ー国王とフェルネスの約束ー (本編、巨大魔獣が現れるちょっと前の話)
フェルネスの暗躍というか、何というか・・・
フェルネスはアストリア王国を訪問した時、国王に呼ばれた
「お久しぶりでございます。国王陛下」
「よく来てくれた、フェルネス王子。実はそなたの力を借りたいのだ。相談に乗ってくれるか?」
「私でお力になれるのでしたら、喜んで」
フェルネスは敬礼をする
アストリア国王は人払いをし、指を鳴らして光の膜を作った
「座ってくれ。実は、ダストスの事だ」
「王太子殿下ですか?」
フェルネスは怪訝な顔をした。
「あれは、私の亡き王妃との間に生まれたたった1人の息子だが・・・」
しばらくの沈黙の後、静かに話はじめた
「たった1人の私の子供であるから王太子にはしているが、魔力がなさすぎる。」
「それに考えや行動があまりに浅はかすぎる。王位を継がせるにはあまりに頼りない。」
「成長を期待してきたが、これ以上は望めそうにない。」
フェルネスは無言のまま聞いていた
「いざとなればエリアスを養子にと思っていたが・・・」
国王が遠い目をする・・・
フェルネスも下を向いた
「それでだ。カイレスを養子にして、時期が来たら王太子としたい。前に本人に出生の秘密を打ち明け、養子になってくれないか?と打診したが、断られた」
「なるほど・・・・」
フェルネスは帝国の舞踏会の時、カイレスがクラリスに熱い視線を送っていた事を感知していた。
「もしかしたら、お役に立てるかもしれません。私から話してみましょう」
「おお、引き受けてくれるか?ありがたい」
「ただし、条件があります。もしこの話をカイレスが承諾し、カイレスが自分から『王太子になる』と志願したならば、その場で承諾してください。
そうしないと、あれは、後から『そんな事言ったか?』とか言いそうです」
「わかった。そうしよう」
「それと、カイレスが望む結婚相手を受け入れてもらいたい」
「まあ、相手にもよるが・・・よかろう」
「では、カイレスと話してみます。」
「別室に待たせている。よろしく頼む」
国王が再び指を鳴らすと、光の膜は静かに消えた。
国王はベルを鳴らし、侍従を呼び出す
「フェルネス王子をカイレス公子がいる部屋に案内してくれ」
侍従に案内された部屋に行くとカイレスが1人居心地悪そうに座って待っていた
「待たせてしまったようだな。国王陛下と先に話しをしていた」
フェルネスの顔を見るとカイレスは満面の笑顔になった
「叔父上!久しぶりでございます。」
「背が伸びたな・・・王族の血であるな・・・」
カイレスが少しムッとした顔をしたが、すぐに普通の表情にもどる
その「ムッ」とした一瞬に、彼の亡き母親の面影が重なった
フェルネスは静かに口を開いた
「単刀直入に言おう。そなた、帝国のクラリス皇女殿下に惹かれていたであろう?」
「えっ?」
ずばりと指摘され、カイレスは顔が赤くなる
「クラリス皇女とそなたはいとこ同士。血筋的には結婚が可能だが・・・
皇帝陛下は皇女さまを目に入れても痛くないほどかわいがっておられる。
よほどでないと、皇女を嫁には出さない。さらに公爵家ではつり合いがとれない」
「わかっております・・・・。だからあきらめようと・・」
「本当にそれでいいのか?王族になれば、手が届くかもしれぬぞ」
「しかし、王太子ならとにかく、第二王子では・・・」
「王太子になればよい。今の王太子に対しては国王陛下も見限っておられるようだ。
必ずそなたが王太子になれるチャンスはめぐってくる」
「そうでしょうか?」
「必ずそうなる。私もずっと皇帝陛下にお仕えしてきてクラリス皇女さまのご成長を間近で見てきた。
私はそなたとクラリス皇女をいっしょにさせたい」
「叔父上??いったいなぜ?」
「そなたにその気がなければ、もう何も言うまい。後は自分で判断しなさい。
国王陛下はそなたに養子になってほしいと望まれている。
この機会を生かすか逃すかはそなた次第だ。
私は自分のかわいい甥が最高の伴侶を得てくれたらうれしいのだ」
「帝国にいる妹のターシャも喜んでくれるでしょうか?」
フェルネスは
(国王に口止めされているから事実は話せないが、もっと間近で会えば気が付くであろう)と思う
「もちろんだ。兄の幸せは妹であるターシャの幸せでもあるぞ」
「ターシャの事は何も話してくれませんね。叔父上。」
「私はずっと皇帝陛下付きだったので、ターシャの事は詳しくはわからない。
そなたももうターシャの事は忘れるがいい。」
あれだけターシャの事をかわいがっていた叔父の言葉にカイレスは面喰う
「ターシャと血の繋がりがないと知った時、私は真剣にターシャとの結婚を考えました。
しかし、ターシャは皇帝の身内に引き取られたとしか聞かされていません。
それ以来会うこともかなわず・・・気にはなるのですが」
「それは身内としての情であろう。今は配偶者の話をしているのだ。
皇女様の方がそなたにふさわしいと思うぞ。」
「そうでしょうか・・・」
「まあ、好きにするがいい。私は伝えたい事は伝えた。
後はそなた自身でよく考えなさい。では話は済んだので帰る。
また会おう」
フェルネスは帰路についた
それからしばらくして――
カイレスがアストリア国王の養子となったことが、国内に伝えられた。
本編35話で、国王があっさりと元の王太子を見限るのはフェルネスとこういう密約があったからです。
フェルネスがなぜ2人をくっつけたようとしたかは本編にあります
「亡き姉命」発動です




