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皇女の帰還―約束の耳飾り― 番外編集  作者: 鶴見 日向子


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13/27

迎えに来た者 (孤児院からの救出)

前の話の続きです

数か月が過ぎた。


フェルネスとターシャの行方は、いまだ掴めない。


王太子とエリアスは、焦りを募らせていた。


一方でリチャードは、国王には「捜索中」と報告しながらも、実際に動いている様子は見せなかった。


「なぜ探そうとなさらないのですか?」


王太子妃が問い詰めても、リチャードは何も答えない。


沈黙だけが、その場に落ちた。

________________________________________


――その頃。


フェルネスとターシャは、村での暮らしにすっかり馴染んでいた。


あることをきっかけに、フェルネスの女性恐怖症が知られ、


「この男は女に手を出さない」

と“安全な人間”として認識されるようになった。


さらに、


「リチャード殿がフェルネス殿に跪いていた」

という証言まで現れ、フェルネスは村人たちから一目置かれる存在となっていた。


その影響もあり、ターシャはいじめられることもなくなり、

小柄な体つきもあって、年上の少女たちに可愛がられるようになっていた。


「よく似ていらっしゃる。身内なのだろうな」


「だが親子にしては若すぎる……どういう関係だ?」


村人たちは首を傾げながらも、それ以上踏み込むことはなかった。


穏やかな日々。


だが――


このままでよいはずがない。


ターシャは、亡き姉とクラウスの忘れ形見。


こんな山奥に閉じ込めておくわけにはいかなかった。


しかし、追跡の際にすべてを置いてきてしまった今、手立てはない。


金になるものがあれば、誰かにアストリアまでの用事を頼めたかもしれない。


魔石があれば、通信魔獣を作ることもできただろう。


だが、この村には、そのどちらもなかった。


「私はいい……だが、ターシャだけは……」


フェルネスは、ただ祈る。

「頼む、リチャード。忘れないでくれ」


半年近くが過ぎようとしていた。

________________________________________


ある日。


リチャードの息子が、父に詰め寄った。


「ターシャ様とフェルネス様の居場所をご存じなのではないですか?」


その目は、強い決意に満ちていた。


彼はずっと悔いていた。


――あの時、自分が動けていれば。


一年前、初めての魔獣討伐。


毒を吐く魔獣を前に、恐怖で動けなくなった自分を庇ったのは、ロザーリア王女だった。


本来、自分が受けるはずだった毒。


それを、彼女が受けた。


直撃こそ免れたが、その毒は体を蝕み、半年もの苦しみの末――命を奪った。


「私さえ、しっかりしていれば……」


そう思わぬ日はなかった。


「命の恩人の娘御です。父上であっても、何かしたのであれば許せません」


リチャードは静かに問い返す。

「それは国王陛下に逆らうことになる。それでもよいのか?」


「構わぬ!」

鋭い声が響いた。


振り向くと、そこに立っていたのは――レオニス王太子とアンドレア王太子妃だった。


レオニスは、その場でリチャードの前に跪いた。


「頼む。居場所を知っているなら教えてくれ」


リチャードはその姿を、じっと見つめる。

「それは、国王陛下への反逆でございます。覚悟はおありですか?」


王太子は静かに頷く。

「あれはもう父ではない。人間の皮を被った人でなしだ」


隣に立つ王太子妃も、深く頷いた。


しばしの沈黙の後――


リチャードは膝をついた。


「……わかりました」

「私も、もう限界でございます。フェルネス様は、この私を庇ってくださいました」

深く頭を下げる。


「お二人の居場所をお教えいたします。これで、我らは同罪でございます」


「心強い」

王太子は力強く言った。


「今はまだ無理だが、必ず父を倒す。その時まで見守ってくれ」


「かしこまりました」

________________________________________


こうして、二人の居場所が明らかとなった。


エリアスは自ら迎えに行くことを申し出る。


「フェルネスとターシャは、すでに我が国の者だ。エルドリアとは無関係」

言い切る。


「今後、エルドリアとの関係は最小限とする」


レオニスは静かに頷いた。

「頼む。二人を――守ってくれ」


エリアスは無言で頷き、その場を後にした。


以後、両国の連絡はアルフレッドを通じてのみ行われることとなった。

________________________________________


エリアスは、飛行魔獣で小型ながら立派な馬車を運び込んだ。


護衛の騎士を伴い、あの平地へと降り立つ。


馬を借り、山道を進む。


「待っていろ、フェルネス。ターシャ」


その言葉に、決意がこもる。


――そして。


ようやく二人は、村を出ることができたのだった。


実の祖父からの暗殺命令から守られるために孤児院にかくまわれたターシャ

その事実は衝撃すぎるため、本人には伝えられていません

なので、本編のターシャの回想には、なぜ孤児院に入れられたか、別な理由になっています


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