フェルネスの決心と探求 (本編が始まる前の話)
本編45話でフェルネス自身が語っている昔話の詳細
ロザーリアが亡くなった。
カイレスはともかく、幼いターシャには、その意味が理解できなかった。
「お母さま、お母さまはどこに行ったの?」
「いつ帰ってくるの?」
ターシャは屋敷中を歩き回り、侍女や召使い、そしてフェルネスに何度も尋ねた。
今まで手のかからない大人しい娘だっただけに、
「おかあさまー! 帰って来てください!」
と、夜中に泣き叫ぶ姿は痛々しかった。
そのたびにフェルネスは部屋へ飛び込み、抱き上げてあやした。
時には、隣の部屋で寝ていたカイレスも一緒になって泣き出し、二人で大合唱になる事もあった。
毎晩のように続く騒ぎに、次第にフェルネスも侍女達も疲労の限界に達しつつあった。
ある日、年嵩の侍女が言った。
「フェルネス様、ドレスをお召しください。ロザーリア様のドレスなら、フェルネス様のお体でも着られるものがございます」
フェルネスの屋敷にいる侍女達は、皆、中年以降の者ばかりだった。
ロザーリアの看病、葬儀、その後の混乱――。
誰も彼も疲れ切っていた。
そして、フェルネス自身もまた、正常な判断力を失いつつあった。
「やろう。ドレスを着てみる。それでターシャが泣き止むのならば、それでよい」
侍女はロザーリアの遺品の中から、フェルネスでも着られそうなデザインのドレスを探し出し、差し出した。
「さあ! こちらをお召しになってください!」
それを見た瞬間、さすがのフェルネスもためらった。
だが――
「まさか、今さら怖じ気づいたりなさいませんよね? そのロザーリア様そっくりのお顔なら、きっと“お母さまが帰ってきた”と思ってくださいますとも」
目の下に真っ黒な隈を作った侍女の目が据わっている。
「……わかった。やると言った以上、やる!」
フェルネスは覚悟を決め、着替えようとした。
しかし――
「これは、どうやって着るのだ?」
次の瞬間、侍女達が一斉に動いた。
フェルネスの服を剥ぎ取り、下着姿にすると、無理やりドレスを着せつける。
「まあ、本当にぴったりです……!」
「ロザーリア様にそっくり……」
侍女達の目に涙が浮かぶ。
だが、その直後。
「念のため、お化粧もしましょう」
侍女達の目がぎらりと光った。
フェルネスは訳もわからぬまま、されるがままだった。
その時、ターシャの泣き声が響いた。
隣の部屋で寝ていたはずのカイレスも起きたらしく、部屋へ入っていく気配がする。
「さあ、出番です」
侍女に手を引かれ、フェルネスは部屋へ押し込まれた。
明かりを灯し、二人の前へ立つ。
その瞬間。
カイレスの目が見開かれた。
「叔父上……気持ち悪いです」
みるみるうちに目に涙が溜まっていく。
「いやだああああっ!! 気持ち悪いーーーー!!」
その叫び声に、ターシャも我に返ったようにフェルネスを見つめた。
「おじさま……?」
そこまで言った瞬間。
ターシャの黒目が上を向き、拳を握り締め、全身を痙攣させ始めた。
「誰か来てくれ! ターシャがひきつけた!」
フェルネスの叫び声に、侍女達が部屋へ飛び込んでくる。
その時だった。
フェルネスは鏡に映った自分の姿を見た。
「気持ち悪い……」
自分でも失神しそうだった。
化粧が濃すぎたのである。
そんな事は、フェルネスにはわからない。
「早く脱がせてくれ!! 私までおかしくなりそうだ!!」
屋敷中が大騒ぎになった。
ひきつけたターシャを介抱する者。
カイレスをなだめる者。
そして、フェルネスからドレスを脱がせる者。
執事のエバンスまで真夜中に叩き起こされ、その対応に追われた。
やがて医師が呼ばれ、ターシャを診察した後、
「一時的な症状です。問題ありません」
と言われ、皆ようやく胸をなで下ろした。
フェルネスは顔を洗い、普段着に戻り、やっと平静を取り戻した。
そして、深いため息と共に呟く。
「やはり、私には義兄上の気持ちを理解する事ができぬ」
それ以来、フェルネスの女性恐怖症には、新たに“ドレス恐怖症”まで加わったのだった。
これを読んだチャッピーの感想
もし、
化粧が薄め
ドレスも上品
ターシャが
「おかあさま……?」
と抱きついて泣き止む
侍女達号泣
カイレスが
「……似合ってます」
とか言ってしまう
みたいな流れだったら、
フェルネス:
「そ、そうか……役に立つならば……」
となっていた可能性はあります(笑)
しかもフェルネス、
顔立ちは完全にロザーリア似の超美形設定なので、
下手すると「異様に似合ってしまう」タイプなんですよね。
だからこそ逆に危険(笑)
あはは、さすが、チャッピー。私の思っていた通りの感想を言ってくれました
でも、フェルネスの恐怖症増やしてしまう作者の私ってひどいかもと思ってしまったのでした




