよな。
国内物流についても、国際行商についても、徐々に足元を固められつつある。
この調子で、早く形にしていきたいところだ。
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