魔獣討伐依頼③
村長の家に招かれ、もてなしを受けることになった。
特に宿泊施設はないので、村長の家に泊めてもらうことになるようだ。
ノバック商会の者が来た時も、いつもそうしているらしい。
そうした需要を見越して建てられたのか、村長宅は村の規模の割に大きかった。
門を開けた2人の内、中年男性の方は、村長の息子で次期村長とのことだった。
ちょっと頼りなさそうな印象を受ける。
食事を出してもらい、食べながら話していて、俺が12歳だと言うと次期村長は大声を上げて驚き、村長も口を開いて唖然としていた。
・・・もう大分と慣れてきたな、この対応。
コミル村の概要やノバック商会との付き合い、最近あったことなどを聞き、俺が辺境出身のギフト持ちであることや、ノバック商会と繋がるようになった経緯などを話している内に、次期村長とも、村長とも打ち解けてきた。
次期村長は俺が年少だと知って割とすぐに打ち解けてきたが、村長は俺を信じていいかを見定めるのに時間をかけていたようだった。
個人的には村長の対応の方が正しいと思うけどな。
次期村長はやはりちょっと頼りない気がする。
魔獣について、どうするかも決めた。
俺からは、
・魔獣を全て退治する
・魔獣をある程度減らして一部残す
・魔獣はそのままにする
の3つの選択肢を提示した。
魔獣を残す案は、魔獣の縄張りが残っていれば、それ自体が盗賊除けになるからだ。
そして、魔獣は盗賊よりも会敵した時の脅威は上だが、行動を読みやすい。
魔獣を全て退治すれば、魔獣の縄張りも盗賊の拠点にされる可能性もある。
魔獣の縄張りは、位置的にはコミル村だけでなく、それ以外の村へのアクセスもそれほど悪くない。
コミル村自体は魔獣の縄張りに含まれていない。
魔獣に対抗できる護衛をつけて道を通行できるなら、それもアリかもしれないと考えて選択肢を提示した。
次期村長はすぐに魔獣は全て退治するべきだと主張した。
村長はしばらく黙って考えた上で、やはり魔獣を全て退治することを選んだ。
話が決まったので、早速俺は魔獣退治に出かけることにした。
昼過ぎに俺が村に到着して、もう日も暮れる時間になっていたので、村長も次期村長も明日にすればどうかと止めてきた。
小型魔獣8頭程度、大した手間にもならない。
そう告げて、俺は村を出た。
手早く済ませたいのもあるが、頼りになるという印象付けの意味もある。
その印象は、俺と、ひいては俺を派遣したノバック商会への信用に繋がるだろう。
あまり急がず、歩いて夜道を進む。
この辺りはなかなか自然豊かで虫の音や獣の声も聞こえる。
それが、魔獣の縄張りに近づくと静かになっていく。
魔獣の縄張りと思われる領域に入り、しばらくすると、8頭の内、大きいサイズの3頭がこちらに向かってきているようだ。
そのまま魔獣が固まっていた棲み処の方へ歩き続けると、3頭の内2頭が左右に別れ、俺を3方向から挟み込もうという動きを見せた。
大森林なら、全力でまっすぐ俺の所に来そうだがな。
やはり、大森林の魔獣に比べて知恵があるように思える。
姿を見せ、俺から10mほどの距離まで寄って来た。
3頭とも全長2m程度の狼型の魔獣で、毛の色は黒。
大森林の魔獣と比べると、魔素の偏りが極端に小さい。
偏りが全くない人間ほどではないが、それに近いくらいだ。
魔素の偏りは瘴素に侵されている度合いと比例するから、ほとんど瘴素の影響がないんだろう。
俺は歩みを止めず、正面の魔獣に近づいていく。
魔獣は全く恐れていない俺を警戒しているようで、距離を詰めた分、下がっていく。
俺の斜め後方にいた2頭が俺に襲いかかり、時間差で前方の1頭も俺に跳びかかってきた。
後方の2頭は俺の足首あたりを、前方の1頭は俺の喉元を狙っている。
俺は後方の2頭の首を捕まえてへし折り、そのまま持ち上げて左右から前方の1頭に叩きつけた。
そして前方の1頭が地面に転がった所で首を踏み折る。
前方の1頭の横に後方の2頭を並べて置き、俺は残りの5頭のいる棲み処へと走った。
俺は棲み処に到着して、そしてとても驚かされることになった。
棲み処に残っていた魔獣は、全長2mの魔獣が2頭と、1mに満たない魔獣が3頭。
1mに満たない3頭は、魔獣の子どもだろう。
大森林では、生まれてから数分で成獣にまで成長していた。
魔獣が子どもである時期はその数分だけだと思っていた。
大森林と、それ以外では、ここまで違うのか・・・
そう言えば、エルン村長は、最初は「魔獣の子どもは『ほとんど』見たことがない」と言ってなかったかな?
俺が大森林で観察した結果を伝えると、エルン村長も「魔獣に子どもはいないのか」と納得していたけど、過去にちらっと見たことがあった魔獣の子どもの記憶を勘違いとして処理してしまったのかも知れないな。
5頭の魔獣に気付かれない内に、さっと近寄って5頭とも首の骨を折った。
子どもだろうが、成長すればまた被害が出る。
禍根を残すことはできないからな。
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