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皇女の帰還―約束の耳飾り― 番外編集  作者: 鶴見 日向子


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22/27

アルベルトとエリーナとの出会い

皇帝陛下と皇后陛下の出会いです(本編とは関係ない話)

この頃のアストリア元国王はまだ「まとも」です

(怪しいかも?)


エリーナは、アストリア王国国王の第三子として生を受けた。

王家に生まれた初めての王女であり、年の離れた二人の兄と両親から深く溺愛されて育った。


だが、王女として生まれた以上、「政略結婚」という宿命からは逃れられない。

幼い頃から結婚相手探しが始まっていた。


エリーナは大変美しい王女であった。

しかし、女性にしては少々背が高い。


さらに魔力も強く、釣り合いの取れる相手がなかなか見つからなかった。


そんな折、隣国グランディル帝国から、

「皇太子妃として迎えたい」

という打診が届く。


国王は満足そうにうなずいた。


「よい話ではないか。グランディル帝国は大陸一の大国だ」


エリーナは、まだ十七歳になったばかりだった。


しかし、王太子は表情を曇らせる。


「私は気になります。以前、グランディル帝国の皇帝の甥である十歳の少年が、わが国へ留学に向かう途中、国境付近で命を落とした事件がありました」


王太子は静かに続けた。


「十歳の子供一人、まともに護衛できない国です。嫌な予感しかしません」


その弟であり、リラインド公爵を名乗ることになった第二王子も同意するようにうなずいた。


しかし、国王は話を進めようとしていた。


そしてある日――。


グランディル帝国の皇太子と、その従弟だという青年がアストリアを訪れる。


皇太子は中肉中背で黒髪、深い緑の瞳を持つ男だった。

だが、きょろきょろと落ち着きなく周囲を見回し、体を揺らし続けている。


そして、エリーナを見るなり、こう言い放った。


「我は、背の高い女は好かぬ。顔が美しいだけに興ざめだ」


その場の空気が凍り付く。


国王ですら顔色を失った。


その時だった。


皇太子の隣に控えていた、小柄な青年が静かに口を開く。


「私は、長身であることなど気にいたしません。大切なのは中身でございます。見た目だけで相手を判断するのは、王女殿下に対して大変失礼かと存じます」


そう言って、エリーナに深く頭を下げた。


「皇太子殿下のご無礼、どうかお許しください」


すると皇太子は鼻で笑う。


「アルベルト。それなら、その女をお前がもらえばよい。自分より背の高い女など、嫁にできるのか?」


皇太子は、明らかに普通の男性より小柄なアルベルトを嘲笑った。


だが、アルベルトは動じない。


「それを決められるのは皇太子殿下ではございません。王女殿下のお気持ちこそ、最優先されるべきかと存じます」


「そなたは我の引き立て役として付いてきたくせに、生意気を申すな!」


そのやり取りを見ていたエリーナは、皇太子を真っ直ぐ見つめ、はっきりと言った。


「私も身長など気にいたしません。小柄の何がいけないのです? 長身で中身のない男より、小柄でも人柄の優れた方を、私は選びますわ」


皇太子の顔が引きつる。


「長身な上に生意気ときた。こんな女、誰も貰い手などないわ」


その言葉に、エリーナはクスリと笑った。


そして、アルベルトへ向き直る。


「私のような長身で生意気な女でも、よろしいのですか? 娶っていただけますか?」


アルベルトは目を丸くした。

だが、すぐに穏やかな笑みを浮かべる。


「むしろ、私のような小柄な男でよろしいのですか? 王女殿下さえよろしければ、私にとってはこの上ない良縁でございます」


皇太子は顔を真っ赤にし、二人を交互に睨みつけた。


「後で覚えておけよ、アルベルト! アルノルトの二の舞にしてやる!」


そう怒鳴ると、椅子を蹴り倒し、供の騎士を連れて部屋を出て行ってしまった。


「不愉快だ! 帰る!」


静まり返った部屋で、アルベルトは深く頭を下げる。


「本当に失礼いたしました」


国王、王太子、そしてエリーナに、それぞれ丁寧に謝罪した。


王太子は苦々しげに息を吐く。


「そなたは何も悪くない。あれが皇太子とは……グランディル帝国も落ちたものだな」


アルベルトは何も言い返せなかった。


国王も苦笑する。


「そなたの方が、よほど皇太子らしい。引き立て役と言われていたが、逆ではないか」


「恐れ多いお言葉でございます」


アルベルトは静かに答える。


「ですが……我が国とは、縁を結ばれない方がよろしいかと存じます」


その場の全員が息を呑んだ。


「私は現皇帝の甥ですが、皇帝も、我が両親も、誰一人として皇太子を咎めません。そんな国に先があるとは、私には思えないのです」


アルベルトは再び頭を下げた。


「エリーナ王女殿下。先ほどは私をかばってくださり、本当にありがとうございました」


しかし、エリーナは静かに首を傾げた。


「私を娶ってくださるというお言葉は、嘘だったのですか?」


アルベルトは戸惑う。


「いえ……気持ちはございます。ですが、苦労するとわかっている国へお迎えするなど、私にはできません。私は一生独身を貫くつもりでおります。お目にかかれただけでも、一生に一度の幸福でございます」


するとエリーナは嬉しそうに微笑んだ。


「ますます惹かれましたわ。あなたとなら、苦労も分かち合えます」


アルベルトは目を見開く。


「先ほどのお話は、皇太子殿下を下がらせるための方便ではなかったのですか?」


「私、負けず嫌いですの」


エリーナは誇らしげに笑った。


「身長が高いというだけで女性を見下す男より、小柄でも、心で包み込んでくださる方を選びたいと思いました。本心ですわ」


「ですが、我が国は不穏な空気に包まれております。どうか思いとどまってくださいませ」


アルベルトは再び頭を下げる。


するとエリーナは胸を張った。


「それなら、なおさらですわ。私は長身で魔力も強く、飛行魔獣も扱えます。いざとなれば、一緒にアストリアへ亡命しましょう」


そして、国王と王太子へ振り返る。


「よろしいですね? お父様、お兄様」


二人はあっけに取られていた。


やがて国王が苦笑する。


「まあ、どこへ行っても苦労は付きまとうものだ。未来など誰にもわからぬ。ならば、性格の良いアルベルト殿の方が安心できる」


こうして、二人の結婚は決まった。


この二人が、後にグランディル帝国の皇帝と皇后になるとは、まだ誰も予想していなかった。

最初はアルベルトがエリーナにひとめぼれして、口説くはずが、なんか書いていたら違う方向に行きました


めちゃくちゃ、あま~~いセリフや、かっこいいセリフを書きたくて書き始めたのに

あれれ?

になってしまいました。


エリーナが男前すぎる


うん、でもこの方が本編の雰囲気に合っている気がします

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