レオンハルトの特訓
皇太子レオンハルトの隠れた物語です
(本編と関係ない話)
アルベルトとエレーヌの間には、すぐに長男が誕生した。
レオンハルトは、生まれた時からごく普通の男の子だった。
家庭教師を付けられていたが、勉強も剣の実力も「まあまあ」。
そして、何より「小柄」だった。
「父親に似たのだな」
周囲はあまり気にしていなかった。
しかし、誰よりも警戒していたのは父親であるアルベルトだった。
「アルノルトの二の舞には絶対にさせぬ。目立たぬよう育てる。小柄でよかった」
それがアルベルトの口癖だった。
妻であるエレーヌも、夫の方針に素直に従っていた。
そして、レオンハルトが十歳の時、内乱が起こる。
三人は何とか生き延びたものの、代償はあまりにも大きかった。
破壊し尽くされた城内。
大勢の戦死者。
元々実力のあった騎士達の多くは、皇后一族によって毒殺や暗殺をされ、金で買収されて反乱軍側についた者もいた。
騎士不足と人材の低下は、国内の魔獣被害を大きくしていた。
内乱後、レオンハルトは十歳を過ぎた頃から急激に成長し始める。
元々多かった魔力も、体の成長と共にさらに増していった。
あっという間に母親の背を追い越し、他の騎士達よりも大きくなる。
その面差しは、亡きアルノルトに瓜二つになっていった――。
そして、問題が起こる。
レオンハルトより強く、剣を教えられる者がいないのだ。
攻撃魔法などは皇帝となったアルベルトが教えたが、騎士ではないアルベルトでは、実戦で役立つ剣技や戦闘術までは教えられなかった。
アルノルトを鍛えた実力ある騎士達のほとんどは、すでに亡くなっていた。
そんな時に現れたのが、ターシャと共にやって来たフェルネスだった。
レオンハルトはフェルネスと練習で打ち合ったが、まるで歯が立たなかった。
フェルネスの落胆した様子は明らかだった。
「私はそなたの叔父に何もかも教わった。兄上の血を引きながら、これほどの実力とは情けない。……私はそなたを、兄上程度にはしてみせる」
そうして、特訓が始まった。
フェルネスの執務の合間に、レオンハルトは剣を教わるようになった。
限られた時間の中で、言われた事をこなすだけでも大変だったが、不思議とやりがいがあった。
「皇太子殿下は、体格も魔力にも恵まれております。活かされないなど、もったいない」
それがフェルネスの口癖だった。
だが、その訓練は苛烈を極めていた。
何度、地面に叩きつけられたかわからない。
それでもレオンハルトは歯を食いしばり、素振りや筋力を付ける鍛錬を黙々と続けた。
ある日、七歳のクラリス皇女が、女性騎士団長を打ち負かし、さらに男性中堅騎士の剣まで一瞬で弾き飛ばすという事件が起きた。
しかも、そのクラリスをフェルネスは素手で一瞬にして制圧したという。
それを聞いたレオンハルトは焦った。
「このままでは、妹にまで負けてしまう」
それからは、さらに必死に稽古へ打ち込むようになった。
フェルネスは時折、魔獣討伐の場にも姿を現し、その圧倒的な実力を見せつけた。
群れをなして襲いかかるオオカミ型の魔獣を、魔力だけで一瞬にして消し去る。
さらに、大型で凶暴な二足歩行の魔獣の首を、一瞬で切り落としてみせた。
「あんなに端正な顔立ちで細身なのに、なぜあんなに強いのだ……?」
騎士達は驚愕し、恐れながらもフェルネスへ強い尊敬の念を抱いていく。
そして、皆の訓練にも自然と熱が入るようになっていた。
士気も実力も、目に見えて上がっていった。
レオンハルトもまた、フェルネスの特訓に耐えながら実力を伸ばしていく。
しかし、それでもフェルネスには遠く及ばなかった。
練習試合では毎回、一分も持たずに剣を飛ばされる日々だった。
そこへ、クラリスも加わるようになる。
クラリスは身軽で素早く、さらに身体や剣に魔力を流して強化する事に長けていた。
ある日、クラリスが初めて大型魔獣討伐へ参加した。
皆の緊張が頂点に達する中、フェルネスの合図でクラリスが前へ出る。
次の瞬間――大型魔獣の首が落ちた。
あまりにも一瞬だった。
騎士達は何が起きたのかわからず、呆然と立ち尽くす。
クラリスは平然と剣を振り、血を払った。
「急所を狙い、剣に魔力を込めれば、あれくらいは簡単に落とせます」
初討伐で見せつけられた皇女の実力に、皆は唖然とするしかなかった。
レオンハルトもまた、言葉を失っていた。
「私は物心ついた頃から、フェルネスに直接剣を教わってきました。お兄様は教わってから日が浅いのですから、これからもっと強くなれます」
「お兄様には、お兄様に合う剣法があります。それを見つけるには、鍛錬を積み重ねるのみです」
その言葉を励みに、レオンハルトはフェルネスの無茶な要求にも必死に食らいついていった。
挑んでは叩きのめされ、それでも何度も立ち上がる。
血を吐くような思いだった。
それでも、
「妹に負けるわけにはいかぬ。私は守る側になるのだ」
その思いだけで歯を食いしばった。
クラリスとの練習試合でも、最初はその速さについていけず、剣を飛ばされる日々だった。
だが、次第に動きに目が慣れ、力で押し切れるようになっていく。
「お兄様、すごいです!」
クラリスが目を輝かせて褒めてくれた時、レオンハルトはうれし泣きしそうになるのを必死にこらえた。
そして数年後――。
ついに、フェルネスと互角に打ち合えるほどまで成長した。
魔法も、誰より強く扱えるようになっていた。
フェルネスの顔に、ようやく笑みが浮かぶ。
「この短期間で、よくぞここまで強くなられました」
その目は、どこか懐かしそうだった。
その言葉をもらえた時、レオンハルトの胸はいっぱいになった。
そしてクラリスとの練習試合では、勝つ事が当たり前になっていた。
「これで、兄として恥ずかしくなくなった」
レオンハルトは、それからもさらに強くなっていく。
他の騎士達もまた、強くなっていた。
「やっと国の防衛力が内乱前に戻った。……いや、それ以上だ。フェルネスとクラリスのおかげだ」
皇帝は安堵した。
皇太子を中心に騎士達は鍛えられ、それは帝国にとって大きな力となっていく。
魔獣によって畑が荒らされ、村が滅ぶ悲劇も激減した。
それによって内政は安定し、道も整備され、人々は安心して暮らせるようになる。
さらに、多くの魔石鉱脈も発見され、グランディル帝国は急速に発展していった。
こうしてグランディル帝国は、大陸で最も大きく栄えた国となった。
レオンハルトは皇太子になる予定はなく、前皇后に目をつけられないように
「平凡」を目指して育てられます
それが、急に立場が変わり、「化け物級」の家臣と妹の登場で、自ら強くなるよう努力をします
クラリスは、高級サラブレッド、
フェルネスは、高魔力+英才教育
ある意味、「チート」な存在です
レオンハルトは努力で追いつきました。




