皇帝と皇太子の失敗 (本編とは全く関係ない話。クラリスが10歳頃の話)
一番最初に書いた番外編です
まだ本編を書いている途中でした。
どこに入れるか迷いました
フェルネスが皇帝陛下に呼ばれ私室へ入ると、皇太子も席についていた。
「今日は無礼講だ。さあ、飲もう」
テーブルの上には酒と料理が所狭しと並べられている。
「フェルネスはどの酒が好きだ?」
皇帝にそう聞かれ、フェルネスは少し困った顔をした。
「実は……飲んだことがありません」
「うそを申せ! そなたが飲めぬなどあるまい」
「いえ、本当に飲んだことがないのです」
「一杯ぐらいは大丈夫であろう? 遠慮するな。これは秘蔵の、我が国最高の酒であるぞ。一口だけでも飲んでみよ」
フェルネスは皇太子に杯を渡され、しぶしぶ口に含んだ。
「……美味しいです」
そう言うと、フェルネスはそのままこくこくと飲み干してしまった。
「やはりいける口ではないか! さあ、もっと飲め!」
数杯飲んだ後もフェルネスの顔色はまったく変わらなかった。
だが突然、目が据わり、急にしゃべり出した。
「あねうえ~~……姉上、なんで亡くなられたのですか~~」
そして突然泣き出す。
ろれつは完全に回っていない。
「部下をかばって自分が毒を浴びて……どれだけドジなんですか~~。粗忽すぎます~~。だけど、それが姉上ですよね……姉上~~」
皇帝と皇太子は目を合わせた。
――なぜこうなった?
二人の目がそう語り合っている。
それからしばらく、延々と「姉上」の話が続いた。
二人がすっかり困り果てたころ、フェルネスの首ががくんと落ち、そのまま椅子から転げ落ちた。
「誰か! 誰か来てくれ! フェルネスが倒れた!」
慌てふためく二人。
メイドや侍従たちが部屋に飛び込んでくる。
「とにかく部屋へ運べ。医師を呼べ!」
護衛たちに抱えられ、フェルネスは部屋へ運ばれていった。
しばらくして到着した医師は言った。
「ただの酔っぱらいですね。あまりお酒に慣れておられなかったのでしょう」
ジュリアンヌが駆けつけ、必死に看病する。
その晩、皇后陛下からたっぷりと説教を受ける皇帝と皇太子の姿を、エルモンドはしっかりと見せられたのであった。
翌日、皇帝から「フェルネスを見舞ってほしい」と連絡を受けたクラリスが、マリアとともに部屋へ駆けつけた。
フェルネスは真っ青な顔をしており、ひどく気分が悪そうだった。
そんな姿を見るのは初めてで、クラリスは仰天する。
「いったいどうなされたのですか? お医者さまは何と?」
「いえ……たいしたことではありませぬ。ご心配には――」
そう言いながら、フェルネスは側にあった桶に嘔吐してしまった。
クラリスの顔はさらに青くなる。
「叔父様、叔父様! 叔父様に何かあったら私……」
涙目になり、必死にフェルネスの背をさする。
吐き続けるフェルネス。
ようやく吐き終え、ぐったりとベッドに仰向けになる。
口元を袖でぬぐい、
「本当に大丈夫ですから……」
とつぶやくが、
「お顔の色が普通ではありません!」
マリアも心配そうに二人の様子を見守っている。
フェルネスは頭を押さえながら、
「本当に……大丈夫ですから……」
とかすれた声で言った。
クラリスは枕元の洗面器の水にハンカチを浸し、フェルネスの額に当てた。
「大丈夫ではございませぬ! なぜこのようになるまで……」
フェルネスは痛む頭を押さえながら思う。
(昔、姉上にこうして看病してもらったな……)
姉の顔とクラリスの顔が重なり、懐かしい思いに包まれる。
しかし――
クラリスが声を上げて泣き出してしまった。
(あ、頭に響く……)
再び吐き気が襲ってくる。
そこへエルモンドが侍医を連れてやってきた。
「何事ですか? クラリス様、いったい……」
クラリスは侍医に取りすがった。
「お願いです、どうかフェルネスを助けてくださいませ」
侍医は一つ咳払いをしてから告げた。
「ただの二日酔いでございます。明日になればよくなるでしょう」
「ふつかよい?? それはどのような病気なのでございますか?」
エルモンドから「二日酔い」の説明を受け、クラリスはほっとする。
「それでは明日になればよくなるのですね」
そう安心しつつ、
「しかし、あのフェルネスがこんな姿になるとは……お酒とは恐ろしいものですね。私は成人しても口にしたくなくなりました。フェルネス、騒いでごめんなさい。どうかゆっくり休んでくださいませ」
クラリスはマリアを伴い、部屋を出ていった。
後にマリアからその時の様子を聞き、
「なんで酔わせて二日酔いにさせた上、わざわざクラリスを見舞いに行かせるのですか!!」
皇帝は皇后から再びこってり絞られたのであった。
私、鶴見日向子は、過去飲酒大好き、ぐいぐい飲んでいましたが、現在病気療養中のため、一滴も飲めません
フェルネスを道連れにして「飲めない人」設定にさせていただきました
ごめんね~~(苦笑)
私は二日酔いの経験はないのですが、過去に見聞きした二日酔いの話を参考にさせていただきました
みなさま、お酒はほどほどに
本当に飲めない人に無理やり飲ませると命にかかわるので、ご注意を!




