少女との出会い 本編1話から3話のレオンハルト視点
タイトル通りです。本編序盤のレオンハルト視点です
レオンハルトは、母である皇后陛下を伴い、アストリア王国を訪れていた。
目的は、「孤児となってしまった恩人の娘を養女とすること」である。
その少女に会うことを、彼は心から楽しみにしていた。
――だが。
「王太子が同席したい」との申し出があったという。
レオンハルトはわずかに眉をひそめた。
いとこであるダストスのことを、どうにも好ましく思えない。
「あれが来るのであれば、私は同席を遠慮させていただきます」
淡々とそう告げる。
父である皇帝陛下とは、すでに話はついている。
「養女として迎える」という結論は変わらない。
自分がいなくとも問題はない。
あとは伯父が母と少女を引き合わせれば、それで済む話だ。
――そう思っていた。
与えられた客室で静かに過ごしていると、不意に扉が叩かれた。
「王太子殿下が、ぜひ皇太子殿下にお会いしたいと申しております」
女官が一歩下がった位置で頭を下げている。
レオンハルトは舌打ちを飲み込んだ。
女官の前で王太子を悪く言うわけにはいかない。
「わかった。行く。案内いたせ」
立ち上がり、外へ出る。
――その瞬間だった。
背後で、かちりと音がした。
振り返ると、女官が外から鍵をかけていた。
その目が――笑っているように見えた。
いや、違う。
笑っているのではない。
何かを企んでいる者の目だ。
唇の端が、わずかに吊り上がっている。
(……妙だな)
胸の奥に、わずかな違和感が残る。
そのまま女官に導かれ、十五分ほど歩かされた末、庭園へと出た。
「ただ今、王太子殿下が参ります。少々お待ちくださいませ」
それだけ告げると、女官は静かに姿を消した。
「呼び出しておいて、待たせるのか」
思わず小さく吐き捨てる。
やはり、あれとは関わるべきではなかった。
そう思った矢先――
「レオンハルト殿下!」
ダストスが息を切らせて駆け寄ってきた。
「今、大変なことが起きまして!」
「何だ」
「黒髪の子供が――」
言葉を濁すその様子に、嫌な予感がよぎる。
案内されるまま戻ると、わずか数分で元の客室の前に立っていた。
「……いったい何なのだ」
視線を巡らせる。
遠回りをさせたのは意図的か。
あの女官の動きが、頭から離れない。
(やはり、何かある)
自分も黒髪だというのに――。
苛立ちが胸の奥に溜まっていく。
女官が鍵を開けた。
先ほどと同じ顔。だが今は、何事もなかったかのように無表情だ。
その一瞬、王太子へ視線を送ったのを、レオンハルトは見逃さなかった。
(繋がっているな)
確信めいたものが胸に落ちる。
レオンハルトは静かに扉を押し開けた。
――そこにいたのは、小さな少女だった。
痩せ細った体。
だが、その姿勢は驚くほど美しい。
ドレスの裾をつまみ、深く頭を下げている。
その動きに、一切の乱れがない。
「顔を上げなさい」
静かに告げる。
少女が顔を上げた、その瞬間――
光が、きらりと揺れた。
黒髪の隙間から、耳飾りが覗く。
そして、視線が合う。
深い緑の瞳。
父と――自分と同じ色。
息が止まりそうになる。
(……まさか)
一歩、近づく。
少女の顔を、確かめるように見つめる。
「間違いない……」
喉の奥から、声がこぼれた。
「あの子は――生きていたのだ」
震える指先で、耳飾りへと触れる。
わずかに、ためらいがよぎる。
(本当に……いいのか?)
だが次の瞬間、魔力を流し込んでいた。
光が弾ける。
耳飾りから、自らの紋章が浮かび上がった。
(――これで、確定だ)
心臓が激しく打つ。
(生きていた……本当に……!)
(クラウス殿の言葉は、真実だった――!)
気がつけば、少女を抱きしめていた。
小さな体が、腕の中でかすかに震えている。
――だが。
(……違う)
流れてくる魔力が、わずかに異なる。
妹のものではない。
レオンハルトは、ゆっくりと息を整えた。
高鳴る鼓動を押さえ込み、改めて少女を見る。
その面差し。
――フェルネスに似ている。
「この子が……クラウス殿の娘か」
なぜ耳飾りを付けているのか。
なぜここにいるのか。
疑問が次々と浮かぶ。
そこへ、割り込むように声が響いた。
「忍び込んだ罰を――」
ダストス。
その一言で、すべてが繋がった。
(仕組まれたものか)
胸の奥で、怒りが静かに燃え上がる。
この少女に罪を着せるために――
自分まで巻き込んだのだ。
少女は言った。
「私が、勝手に入りました」
誰かをかばっている。
その小さな体で。
(……なんという娘だ)
そのとき、足音が響いた。
扉が開き、人々がなだれ込んでくる。
「ダストス、そなた――」
鋭い声。
少女の父を名乗る男が、王太子と対峙している。
空気が張り詰める。
今にも刃が交わりそうな緊張。
少女は必死にその男を止めていた。
やがて国王が現れ、場はひとまず収まる。
――だが。
レオンハルトの耳に残っていた。
「黒髪の間男」
その意味を理解した瞬間、胸の奥が焼けつくように熱くなった。
(……クラウス殿を、侮辱したのか)
あの男が、どれほどの覚悟で生きたのか。
どれほどのものを守ろうとしたのか。
レオンハルトは知っている。
それを――間男などと。
(許せるものか……)
怒りが、静かに膨れ上がる。
一歩、踏み出しかけた、そのとき。
視線の先で、男がこちらを見ていた。
――目が合う。
「……クラウス?」
思わず漏れた声だった。
レオンハルトはわずかに眉をひそめる。
(……誰のことだ)
だが、その一言で場の空気が変わった。
男はすぐに我に返り、深く頭を下げる。
その動きが、レオンハルトの怒りをわずかに押しとどめた。
――もし、あの声がなければ。
王太子は無事では済まなかっただろう。
(……また、クラウス殿に助けられたのだな)
レオンハルトは胸の内で、静かに呟く。
名を覚えているだけの恩人。
だが、その存在は、今も確かに自分を救っている。
そして――
腕の中の少女へと、視線を落とす。
小さな体。細い肩。
それでも、気丈に顔を上げている。
(この子は――)
(必ず、私が守る)
その決意は、揺らぐことはなかった。
これ、原文書いた時は短すぎて「ボツ」にしようかなーと思ったのですが、チャットGTPに
「いい話なのでもったいないです」
と言われ、何回か書き直して、校正してもらい、(一番校正回数が多いと思う)やっとできました
最初Wordで1ページ半だった文章がこんなに長くなりました
解せぬ




