エルン村長夫妻への相談①
「エルン村長。ちょっといいですか?」
エルン村長一家と俺達兄妹でのいつもの夕食の後、エルン村長が一人でいるところに俺は声をかけた。
「なんだい?」
エルン村長は優しい目をして問い返してきた。
「エルン村長とアデリナさんに話したいことがあります。・・・僕のギフトの話です」
エルン村長は少し目を見張っただけですぐに落ち着き、「10分後に私の部屋においで」と告げて立ち去っていった。
うーん。率直に要件を切り出したほうが察してくれるかなと思ったんだけど、エルン村長はあまり驚いた様子もなかったな。
薄々何かあったと先に察せられていたかな?
とりあえず、話す順番と相手の出方を想定する準備をしてから、エルン村長の部屋に向かおうか。
コンコン
「アルトです」
エルン村長の部屋のドアをノックし、「どうぞ」の返答でドアを開ける。
エルン村長は椅子に座っていて、アデリナさんはお茶の用意をしていた。
「そこに座って」と勧められたエルン村長と対面の椅子に座る。
アデリナさんがお茶を配り、エルン村長の隣に座る。
「さて、アルトのギフトの話だったね」
一呼吸程度の間の後、エルン村長が切り出した。
「はい。大力というギフトに覚醒しました」
「大力? それは初めて聞くギフトだね。そのギフトの話を私は今まで聞いたことがないし、ウチにあるギフト一覧にも載っていなかったと思う」
エルン村長はそう言いながらアデリナさんを見ると、アデリナさんは首を横に振りながら、「私も初めて聞くギフトね」と答えた。
「大力ギフトの内容についてですが、1つ目は剛力ギフトのように身体術で強化できることです。ただ、限界なく強化できそうなことと、自然に制御できるわけでなく訓練が必要になりそうです」
「ふむ」とエルン村長は頷きながら、特にコメントせず先を促した。
「2つ目は魔素の動きをある程度把握できることです。3つ目はものごとの考え方が思い浮かぶようになり、考える力も強化されたと思います」
「ふーむ」と先ほどより深く頷きながら、エルン村長は俺の伝えたことについて考えをめぐらしているようだ。アデリナさんも同様に考え込んでいる。
少し間を置いて、納得のいった表情になったエルン村長が語りだした。
「3つ目の考え方、考える力の強化はとても腑に落ちる話だね。今のアルトの説明も5歳児の話だとはとても思えないし、最近話を聞く時や何かを観察している時の表情や目が、ものごとを深く理解しようとしているものだったから気になっていたんだ。ギフトに覚醒したのは1ヶ月ほど前のことかな?」
うわーバレバレですか・・・
絶対に隠さないといけないと考えていたのは俺の真のギフトだけで、それ以外はバレても問題ないとは思っていたけれど、そこまでバレてはいないと思っていた。
この人たちを甘く見ていたかな?
「はい。まさにその通りで、1ヶ月くらい前にギフトに覚醒しました。よく分かりましたね?」
「まだ1年だけど、家族として君たち兄妹を見てきたんだ。それくらい分かるよ」
エルン村長が微笑みながら答えた。
「はっきりと察していたのは私とエルン、それとキリルくらいかしらね」
アデリナさんがそう補足した。
うーん。キリル兄さんもか。
努力家ですごいと思っていたけど、それだけじゃなくてよく人を見ているんだな。
まだ11歳なのに大した人だ。
「2つ目の魔素の動きを把握できるという能力は、どれくらいのものなのかな?ギフト持ちならある程度把握できるものだし、ギフト持ちでなくても身体術や魔術を扱えるようになった者も把握できるようになる。逆に言うと把握できないと身体術や魔術を扱えないということでもあるけれどね」
エルン村長が問いかけてきた。
「魔術や身体術を使っているところを見て、こういうことができるようになりましたよ」
人差し指を立てて、火を灯してみせる。
そして火の形を涙状からリング状に変えてみせる。
最初に人を灯した時は二人とも感心した様子だったが、リング状に変えた時には特にアデリナさんが驚いたようだ。
「誰かが魔術を使っているところを見るだけで模倣できたのね?そして模倣するだけでなく改良もできると・・・」
「はい。魔術をいろいろ見せてもらえれば、それらを使えるようになると思います。それにどこまでできるかはまだ分かりませんが魔術の構成を変更して応用もできそうです」
「それはすごいことだわ!この村に魔術の使い手が増えるだけじゃなくて、新しい魔術が増えていくのね!」
エルン村にとって有意義な能力だと見てもらえるのは幸いだ。
アデリナさんの喜びようから、日頃の負荷が結構高いのかなと思える。
俺に手伝えることは手伝っていこう。
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