皇帝の執務室にて 本編「成人の舞踏会」のすぐ後のお話
ちょっとほっこりするお話
「またか……」
皇帝は封書を開け、中身を一瞥すると、そのままポイとゴミ箱へ放り込んだ。
「陛下、困ります。これはキャンドール王国からの正式な書類です。お返事を書かねばなりません」
エルモンドはため息をつきながら、ゴミ箱から書類を拾い上げた。
「断る! と下に書いて、そのまま送り返せ!」
エルモンドは「やれやれ」という顔をすると、近くにいた侍従に書類を渡した。
「いつものように頼む」
「かしこまりました」
侍従は書類を受け取ると、静かに部屋を出ていった。
「何通目だ、まったく……」
皇帝は指先で机の上をトントンと叩く。
「国内の領主をはじめ、大陸から離れた島国からも届いております。そろそろ真剣に検討を始めても、早すぎるということはないかと」
「まだ早い! クラリスは十六歳になったばかりだぞ!」
「目星くらいはつけてもよろしいのでは……」
「あと数年後でよい! シャローヌも二十歳を過ぎてから嫁いできたではないか。それでも立派に二児をもうけた!」
「皇太子殿下は十八歳でしたが……」
「うるさい! この話は終わりだ!」
数か月前――
10年以上にわたって続いていた城の大広間の修繕がようやく終わった。
その完成祝いと、クラリス皇女の成人の祝いを兼ねて、大陸中の国々から来賓を招いた大規模な舞踏会が開かれた。
その夜のクラリス皇女の姿といったら――
まだ幼さを残しながらも、目を奪うほどの美しさだった。
会場にいた者たちは、誰もが息をのんだ。
そしてその夜を境に、「結婚の申し出」の書類が次々と届くようになってしまったのである。
王族からの申し込みならまだ理解できる。
だがなぜか、各国の大領地の領主からまで申し込みが相次ぎ、皇帝の不機嫌は日に日に増していった。
(フェルネス殿がいてくれたら、うまくなだめてもらえたのに……)
エルモンドは心の中でため息をついた。
お披露目の舞踏会には、帰国していたフェルネスも出席していた。
第二王子の正装をまとい、エルドリア王太子である兄と並んでいた姿は実に見事だった。
そしてクラリスは、最初のダンスの相手にフェルネスを指名した。
――あれは、本当に美しい光景だった。
それこそ、フェルネス殿が他人であればよかったのに……と、エルモンドは思う。
「陛下。クラリスもそういう年頃なのです」
皇后が幼い皇子を連れて部屋に入ってきた。
「私も、陛下のもとへは十七の時に嫁いでまいりましたわ」
「クラリス姉上、お嫁に行っちゃうの?」
皇子が不安そうに尋ねる。
「行かない。行かせない。前から言っておるであろう。国外には出さぬ」
皇帝がぶっきらぼうに答えた。
皇子は父の顔を見上げて言った。
「父上の顔、怖いです」
「だったら、そろそろ相手探しを始めませんと。皇太子妃を探すのにも、だいぶ苦労しましたわよね。クラリスのおかげで、とてもよい相手が見つかりましたけれど」
「男と女では事情が違う。男の方が魔力の強い者が多い。女性で魔力量が多い者はそう多くないのだ。最低条件は、クラリスより魔力が多いことと、背が高いことだ」
「そんな方、いらっしゃいますかしら……。同量か、少し少ないくらいで妥協なさっては?」
「それなら、だいぶ候補が絞れますね」
エルモンドが言った。
皇帝は腕を組んで唸る。
「こんなに早く年頃になるとは……。レオンハルトを待たせればよかったかもしれん……」
「陛下!」
皇后が声を上げた。
「レオンハルトにはすでにシャローヌとの間に二人も子供がいるのですよ! 何をおっしゃるのです!」
「シャローヌは元々身分が低い。第二夫人にして、クラリスを第一夫人にすれば――」
「そんなの本人たちが了承するわけありませんでしょう! 兄妹で結婚なんて、私も許しません!」
皇后の目がつり上がる。
「皇太子が実の妹と結婚など、体裁が悪すぎます。冗談でもおやめください」
エルモンドもすかさず口を挟んだ。
「実の娘ではなく、姪だったと言えばよい!」
「今さら遅いです!」
皇后とエルモンドが同時に叫んだ。
皇子が不思議そうな顔をする。
「めいって、なんですか?」
皇后は軽く咳払いをした。
「なんでもありませんよ。皇帝陛下の機嫌が悪いと侍従がこぼしていたので、様子を見に来ただけです。
まさか、そういうお話だったとは。納得いたしました」
そして皇帝をまっすぐ見て言った。
「クラリスにはクラリスの人生があります。
いつまでも縛り付けようとなさるのはおやめください。
あのフェルネスですら、最初の約束通り離れていったではありませんか」
その時、皇子が突然姿勢を正した。
何かを決意したような顔で言う。
「兄上と姉上は結婚できるのですか?」
「う、うむ……まあな。いろいろ条件はあるが」
「だったら――」
皇子は胸を張った。
「僕が姉上と結婚します。
僕が大人になるまで姉上に待ってもらってください。
僕は絶対、姉上を幸せにします」
三人は顔を見合わせた。
そして同時に口を開く。
「却下だ」
「だめです」
「無理です」
皇子は目をぱちぱちさせた。
「どうしてですか?」
皇帝が真顔で言った。
「そなたが大人になるまで待っていたら、クラリスの婚期が遅れる」
皇后が続ける。
「それに、そなたはまだ字の練習も終わっておりません」
エルモンドがとどめを刺した。
「まずは宿題をきちんと終わらせてからにしましょう」
皇子は肩を落とした。
「だめです」
三人に一斉に否定され、皇子はしょんぼりとうつむいた。
「……だめですかあ」
「だめです」
三人の声がきっぱりと重なる。
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皇子は少し考え込んだあと、ぽつりと言った。
「じゃあ……僕がだめなら」
三人が首をかしげる。
皇子は真剣な顔で続けた。
「フェルネスにお願いすればいいですね」
その瞬間――
部屋の空気が凍りついた。
エルモンドがそっと視線をそらす。
皇后は思わず口元を押さえた。
そして皇帝は――
机を叩いて立ち上がった。
「だめだ!! それだけは絶対にだめだ!!」「どうしてですか?」
皇子が不思議そうに首をかしげる。
皇帝は答えられず、しばらく口をぱくぱくさせていたが、やがて顔を真っ赤にして叫んだ。
「と、とにかく! フェルネスはだめだ!!」
エルモンドは小さくため息をついた。
(……陛下。それはむしろ、一番ありそうな相手なのでは)
もちろん、その言葉は胸の内にしまったままだった。
――その頃。
エルドリアで仕事をしていたフェルネスが、突然くしゃみをした。
「……?」
首をかしげながら、もう一度くしゃみをする。
「……誰か、ろくでもないことを考えている気がする」
そうつぶやくと、フェルネスは、何事もなかったかのように仕事を続けた
もちろん――
その理由を知る者は、まだ誰もいない。
皇帝の怒鳴り声が執務室に響き渡っていた、その時だった。
コンコン。
扉がノックされる。
「入れ」
扉が開き、侍女とともにクラリスが顔を出した。
「お父様、先ほどからとても賑やかですが……何のお話をなさっているのですか?」
室内が一瞬で静まり返る。
皇帝は咳払いをした。
「な、なんでもない」
皇子が元気よく言った。
「姉上の結婚の話です!」
皇帝
皇后
エルモンド
三人の動きが同時に止まった。
クラリスは少し驚いた顔をしたあと、くすりと笑った。
「まあ」
そして穏やかな声で言う。
「それでしたら、ご心配には及びません」
皇帝が身を乗り出す。
「どういう意味だ?」
クラリスは小首をかしげた。
「お父様が納得される方が現れるとは、とても思えませんもの」
エルモンドは思わず吹き出しそうになるのを必死でこらえた。
皇帝はしばらく黙り込んだあと——
ぽつりと言った。
「……確かに」
その日届いた求婚の書類は、
やはりすべて断りの返事が出された。
途中横線があるのは、横線の下の部分がチャットGTPの完全創作だからです
私の元の文章では「ダメですかあ?」「ダメです!」と3人に同時却下された部分で終わっていたのですが
「この文章を足しましょう」
とチャットGTPが足したという・・・
フェルネスの描写が設定と少々違っていたのでそこは私が修正しましたが、私のアイデアではないので、横線を入れて、あえて区別しました
あらすじだけでもチャットGTPが全部文章作ってしまいそう・・・うわあ・・・・
びっくりな回でした。




