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皇女の帰還―約束の耳飾り― 番外編集  作者: 鶴見 日向子


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26/27

外れない耳飾り (ターシャ1歳半ぐらい、外伝と本編の間の話)

耳飾りのお話です

ターシャはすくすくと成長し、よちよち歩きができるようになっていた。


六歳になったカイレスは、


「こっち、こっち」


とターシャを呼び、自分の方へ引き寄せて遊んでいた。


ある日、ロザーリアの私室で、ロザーリアと侍女、カイレスとターシャは、いつものように過ごしていた。


その時、ロザーリアに急な呼び出しがかかる。


国王陛下からだった。


おそらく魔獣討伐の依頼だろう。


それは、もはや皆にとって見慣れた光景だった。


侍女達は、


「何も育児中の方を引っ張り出さなくても……」


と密かに話していた。


残された三人が部屋を出ようとした時だった。


ターシャがいつの間にか飾り棚によじ登っていた。


「危ないです!」


侍女が慌ててターシャを棚から引き離そうとするが、ターシャは取っ手を強く握りしめ、離そうとしない。


そして、一生懸命何かを指差していた。


カイレスが近寄って言う。


「中に入っている何かが気になっているように見える」


ターシャが指差す先には、フェルネスがレオンハルトから預かった耳飾りが、大切にしまわれていた。


「ここは開けてはなりません。ターシャ様、手をお離しくださいませ」


侍女が言い聞かせるが、ターシャは決して離そうとせず、とうとう泣き出してしまった。


「ダメだよ、ターシャ。離しなさい」


カイレスも必死に呼びかける。


「イヤー!!!!」


その叫びと共に、飾り棚の扉が吹き飛んだ。


さらに、中に入っていた耳飾りの箱まで飛び出し、中身が床に転がる。


「まあ、何てことでしょう!」


破壊音に驚いた他の侍女や召使達が駆けつけた。


「すぐに片付けを!」


慌てて破片を集め始める。


「お怪我はありませんか?」


侍女がターシャとカイレスに声をかけた。


「僕は大丈夫。ターシャは?」


侍女がターシャの全身を確認しようと、床に立たせたその瞬間だった。


ターシャは侍女の手をすり抜けるように耳飾りへ向かう。


そして、床に落ちていた耳飾りを拾い上げた。


その耳飾りは、吸い寄せられるようにターシャの耳に張り付いた。


もう片方も拾い上げると、同じように耳に張り付く。


「何が起こったの?」


そこにいた全員が、あっけに取られてしまった。


数日後。


帰宅したロザーリアは、その話を聞いて真っ青になった。


「あれは、ある国の亡き姫君様の形見だと聞いています。すぐに外さなければ」


しかし、何をどうしても耳飾りは外れなかった。


休暇でフェルネスがアストリアから帰って来た時、ロザーリアは必死に訴えた。


「えっ? あの耳飾りがですか?」


フェルネスの顔も真っ青になる。


アストリア国王陛下からの預かり物であり、慎重を期して保管していたはずだった。


「なぜそうなったのだ?」


フェルネスが頭を抱える。


ロザーリアとフェルネスが様々な方法を試したが、耳飾りはターシャの小さな耳たぶに張り付いたままだった。


試しに魔力を流してみても、耳飾りはそれを拒むように弾き返してしまう。


「国王陛下に事情を説明し、お許しをいただいてくる……」


フェルネスはうなだれ、そのままアストリアへ戻っていった。


フェルネスから話を聞いた国王は、ふっと笑った。


「あの耳飾りか。ほう、そなたの姪が自ら付けたとは」


「本当に申し訳ありません。何とお詫びをしたらよいのか……」


フェルネスは跪き、ひたすら謝罪する。


「よい。そなたに預けたのは私だ。耳飾りが自ら『主』を選んだのかもしれぬ」


国王は遠くを見るような目をした。


「そのまま付けておきなさい。グランディル帝国が落ち着いたら、甥に外してもらうとよい。元々は、そなたが託された物だ」


フェルネスは国王の寛大さに深く感謝した。


フェルネスが退室した後、国王は窓の外を眺めながらつぶやく。


「やはり、クラウスはグランディル帝国の……」


しばらく沈黙した後、再び口を開いた。


「クラウス……本当に惜しい人物を亡くした……」


その頃、エルドリアではフェルネスが戻り、国王の言葉を伝えていた。


「国王陛下がお許しくださってよかったわ……だけど、本当に困った娘」


ロザーリアは溜息をつく。


当のターシャは何事もなかったかのように、いつも通りだった。


「まあ、透明で目立ちませんし、害があるわけでもなさそうです」


フェルネスはターシャの様子を見て、ほっとしたように言った。


「しかし、あの飾り棚の扉を吹き飛ばすとは……」


フェルネスは呆れたように言う。


あの棚は耳飾りを保管するためだけに作られた特別製で、さらに厳重な保管魔法が施されていたのだ。


「末恐ろしいな」


複雑な表情でターシャを見つめるフェルネスに、本人は何も知らぬ顔で無邪気な笑みを向ける。


そして、耳飾りの存在はいつしか皆の記憶から薄れていった。


だが、その耳飾りが再び光を放つ時、ターシャの運命だけでなく、皆の運命をも動かすことになる。


その時は、まだ誰も知らなかった。


「いつの間にか付いていました」と本編でターシャはいいますが・・・・

「自分で保管庫を破壊して付けた」という真実


覚えているはずないですね(笑)

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